第23話 エッチなことして無限攻撃
少女が出した妙案というのは俺がお嬢の炎のスキルを手に入れることだった。炎そのものが魔力であるため、銃弾と合わせて魔力攻撃ができるのではないか? ということだった。
そんな事は俺だって考えた。
だけど攻撃されなきゃ、スキルが手に入らないから口にしなかったのだ。
キスを強要した俺にお嬢は怒っている。
もしお嬢が力加減を間違えて、本気で攻撃してきたら俺は死ぬ。
ちなみに妙案を検索かけたところ素晴らしい思いつき、と書かれていた。
コイツは自分が思いついたことを素晴らしいと思っているのだ。
「またハイゴブリン達が木を切ろうとしてるよ。もう俺には魔力は無い」
魔力があれば木を攻撃されても植物を成長させることができる。
「絶対に後で殺す」
こんな事を言う奴に攻撃させたらダメなのだ。絶対にミチコの案は却下だ。
お嬢は俺に馬乗りになった。
もう少し上に座ってくれたらいいのに。
そしたら俺のジョージがこすれるのに。
ごめんなさい。こんな事を考えてしまうのは好色というスキルのせいなんです。
普段の俺は、こんな下世話なことは考えない。
いや、考えているんだけど、直接的にこんな風に書かない。
お嬢が俺に跨ってくれるだけでガンガンと魔力が回復している。
なのにお嬢は俺の顔に顔面を近づける。
ゴブリンの生臭い匂いがする。
だけど我慢我慢。それぐらい大した問題じゃ無い。
彼女は俺の頬にチュッとキスをした。
「うむ。よかろう」と俺は言った。
なにがよかろう、なんだろうか?
「スキルを手にいれる時って攻撃しなくちゃいけないのよね?」
「その案は却下だ」
「私達が生き残るのは、その案ぐらいしかありません」とミチコが言う。
俺は嫌な予感がした。
「退いてくれてもいいんだよ? 自分の枝に戻った方がいいんじゃない?」
「いいのよ。ちょっとアナタに用事があるんだから」
「俺には用事は無い」
「私があるのよ」
背中に刺さっていた両手剣をお嬢は抜いた。
炎の魔剣。
「俺を殺す気か」
「自動回復があるのよね?」
「即死は回復できません」
お嬢は天然だから俺をマジで即死させそう。
「即死はさせないわ。大丈夫。優しくやってあげる」
「イヤーーーー」
炎の魔剣が近づいて来る。
「やめてください」
とミチコが叫ぶ。
「どうして? 私はコイツを殺したいのに?」
殺したい、って言ってるじゃん。
「炎が木についています」
「あっ……」
彼女が両手剣を仕舞う。
コイツはバカなのか?
「どうしよう?」
「もう俺のことを殺そうとしない、と誓うなら火事をどうにかしてあげる」
「アナタもゴブリンの群れに落ちるのよ」
「いいぜ俺は。ゴブリンの群れに落ちても、襲われるのはお嬢なんだから」
「わかった。誓う。誓うわ」
俺は火事になっているところだけ、枯らして切断させる。
ゴブリンの群れに火が落ちる。
「でも攻撃しなくちゃスキルが手に入らないっていうのは変わらないんでしょ?」
お嬢の手に炎が宿る。
少年漫画の主人公が必殺技を出す時みたいな拳になっている。
「攻撃してくれたらいいの。強さは関係ないの。痛いのは嫌。初めてなの。優しくして」
「大丈夫よ。優しくしてあげるから」
お嬢は言ってニヤーーーっと笑う。
絶対にこの人、優しくしてくれない。
アタイにはわかる。
この人はアタイが痛い、って言っても絶対に止めてくれない。
「痛かったら手をあげてもいい?」
「勝手にどうぞ」
俺は手をあげた。
「まだ殴ってないわよ」
「痛いの嫌」
炎の拳が俺の頬に入った。
大きなハンマーで殴られたような痛み。
それに頬が溶けるように熱い。
コイツ、マジか?
こんなに痛いパンチ受けたのは初めてなんですけどー。
痛すぎて手も上げられない。
『冒険者の攻撃スキル、炎を使えるように成長しました』
神の声が聞こえた。
これで炎が使えるようになったわけだ。
だけど続いて二発目が俺に向かって来る。
えっ? 2発目?
2発目は何の意味もねぇーよ。
またまた強烈な痛みが頬に。
俺は手をあげる。
「大丈夫です。もう少しで終わります」
とお嬢が言う。
もう少しで終わるって、どういうことだよ?
