第24話 舐めたら傷って治るらしいよ
補充、と言えばお嬢が嫌な顔をしながらも俺の首元にキスをして来る。
女の子がイヤな顔をしながらキスする表情って堪りませんがな。
レベルアップしたら魔力量が増幅する。
それに伴って魔力を溜めておく容器も変化する。
初めはペットボトルのキャップほどの容器だったのに、今ではコップぐらいの容器がある。
初めは赤玉3発ほどで魔力切れを起こしたけど、今では10発は撃てる。
だけど俺は3発撃てばエロを補充した。
お嬢の柔らかい唇で触れられた首元が気持ちよすぎる。
オジサンこの感触が好きでな、よくこの店に来ますねん。
彼女達は俺がレベルアップしていることを知らない。
「これがセ〇〇スですか?」
ミチコが尋ねた。
少女は手で目を隠している。だけど隙間で俺達の事を見ていた。
「セ〇〇スじゃないわよ」
「そうだ。これがセ〇〇スだ」
お嬢に頭を殴られる。
「やっぱり、これがセ〇〇スだったんですね。けがらわしい」
「貞操は守っているわよ。絶対にコレがセ〇〇スじゃないからね」
「新庄さんのおかげで相当倒しましたね」とミチコが言った。
「そうだ。お嬢のおかげだ。全てお嬢が倒したみたいなもんだ」
「……別に私は何もしてない、ことはないけど」
「さすがにレベルアップしたんじゃないですか? 小林さん。レベルアップしているかどうかは冒険者ギルドに行かないとわからないんですけど」
「成長しました、って神の声が聞こえるんだけど。みんな聞こえないの?」
ミチコが俺を見る。何かを考えているようだ。
「普通は聞こえません。光太郎さんの神の声はみんなの神の声と違うのかもしれませんね」と少女が言う。「まさかね」
「レベルアップしたら魔力量も増えるよね?」とお嬢。
「そんなことより熱くねぇー?」と俺。
「3発に1度はキスさせられているんですけど」
「痛い痛い脇腹をつねるな」
「痛かったら手をあげなさいよ」
俺は手をあげる。
「これぐらい我慢しなさいよ」
「なんで手を上げさせたんだよ」
「お二人さん」とミチコが言った。「私達は木の上にいたり、木から降りたりしているだけで長いこと動いてません。次に新しい木に登るんじゃなくて、避難所に行きませんか?」
「たしかに一万文字ぐらいは木の上にいるな」
「文字数で言わないでください」
「そうね。たしかに20ページぐらいは木の上にいるわね」
「ページ数で言わないでください」
「でも俺達は避難所には行かない」
と俺が言う。
高田ミクが〇〇市にいるのだ。
俺は彼女を助けに行かないといけなかった。
「私も避難所には行かない。お母さんを助けに行かないと」
「私だってお父さんを助けたいです。でも私達じゃあ助けることができないんです」とミチコが言う。
「レベル不足か?」と俺は尋ねた。
はい、とミチコが言った。
「それじゃあ木の下を見てみろよ」
ハイゴブリンが大量に死んでいる。
生きているハイゴブリンはいなかった。
「炎がココまで登って来てます」
「通りで暑いわけだな」
「飛び降りましょう」
「ミチコ、抱っこしてあげようか?」
「小林さんに抱っこされるのは、なんか嫌です。けがらわしいです」
「そうかい。そうかい」
マンションの3階ぐらいの高さがあった。
怖い。こんなところから飛び降りれねぇー。
絶対に骨折する。
「相談なんですけど、さっきと同じように抱えて飛び降りてくれませんか? お嬢様」と俺が言った。
「絶対に無理。炙られて死ね」
お嬢はそう言って、ミチコを抱えて先に飛び降りた。
「薄情もの」と俺は言う。
どうやってココから飛び降りるんだよ?
よくお嬢はココから飛び降りて骨折しねぇーな。
このままでは俺は炎で炙られる。
炎に炙られるか? 飛び降りるか? どちらにしても自動回復がある。
5メートル以上も高いところから俺は飛び降りた。
足がビーンってなって、電流が走ると思っていたのに、あら不思議、クッションの上に飛び降りたみたいに衝撃がない。
「どうしたの?」
冷めた声でお嬢に聞かれる。
「いや、飛び降りても足が痛くないな、って思って」
「レベルアップしたおかげでしょう」
筋力や耐久のパラメーターも上がったんだろうか?
建物の影から人が現れた。
俺は緊張する。ここから逃げなくては?
「生きている人がいます」
とミチコが言った。
「あれは……絶対に出会ってはいけない人よ」とお嬢が言う。
同感だった。
「隠れよう」
俺は木に触れる。
「また木に登るんですか?」
「隠れなくちゃ絶対に後悔する」と俺は言った。
「そうね」
俺達は再び木の上に登った。
やっぱりソイツは俺達が木に登って行くところを見ていたらしい。
ソイツは俺達を見上げている。
「僕を助けに来てくれたのかい?」
デブだった。
ハァハァ、という荒い息。
彼はボロボロの制服を着ていた。
ココに来るまでに色んなことがあったんだろう。
だけど無視だ。
田中中が木を登ろうとしている。
でも彼が登れるような枝はない。
木の幹にデブがしがみついているだけである。
「大丈夫ですか?」
とミチコが声をかける。
「声をかけるな」
とお嬢が怒っている。
「えっ、でも……」
「君の名は?」
とデブが尋ねる。
「道端ミチコです」
「それじゃあミチミチか」
「勝手にあだ名を付けられました」
「俺の名前はサトウ○ケル」
「サトウ○ケル?」とミチコが首を傾げる。
このやり取り、何回やるねん。
「仮面◯イダー知ってるかい? あれの主演もやってた事があるんだよ」
「ヤバい人でした」
「嘘だよ。似すぎていて本物と思ったかい? 抱きしめてあげようか?」
「今から無視してもいいですか?」
「なんで君達は木の上に登っているんだい? 僕が助けに来たよ。降りておいでよ。みんなで避難所に行こう」
「俺達は〇〇市に行く。ミチコはアイツと一緒に避難所に行ってくれ」
「私も〇〇市に行きます。避難所には行きません」
「ダメだ。お前はまだ小学三年生だ。避難所に行け」
「私だってお父さんが〇〇市にいるんです。マップで道を確認しましょう」
「ほら見てごらん。このハイゴブリンの屍の山を」
と田中中が言い出す。
「全部、僕が倒したんだよ」
なんで田中中はわかりきった嘘をつくんだろうか?
「ミチコはアイツと避難所に行くのよ」とお嬢が言った。
俺とお嬢の気持ちは一緒だった。
ミチコを差し出せば、アイツは俺達に付いて来ないだろう。
「嫌です」とミチコは言って、ランドセルからアイフォンを取り出す。
「小林さんは強くなりました。もしかしたら助け出すことができるかもしれません。助け出す順番を考えましょう」
「お前まで〇〇市に来たら、あのデブも付いて来るかもしれねぇーだろう」
「あの人と二人になりたくないんです」
「なにをコソコソと喋っているんだい?」と田中中が尋ねている。「もし怪我をしていたら、僕が治してあげよう。舐めたら傷って治るらしいよ」
「私も〇〇市に付いて行きます。付いて行かせてください」
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