第70話 VSサラマンダードラゴン

 完全防御カマクラから俺だけ出る。なんかカッコイイ技名みたい。これから土で身を守ることを完全防御カマクラって呼ぼう。ネーミングセンスが冴え渡っている。

 トゲトゲした赤いドラゴンなんて俺1人で十分。むしろ俺1人の方がいい。みんなを守りながら戦えん。そこまで戦闘の経験値がない。

 完全防御カマクラから出て来ると、『えっ、あんなところにいてますやん』みたいな顔をドラゴンがしながらコチラに向かって来る。数百体の群。

 口から炎を発射させている奴もいる。炎なんて効くもんですか。コッチには水の力があるんです。水のスキルで壁を作るのってゲームとかで何て呼んでたっけ? ウォーターウォール。アタイには炎なんて鼻くそを投げられているのと一緒なんだからね。

 水壁を目の前に作った。

 魔族になってステータスも一気に向上している+お嬢とエッチなことをしたおかげでステータスが一時的に向上しているおかげで思った以上に大きな水壁が登場する。刑務所の壁か、っていうぐらいの水壁。

 ちなみに技を出す時は技名は叫びません。

 1人で戦っている時に技名を口に出す奴ってアホの子やん。

 みんなで一緒に戦っているから、味方に自分の攻撃が当たらないように技名を口にしているだけで、1人の時は黙々と倒せばいいのだ。

 お嬢の体のことを俺は思い出していた。

 腕は再生した。体力も回復した。元通りになった。お嬢の体。触ると敏感に反応した。色んなところを触った。別にエッチな描写じゃないんだからね! ただ俺は彼女の腕を再生させたかったのだ。

 驚いたのは彼女が俺にあんなことやこんなことをして来たことだ。

 初めての女の子がそんなことまでするの? っていうことまでしてきた。ヤバイ思い出しただけでステータスが向上しそう。

 もうステータスって文字面もエッチに響く。

 ステータス。

 ぬるぬるのステータス。

 パンツからはみ出るステータス。

 体育の最中にパンツに食い込むステータス。

 一晩で四回もステータスしちゃって、もうクタクタだよ。

 アナタのステータスギンギンね。

 なんで一人の時って変なことを考えちゃうんだろうね?

 家で1人でいる時、訳わからんことを考えながら部屋をグルグルしたりするけど、1人で戦っている時も同じである。

 脳内は戦闘のことより、ステータスをどうやってエッチに響かせようか考えている。

 アナタのステータスギンギンね、ちょっと直接すぎたかな。

 


 俺は空を飛んだ。

 一度の羽ばたきで、一気に上空まで浮上する。

 大量のドラゴン。

 鼻歌を歌いながら茶玉でドラゴンを狙う。

 茶玉。土で作った巨大とんがりコーン。

 人間バージョンでは銃弾に土をコーティングしていくような感じで茶玉を作り出していた。

 魔族バージョンでは土のスキルだけで茶玉は作れた。

 だから発射までの速度が段違いに早い。

 おらおらおら。めっちゃ出ますやん。今日はいつもより出るわ出るわ。

 俺は近距離戦よりも遠距離戦の方が得意だった。

 得意というか好き。

 シューティングゲームみたい。

 茶玉がドラゴンにぶつかると肉が粉砕する。

 茶玉では攻撃力強すぎ?

 最終的には死体を吸収するつもりだった。生命を吸収すれば俺のステータスが向上する。

 ちなみにドラゴンを倒すたびに脳内で『成長しました』みたいな声が響いている。このドラゴンさんかなり経験値を持っている。

 ってことは、強いドラゴンさんってことである。

 肉も吸収しておきたい。

 もっと弱い攻撃なかったっけ? 

 たしかエアーガンがあった。

 エアーガンってどんなスキルなんですか? 教えてシリー。あっ、シリーじゃねぇーや。オーケーグーグル、エアーガンについて調べて。いやグーグル大先生でもねぇーや。

 知識の大先生エアーガンについて教えて。

『空気圧を発射させることができます』

 へー、それだけ?

『……』

 オーケーグーグル、それだけ?

『魔力の使い方によっては酸素濃度を高めて相手を殺すこともできます』

 そう言えば乙姫が俺にやってくれていたことを思い出す。海の中で空気ができるように顔を酸素で覆ってくれた。酸素濃度をあげれば相手を酸素中毒にできるのか。

 


 それじゃあ、やってみよう。知識ちゃん。

 でっきるかな。でっきるかな。

 まずはエアーガン。

 結構遠いぞ。ドラゴンは俺の強さにビビって逃げている。

 見えない空気圧を出す。

 100発ぐらいエアーガンを発射させた。

 大きく羽ばたきで逃げていたドラゴンが何体か地上に落ちた。

 俺はすぐに落ちたドラゴンの元に向かう。

 瞬間移動。

 実際は素早く動いでいるだけ。

 落ちたドラゴンは、ちゃんと形が保たれていた。

 美味しくバク呑みさせていただきました。

 それじゃあ酸素中毒させてみよう。

 でっきるかな。でっきるかな。

 飛ぶ。ドラゴンにタッチ。必死にドラゴンさんが逃げている。

 俺が早すぎて触られていることに気づいていないみたい。

 ドラゴンの顔に酸素を覆うイメージでスキルを発動させる。

 ドラゴンさんが苦しみ始める。

 そして羽ばたきをやめて落下。

 うん。使える。これ使えるよ。

 そういえば酸素って血管に入ったら死んじゃうじゃなかったけ?

