第53話 夜這い

 日本から持って来た物を売って銀貨35枚にもなった。

 さすがに水や食料は売らなかった。

 宿屋に行くと一部屋しか残っていないらしく、俺達は宿屋の一室を借りた。

 部屋はシンプルだった。

 ベッドが2台。

 ランプが置かれた台。

 あとは何も無い。

 シャワー室もトイレもなかった。

 宿屋自体にはトイレがある。現代の日本と違ってボットン便所だった。

 とりあえずベッドに座った。

 土壁。床はタイル。

 タイルには砂埃が大量にあった。

 ベッドの下に靴を置いてベッドに座った。

「いつダンジョンから出られるのかわかりません。だからお金は節約しましょう」とミチコが言った。

「光太郎と一緒だったら夜這いされるかもしれないわよ」とお嬢が言う。

「しねぇーよ」と俺は言いながらも、自信はなかった。

 


 ベッドに横になった。疲れていた。

 鬼ヶ島ダンジョン。

 ダンジョンには一種類の魔物しかいないと思っていた。

 だけどココは色んな魔物がいる。亜人も人間もいる。もしかしたらコッチの冒険者なのかもしれない。

 鬼以外の魔物が配下であることはわかる。

 だけど亜人も人間も配下なのか?

 ココは何かが違うような気がした。

 今までのダンジョンよりも明らかに広い。

 町だって観光地になっている。

 そう言えば今までもダンジョンに魔物の住居が無かったような気がする。

 だけどココは魔物達が住んでいる。

 今までのダンジョンとは違った。フィールドというよりも町がダンジョンになっている。

 ココの全ての生き物を殺せばダンジョンは閉じるんだろう。

 だけど人間に近い魔物を殺せるのか? 

 殺せないから、このダンジョンは攻略されずに何十年も残っているんだろう。

 田中中はどうなってしまったんだろう?

 殺されていないんだろうか?

 早く助けてあげたい。

 ミチコの棍棒さえ手に入ったら、このダンジョンの目的は達成する。

 この町に入った時に懐かしさを感じた。あの感覚は何だったんだろうか? 

 俺はココで重要なことを思い出さないといけないような気がした。

 禁止されていなくても、ココの魔物達を俺は殺してはいけないと思っている。

 なんで、そう思っているんだろうか? 

 人間に近い魔物もいるから道徳的にダメだと思っているんだろうか? 

 ハーピィーの魔物と出会った時のことを思い出す。ハーピィーだって人間に姿形は近いのに、殺してはいけないとは思わなかった。

 だけどココでは殺してはいけない、と思うのだ。呑み込んではいけないと思うのだ。

 なぜ魔物に対して道徳的概念が働くんだろうか?

 ココは俺にとって何なんだろう?



 どれだけ時間が経ったのか、色んなことを考えていると隣のベッドからスヤスヤと寝息が聞こえた。

 ランプに明かりが灯されていて、部屋がオレンジ色で照らされていた。

 疲れていたんだろう。2人が眠っている。

 2人の頬には墨汁みたいなモノで1と書かれている。俺の頬にも書かれていた。一応は水で拭いてみたけど取れなかった。

 俺はベッドから起き上がった。

 夜這いなんてする訳がない。

 女性のイイ匂いがする。

 モモの匂いと汗の匂いが混じったような匂い。

 嗅ぐだけだったらいいですよね?

 新庄かなの首元に鼻を近づける。

 クンクン、と匂いを嗅ぐ。

 ムラムラする。

 色白のお嬢の首筋。

 耳は食べたくなるぐらいに綺麗だった。

 ヨダレが出ちゃいそう。

 食べたい、って胃に入れたい、って訳じゃなくて、舐めたいと思うのだ。

 こんなことを考える俺のことを罵倒してください。

 ストレートの黒い髪。

 髪は体の一部じゃないから触ってもいいですか?

 こんなキャラクター、志村◯んが演じていたような気がする。変なおじさん。

 髪の根元の匂い。

 汗が混じってイイ匂いがする。

 固有スキルのせいで、俺は、本当に変なおじさんになっている。

 ダメだ。ダメだ。こんなことしちゃいけない。

 こんなことしたら嫌われてしまう。

 でもムラムラする。

 触りたい。

 触ったらダメだ。起きちゃう。

 起きて、こんなことをしてることがバレたら殺される。

 一度、自分のベッドに戻る。

 そして寝転がる。

 フーーー、我慢。男は我慢なのだ。

 もう一度立つ。

 新庄かなは赤い着物みたい着ていた。

 ちょっと着物がどんな形状になっているか確認するために、お股を捲ってみた。

 下は短パンみたいなものが履かれている。

 もしかしたら着物とくっ付いているのかもしれない。

 ちゃんと見ないと、この服の形状がわかんねぇーな。

 本当に服の形状が知りたいだけなんです。

 でも一応、太ももも見ておこうかな?

 これは一応、太ももを見ているだけで、エロい気持ちは全然ない。

 全然、っていうのは、ちょっと嘘になっちゃうけど……。

 彼女の太ももは白かった。

 触ったらモッチっとするんだろうな。

 感触を確かめてみようかな?

 さすがにそれはダメでしょう?

 触っちゃった。柔らかかった。

 太ももも触ったんだから、お胸の方も触ってみようかな、と思って顔を上げると目が合った。

 お嬢と目があったのだ。

「なにしてるの?」

「服の形状を確認しております」

 お嬢の手に炎が宿る。

 炎を宿った拳が俺の頬に当たる。

 飛ばされる俺。

 彼女は素早く倒れた俺の上に乗り、何発も何発も俺の顔面を殴った。

 殴られるたびに俺の顔面が埋没して、自動回復していく。

 治るけど痛い。

「ごめんなさい」と俺は言っているのに、その拳は止まらない。

 え〜ん、え〜んとミチコの泣き声が聞こえた。

 少女は夜になると両親のことを思い出して泣いた。

 お嬢の拳が止まり、俺は引きずられて部屋の外に出された。

「光太郎は外で寝ろ」

 扉が閉まる。

 お金は部屋に置いて来ている。つーかミチコが預かっている。

 俺はお金も無い状態で外に出された。

 どうしよう? 

 あっ。

 エロいお姉さんがいた。

 あの人はずっとアソコで待ってるって言ってたよな。

 行こう。

 サキュバスはスキルを奪うらしい。

 だけど俺は攻撃を受けたら、そのスキルを覚える。

 炎のスキルをサキュバス嬢に奪ってもらって、お嬢に攻撃されて、また炎を覚えたら無限にエロいことができるじゃん。

 ボコボコに殴られ、部屋から追い出されても、俺は夜の町にスキップで向かって行く。

 これが淫欲の固有スキルのせいで、俺は性を求めて夜の町に向かって行く。

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