まだ終わんねぇーのかよ。
「お二人さん。今すごくピンチです」
とミチコが言ってくれなかったら、まだ俺は殴られていただろう。
頬の火傷が自動回復していく。
自動回復がなければ俺の頬は焼き焦げていただろう。
スライムさんの固有スキルの自動回復があってよかった。
たしかに俺達はピンチだった。
地面に落とした炎が、ゴブリンの手によって木の根本に引火している。
この木が燃えて倒れるのも時間の問題だった。
「なんとかしなさいよ」
自分がやらかしたことなのに、お嬢は悪びれもせずに言ってくる。
「植物を成長させても木の根本が燃えているから、無理」
「それじゃあ、どうするのよ?」
「木が倒れる前に、この辺のハイゴブリン達を倒して、別の木に移る」
「できるの?」
できるような気がする。
銃弾を撃ちやすいように俺は座り直した。
お嬢は自分の枝に移動した。
銃弾を撃つ時は指の中に弾が入っているイメージをする。
その弾を燃やすようにイメージして、指に力が入た。
「レイ◯ン」
俺は銃弾を撃った。
銃弾はゴブリンの肩を撃ち抜いた。
「やった。効いてる。効果があるぞ」
「ちょっと小林さんよろしいでしょうか?」
とミチコが言ってくる。
なにをコイツは冷静なんだよ。もっと喜べよ。
「今、なんとおっしゃいましたか?」
「効果あるぞ、って言ったよ」
「その前です」
「レイ○ン」
「漫画の作品の攻撃名を使わない方がよろしいんじゃないでしょうか?」
「どうして?」
「過度なパロディーだと思われますよ?」
「いいじゃん別に」
はぁー、とミチコがため息をつく。
「アナタはギャグだと思って言っていることでも過度なパロディーだと思わたら、コンテストから外される恐れがあります。過度なパロディーは禁止なんです」
「おい、コンテストってなんだ? メタファー的なことを言ってないか? 大丈夫か?」
「念のために控えていた方がいいでしょう」
「……わかったよ。それじゃあ攻撃する時は技名を言いません」
「それはダメです」
「どうして?」
「技名はカッコいいから言っている訳じゃなく、何の技を出したのか味方が把握するために言うんです。技によっては事故がありますから。回復系の技なら言わなくても結構ですが、攻撃系の技は言わなければ仲間の死につながります」
「わかった。適当に考える」
「赤玉」と俺は言って、炎がまとった銃弾を撃った。
ゴブリンの脳天に命中。
今までスライムのスキルで吸収したことはあったけど、初めて攻撃スキルで魔物を倒した。
すげぇーー嬉しい。
『レベル2に成長しました』
神の声が聞こえた。
レベルアップしたじゃん。
そんな喜びはすぐに消え失せた。
「赤玉だって、ダサくない?」
「ダサいですね」
「ネーミングセンス無さすぎ。やっぱりセンスの無さが顔に出てるわね」とお嬢が言い出す。
「別にいいだろう。思いつかないんだもん」
「それにしても赤玉って」とお嬢が笑う。
俺が赤玉、と言って銃弾を撃つたびに、クスクスと二人が笑っている。
技名なんて言いたくない。
こんな恥ずかしい思いをするなら言いたくない。
だから技名を言う時は小声になっていく。
「技名が小さくなっていますよ」とミチコが言ってくる。
そもそも今この場面で味方に攻撃が当たってしまう、っていう事故はあるんだろうか。
ねぇーよ。
それじゃあ言わなくていいんじゃないだろうか?
「もう技名は言わないから」
「バカだからずっと言うと思ってたわ」とお嬢が言う。
「それじゃあ、味方が危ない時は言ってください」
「なんで二人はニヤついているんだよ?」
「技名を言いながら銃弾を撃つ光太郎がカッコよかったわ」
「嘘だろう」
と俺は言った。
「ちゃんと黒歴史の一ページに残すべきだわ」とお嬢が言う。
「黒歴史って言ってるじゃん」と俺。
「それじゃあ味方が事故に合いそうな時だけでも言ってください」とミチコ。
「絶対に嫌」
「もう笑いません」
とミチコが言う。
「考えとく」と俺は言った。
「早く撃ってハイゴブリン達を倒してよ」とお嬢が言う。
「弾切れなんだよ」と俺は言った。
そして俺はお嬢を見た。
「なによ」
とお嬢が言う。
「チューお願いします」
「嫌よ」
「もう炎で木が倒れそうなんだけど。ココから赤玉を撃てばハイゴブリンを倒せるんだけど」
赤玉だってクスクス、とお嬢が笑う。
もうや〜めた。
「一緒にハイゴブリンの群れに飛び込もうぜ」
「わかったわよ。ちゃんと狙ってよ」
本当はチューなんてしてもらわなくても、彼女が抱きついたり、触ってくれるだけでエッチな気持ちになって魔力は回復するんだけど、俺はチューを求めた。
彼女は俺の枝にやって来る。
そして俺の真正面に座り、頬に柔らかな唇をつけた。
「もう時間が無い。一気に倒す。だからお嬢は俺を抱きしめて、頬とか首とか耳にチューしてくれ」
「嫌よ。絶対に嫌」
「わがまま言うなよ。それじゃあハイゴブリンの群れに飛び込むか?」
「……絶対にいつか殺すから」
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