 次は酸素を血管の中に入れてみよう。

 でっきるかな。でっきるかな。

 まずはドラゴンを指で刺してみましょう。

 ブス。

 指から空気を入れましょう。すると不思議。しばらくするとドラゴンは苦しんで地面に落ちて行くではありませんか。

 それから俺はエアーガンを使ってドラゴンを全滅させる。

 ちゃんとバク呑みで回収。

 レベルアップしまくり、ステータス向上しまくり、美味しいドラゴン達でした。



 そして俺は完全防御カマクラのところに戻る。

 まずはお嬢から完全防御カマクラを解く。

 彼女は俺のことを恥ずかしそうに見た。

「ドラゴンは?」とお嬢が尋ねた。

「倒したよ」と俺が答える。

「本当?」

 ポクリ、と俺は頷く。

「みんなは?」

 俺は完全防御カマクラを指差す。

 近くに2つのカマクラがある。

「あの中」

 お嬢が俺に近づいて来る。

 そして彼女が目を瞑った。

 俺は彼女の唇にキスをした。

 お嬢が俺のことをギュッと抱きしめてきた。

 頭を撫でる。

 顔を真っ赤にしたお嬢。

「人間に戻って」

 俺は人間バージョンに戻る。

 またキスをした。

「2人には内緒だからね」とお嬢が言った。



 ミチコの完全防御カマクラを解く。

 少女はペンダンを握って、膝をついてブツブツと呪文のように何かを願っていた。

「死んでも、どうか転生できますように。死んでも、どうか転生できますように」

「何してるの?」

 と俺が尋ねる。

 おへぇー、って顔でミチコが目を開ける。

「サラマンダードラゴンは?」

 どうやら、あのドラゴンはサラマンダードラゴンという名前だったあしい。

「倒したけど」

「えぇぇぇ? あの魔物、一匹でBランク以上あるんですよ。何百匹もいたじゃないですか? あんなのSランク冒険者でも倒せませんよ」

「そんなに強くなかったけど」

「あんさんバケモンや。ホンマにアンさんがサラマンダードラゴンの群を討伐したちゅうなら、アンさんはSランク以上の冒険者ってことになるで」

「驚きすぎて関西弁になってるぞ。ミチコらしくない」

「魔族ですもんね。魔族はSランク冒険者でも倒せないって聞きますし」

「それより、そのペンダントは?」

 見覚えのあるペンダントだった。

「鬼ヶ島で貰ったんです。これを持っていたら死んでも転生するらしいですよ」

 そう言えば戦いに行く鬼達は、そういうペンダントを付けていたような気がする。

 死んでも生まれ変われるから戦場も怖くない。

 おまじないのアイテムである。

 本当に転生させようとしたら大掛かりな儀式が必要でる。だから本当におまじない程度のものである。

「それじゃあ行こうか」と俺は言った。

「どこに行くんですか?」

「ミチコは覚えてないか? 鬼ヶ島に入る前に俺が言っていたこと」

「お化けが出た話?」

「あのお化けって、鬼ヶ島にいた冒険者なんだよ。もしかしたら何かのスキルを使って俺を〇〇小学校に呼んでたのかもしれない」

「そういうことですか。それじゃあ〇〇小学校に行きましょう」

「田中はどうするの?」とお嬢が尋ねた。

「このまま置いて行ってもいいんじゃない」と俺が言う。

「ダメですよ」とミチコと言う。

「それじゃあ多数決を取ろう。田中をこのまま置いていく人」

 3人が手を上げる。

 ミチコは手を上げたらダメだろう。

 それじゃあ置いて行こう。

 もちろん嘘である。

 完全防御カマクラを解いてあげる。

 田中中はペンダントを握って、なにかブツブツと言っていた。

 黄色い衣装。安全第一のヘルメット。そして太った体。

「私って、こんな気持ち悪いことしてたんですか?」

「そうだよ」と俺が言う。

 あへぇ? って顔で田中が目を開けた。

「サラマンダードラゴンは?」と田中が尋ねる。

「そのくだり2回目だから、もういいです」とミチコが言う。「私と同じことを言っているのが許せません」

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