おまけ
リンクを貼らせるな
※メタ的な発言が多く含みます。
※特別回です。
鬼ヶ島の城の一室。
畳の部屋に丸い卓袱台を囲むように4枚の座布団。直子の好みで作られた和室だった。
卓袱台の上にミチコがノートを広げてペンを握りしめている。
「みなさん、座ってください」とミチコが言った。
何で集められたのか俺達は知らない。
ちなみに俺は人間バージョンに戻っている。なぜ人間バージョンなのかは次の回を読んでください。
「修行の最中なんだけど」と俺は言った。
魔族化したことでスキルの使い方が変化した。
現代の日本に戻る前に、魔族の状態で修行をしていた。
力が付いたら熟練度を上げる。そういう風にしないと俺達はスキルを磨くことができない。ミチコだって金棒を貰って一緒に修行をしていたのだ。
なのに急に俺達を呼び出した。
俺達は卓袱台を囲むように座った。
「4章の鬼ヶ島編お疲れさまでした」とミチコが言った。
「次の回からは5章の日本崩壊編に入るのですが、その前に会議を行いたいと思います」
またか。前にも一度あったような。朝ごはんを食べながらの最悪な会議が。
「前の会議で、人気になるために上げられた項目がありました」
とミチコが言う。
主に彼女が勝手に人気になるために上げた項目である。
「一つ目の新庄さんが赤髪になった方が人気になるんじゃないか? という件ですが、これはまさかのクリアすることができました」
ミチコが1人で拍手する。
怖い怖い。なんだよ。この会議。
「まさか野菜の国の王子様のようにスーパー覚醒をして、赤髪になるなんて思いませんでした。あの時はやられました」
「はぁ」とお嬢が気のない返事をする。
「ただし」とミチコが言う。「小林さんが赤髪になるのは余計でしたね」
「……それは仕方がないだろう。闘気と混じったら体が赤く発光するんだよ。そのおかげで髪が赤になってしまうんだ」
「まぁ、いいでしょう」
ミチコがボールペンをカチンを出した。
「小林さんもチートになってくれたことですし。これからどんどんと俺TUEEEEEEEEEEEをやってくれることを期待しています。私が2章で言っていた魔族なんじゃないかっていう設定はやっぱり合っていましたね」
合っていたっていうか、伏線っていうか。
そのニュアンスを読者にそれとなく教えていただけなんじゃないか?
そんなことで、何でコイツは、そんなに誇らしげなんだろう。
「そして田中さん。いや、アナタに『さん』を付けるのは勿体無い。田中は一体何をしましたか? ずっと足を引っ張ってる。ドジでのろまの美少女になれ、って言ったじゃないですか? なのに、なぜデブでウザいままなのですか? なんで鬼ヶ島編が入ってすぐにいなくなるんですか?」
田中は小さい声でモゴモゴと喋っている。
隣にいる俺には聞き取れた。
「お股にチ◯コ挟んでたもん」
と田中は言っている。
小さい時、お風呂場で男の子が絶対にやるやつ。お股にチ◯コを挟んで女の子。それを田中は誰にも見られていない状態でやっていたのだ。
「頑張ったじゃないか」と俺が言う。
「ぼくだってヒロインになろうと努力したんだ」
と田中が気持ち悪いことを言い始める。
「光太郎にキスだってしたんだよ」
たしかに、そんなシーンが合った。
思い出したら気持ち悪くなった。
ミチコとお嬢が目を細めてコチラを見ている。
「光太郎だってビンビンだったんだよ。魔力百倍ワンパンマンだったんだよ。それでもぼく……いや、アタイがドジで可愛いヒロインじゃないって言うの?」
「ドジで可愛いヒロインじゃないですね」とミチコが言う。
「今から小さいポーチを持ってトイレに行こうかな」と田中が言う。
「どうぞ」とミチコが言う。
「それで今日はなんで呼ばれたの? こんな馬鹿話がしたくて呼んだの? アタイ、彼とデートの予定があるんだけど」
俺達は真顔で田中を見る。
喋り方がキモかった。
「アタイのことを見て、何かに気づかない?」
田中が謎に俺の目を見てくる。やめてくれないかな。
「アタイ、痩せたのよ」
「……」
「200gも痩せたのに誰も気づいてくれないんだもん」
それぐらいの量だったらウ◯コで変わるだろう。
「鬼ヶ島編で活躍しなかったから、すごく喋るじゃないですか。正直ドン引きです」
「人気を出すための会議なんだよね?」
と田中が髪をイジリながら言う。
いつになったら女言葉を止めるんだろうか?
もう女言葉を止めるタイミングがわからないのか?
