第20話 女、女、女

 オシッコを漏らしそう。

 ヤンキーに絡まれた時みたいにお尻の当たりがキューーーってなっている。

 こりゃあ絶対に勝てないですぜ。

 ハイゴブリンが集団でコチラに来る。

 いやあぁーーーー、俺は指から銃弾を撃つ。

 もしかしたら体育館に入って来たハイゴブリンがたまたま強くて、コイツ等は弱いんじゃないだろうか? そうだったらいいな。絶対そうだ。そうに決まっている。

 バン。

 俺の銃弾なんて一ミリも効きませんでした。

 当たったはずなのに擦り傷すら作っていない。

 ヤバい逃げろ。


『女、女、女ぁぁぁ』


 ハイゴブリンが襲って来る。

 主に新庄かなに向かって行く。

 ハイゴブリンちゃんのアレだってギンギラギンである。

 アレっていうのは、下半身についている別名を息子と呼ぶ物である。

 ペットボトルを入れているのか、というぐらいに膨らんでいる。

 飛び出ている奴もいるぐらい。

 これ以上は描写してしまったら、下ネタ警察に捕まりそうなで控えさせていただきます。

 でもハイゴブリン達のアレはご立派。

 体と比例するのかね?

 ペットボトルって比喩表現をしたけど500ミリの方じゃなくて、2リットルの方である。

 アレが体に入ったら、体が裂けてしまうだろう。

 ごめんなさい。下ネタ警察に捕まりそうとか言いながらも、追い描写をしている。

 ハイゴブリン達が『女、女、女』と合唱している。

「いやぁーーーーーーーーーーーーーー」とお嬢が叫びながら炎の剣をぶん回している。

 お嬢の剣は効くみたい。

 炎の剣を食らったゴブリンは首チョンバ。

 ビュッシューーーーと血を出しながら、『女ぁーー』と最後の言葉を残して死んで行く。

 お嬢の体力というか、魔力が少ないせいで、すぐに息がハァハァと荒くなっている。

 俺は少女を抱いた。

 抱いた、っていうのは抱きかかえただけで、変な意味じゃない。

 ハイゴブリンのせいで文脈がおかしくなってしまったけど、逃げるために少女を抱きかかえた。

 重たい。

 さっきはシャボン玉のように軽かったのに。

「逃げるんですか?」

 と少女に尋ねられる。

「当たり前だろう」

「Bランク冒険者ですよね? 逃げなくても倒せるでしょ?」

「Bランク? なにそれ? 俺はYOEEEEよ」

「えっ?」

 と少女の顔が一気に真っ青になった。

 彼女の体が一気に軽くなる。

 シャボン玉、というよりも空気と同じぐらいの重さである。

 もしかしてコイツは小学生のくせに冒険者なのか?

 何かのスキルが発動しているとしか思えない。

 俺は少女を抱いて、街頭に埋め込まれた木の近くまで走る。

 この道路は春には桜の道ができる綺麗な道である。

 その頃まで俺達は生きているのでしょうか?



 拝啓、十年後の私へ。

 十年後の私は今なにをしているでしょう?

 今の私はハイゴブリンに襲われています。

 仲間にいたってはアレがギンギラギンのハイゴブリンに襲われています。

 ギンギラギン、というのはどういった状態でしょうか?

 昔アイドルがギンギラギンにさり気なく、と歌っていたらしいです。懐メロで見たことがあります。

 全然さり気なくないです。

 全然、さり気なくなく、襲われています。

 十年後の私は桜の木の下で今の状態を思い出して、笑っていることだと思います。

 十年後が楽しみで仕方ありません。

 アナタに会えることを楽しみに、アナタになれるように頑張って生きたいと思います。

 

敬具


 

 ハイゴブリンに襲われていることで頭がバグりすぎて、脳内で十年後の私に手紙を書いてしまった。

 危なっ。

 アンジェラ〇〇になりそうなところだった。

「お嬢」

 と俺は叫んだ。

「こっちに来い」

 俺は木に触れた。

 お嬢は必死の顔で俺達の方まで来る。

 そりゃあ捕まったら最悪なアダルトビデオのシリーズみたいな事になってしまうんだから、そんな顔もするよな。

 お嬢が来る。

 木の枝が縛るように俺達の体に巻きつく。

 そして木が成長して、俺達の体が上に上に登って行く。

「さっきと同じ状態に戻ってきました」

 と少女が呟いた。

 少女は電柱の上で俺達に助けを求めた。

 それなのに今、少女は木の上に登っている。

 俺達に助けを求めた意味ねぇーじゃん。

 そう思ったら、ちょっと笑える。

 下にいるハイゴブリン達は女を諦めていないらしく、小鳥の合唱のように『女♪ 女♪ 女♪』と鳴いている。

 この声に耳を傾けて、コーヒーでも飲んだら目覚めのいい朝になるだろう。

 俺、コーヒー飲めないけど。

 つーか、ハイゴブリンの欲情している声なんて聞いても不愉快なだけだけど。

 こっからどうしようか?

 もう身動き一つできねぇー。

 オワタ。笑。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る