「次の章から魔物に転生したらどうかしら? 蜘蛛とかスライムとか」
「殺しますよ」とミチコが言う。
「なんだったらアタイが転生してもいいんだけど。転生したらマジで本気だす」
デブが転生。転生したらマジで本気出す。
勝手にやっとけよ。
「本当に殺しますよ」とミチコが言う。
「つーか、そろそろスローライフ送りたいんだけど。家に引きこもって楽しい時間を過ごすの。何の葛藤も苦しみも無し。ただただ楽しいだけ」
「田中と一緒なら、どこでも地獄です。できれば1人でしてください」
とミチコが言う。
「そんなに文句を言うなら、ミチコはどうなんだよ」
とギコちなく、男言葉に田中が戻す。
「そうですね。私も一つ提案があります。新庄さん視点の回を作りたいと思っております」
「……嫌よ」とお嬢が言う。
「女性モノの小説を読んでいると主人公の視点ではなく、王子の視点が入ることが多々あります。それは主人公のことを王子はどう思っているのか? っということを読者が読んで悶えるためです。小林さんに対する複雑な新庄さんの気持ちを書いた回を作りましょ」
「絶対に嫌」とお嬢が言って、ミチコを睨む。
「……すみません。調子に乗りました」
「それじゃあ、本題に入らさせいただきます」
とミチコが言う。
本題?
人気になるための会議、っていうのが本題じゃないのか?
「次の連載の宣伝をしたいのです。今日から連載開始です」
「ちょっと待った」と俺は叫んだ。
「ふざけるな。こんなところ宣伝すんじゃねぇー」
「https://kakuyomu.j」とミチコが言い出す「どりゃああーーーーー」と俺が叫んで、リンクを貼られるのを阻止する。
「どういうことだミチコ。なんでお前がリンクを唱えようとしているんだ?」
俺は絶対にリンクを貼らせない。
「タイトルは『青春ラノベが壊れても……』」
「おらおらおら」と俺は叫びまくる。
タイトルも言わせない。
「お前、どういうことかわかってんのかよ?」
俺はミチコを睨みつける。
「なんで小林さんは止めるんですか?」
「数々の作品が同じ道を歩んできたんだ。連載中に別の連載をする。それはエタる可能性を引き上げることなんだ。何度、苦渋を飲まされたのかわかってるのか?」
エタる、というのは永遠に終わらない、という意味である。
永遠に終わらない、というのはつまり最終回を迎えずに連載がストップする状態のことである。そんなことはさせねぇー。俺の目が黒いうちは。しかもこれからやりたかったチートをやるんだ。今まで我慢して我慢してきたんだ。
「大丈夫です。小林さん。もう書き上げた作品の連載開始なので、私達に全ての力は注がれます」
「なんでお前が、そんな事を知ってるんだ? なにか取引したのか?」
俺はミチコを睨んだ。
「プロットも残り2章で終わりです。次の就職先を考えなくちゃいけないんです」
「おい。残り2章っていうのは言うな。元々のプロットが残り2章でも人気が出たら、鰻のタレみたいに継ぎ足されていくんだから」
「それでも私は堅実なので、次の就職先を探さないといけないんです。宣伝したら次の次の物語には将来爆乳委員長のキャラが名前を変えて登場する予定なんです。それが生まれ変わった私なんです」
「キャラクター構成を使いまわそうとしてるだけじゃないか」
「私は生き残る。作品を変えても生き残ってみせる。そのためには転生の呪文を唱えなくちゃいけないんです。https://」
「おりゃああーーー」
俺はリンクを貼るのを阻止する。
「新庄さん。小林さんの口を防いでください」
「なんで私が?」
「私の口利きで新庄さんも次の次の作品ぐらいで生まれ変わりましょう」
お嬢が考えている。
「ミチコの言うことは聞くんじゃねぇ」
「次はメインヒロインになれるかもしれないですよ。すぐにキレる剣士って最高じゃないですか」
お嬢に口を手で塞がれた。
「言わせるか」
俺はお嬢の手を抑える。
この女、すげぇー力。本気じゃん。
そんなにメインヒロインになりたかったのかよ。
メインヒロインにできなくて、ごめんな。
もしかしたら一番先に出会っていれば、お嬢はメインヒロインだったのかもしれない。
「田中」とミチコが言う。
「アナタにも転生のチャンスを与えましょう」とミチコが言う。
なんか神みたいになってるぞ。
「もしかして、次の作品の主人公ってぼくなの?」
「全然違います」とミチコが言う。
「主人公が初めて出会う魔物に転生させましょう」
「魔物転生系か」と田中がキラキラした目で言う。
初めて出会う魔物って、殺されるじゃん。
コイツ何を勘違いしているんだろうか。
「ってことは、ぼくは気持ち悪いカエルに転生して、最初に殺されるわけか」
勘違いしてないじゃん。
「その話、乗った」と田中が言う。
乗るのか、と俺は心の中でツッコンだ。
特別編を作ったのは、たぶん田中が活躍してなかったからだと思うよ?
なのにミチコに騙されて、自分が生まれ変わったら主人公に初めて殺される気持ち悪い魔物になるために田中は俺の両腕を抑えた。
悲しすぎる。
悲しすぎるぜ田中。
https://kakuyomu.jp/works/16816927860731247956/episodes/16816927860731279203
クソ。リンクを貼られた。
「タイトルは『青春ラノベが壊れても涙は見せない〜作家になったら付き合ってあげると美少女に言われて本気で目指したらハーレムヒーローになっていく。女の子を助けて書きたいことを学んでいく。エッチなぼくの小説の書き方』
とミチコが言った。
せめて田中が主役のハーレムの物語でありますように、と俺は願った。
あまりにも田中が不憫すぎる。
別の物語で田中が幸せになりますように。
きっと、そんな事はないだろうけど。
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