寝起きの悪戯
ニアとリリス、それぞれと新しい関係になって迎えた朝はノアにとって物凄くインパクトのあるものだった。
「……これは天国なのか? いや地獄?」
そう呟いたのには訳があった。
起きたばかりのノアだったが、何故だか体が動かせなかったのだ。ある程度頭を覚醒したところでその原因が分かった。昨夜、ノアに寄り添うように眠った二人をノアがそれぞれ左右の手で抱きしめるようにしていたのだ。
「……まるで王様みたいだなこれ」
とてつもない二人の美女ともに眠るだけではなく、その二人をあまつさえ抱きしめて眠る贅沢さ……世界の男が羨ましいと叫びそうな光景だ。
「すぅ……すぅ……」
「ノア君……すきぃ……」
身を寄せ合っているが、まだ足りないと言わんばかりに二人は眠った状態でノアを求めていた。まだ眠かったノアだが、流石にこんな状況では二度寝なんて出来るわけがない。
「……参ったな」
それは苦笑と共に出た言葉だった。
起き上がれるならまだしも、二人を抱きしめるようにしているということは二人の体の下に腕が通っているわけだ。つまり、二人が退いてくれなければノアは動くことが出来ないのである。
「……凄く柔らかくて、香りが良くて……はぁ」
ため息が出るほどの幸せだった。
しかし、不思議とノアの腕が痺れてこない。成人女性と変わらない二人の重さだからこそ、夜中の間もこうしていたのなら腕が痺れているはずなのだ。それなのに腕はとても楽なことを考えると、何か魔法が使われているのかもしれない。
「……ニア? リリス?」
呼びかけてみるが二人は目を開けない。それどころか、名前を呼ばれたことで更に身を寄せてきた。それなら起きているのではないかとノアは思ったが、チラッと見たが起きた様子は見られない。
「……魔王とサキュバスクイーンに悪戯ってありか? いやせねばなるまいよ」
正直なことを言えば寝起きと興奮で頭が沸騰していたのだ。
両サイドから身を寄せられているということで、体の肋骨部分にぷにぷにと二人の豊満な胸が当たっている。ノアは全くの偶然を装うように、手の二人の胸に押し当てた。
「……っ」
その瞬間、やっぱり素晴らしい感触がノアに訪れた。
ニアとリリスは二人とも豊満なバストを持っているが、リリスの方が更に大きい。それなのに全く垂れたりしていない正に至高の胸だった。大きさは違うも指が段々と埋没するほどの柔らかさは当然で、両の手から伝わる二人の感触にノアは頬を緩ませた。
「……これ、なんて幸せな時間なんだろう」
緩む頬が抑えられず、ついついモミモミする手に力が入ってしまった。
ニアの方はともかくとして、リリスの方は先端に指が当たってしまったのだ。少しだけ震えた体と漏れた声にノアは焦り、すぐに目を閉じて寝たふりを決行した。
「……すぅ……すぅ」
「……ふぅ。やれやれだぜ」
どうやらリリスは目を覚まさなかったみたいだ。その代わりと言ってはなんだが足を絡めるようにリリスがしてきた。そうすると何故かニアは同じように足を絡ませてきたので完全に逃げ道を封じられてしまった。
さて、そんな風にノアに悪戯をされていた二人だが……当然起きていた。
目を開けてはいないが、ノアがどんなことをしてくるのか興味と期待があってそのままの状態を続けていたのである。
(……魔王様、今ので私完全にスイッチ入りそうなんですけど)
(流石に朝からは……したいけどやめておきなさい。昨日の今日でしょうが)
(っ……現在もこんな風に刺激されて抑えろと!? 魔王様の鬼畜!!)
(黙りなさい! 私だって今すぐ襲い掛かって合体したいのを抑えてるんだからあなたも我慢しなさい! 魔王命令よ!)
(うがあああああああああっ!!)
二人とも魔法でお互いの思考のやり取りをしていた。
こうしている間にも、ノアはニアとリリスの胸を揉んでいる。正直なことを言えばかなりムラムラしている……がしかし、それよりもやっぱりノアにこうして求められていることが嬉しかったのだ。
(魔王様、私……幸せです)
(あら、それは私もよ。エッチな悪戯だけど良いモノね愛おしい人に体を触られるのって)
(はい。何なら……ふふ♪)
(リリス?)
何やらリリスの方はお返しを思い付いたようだ。
「う~ん……はぁ♪ ノア君~♪」
「わぷっ!?」
寝ぼけた姿を装うようにリリスは胸の位置をノアの頬に移動させた。いつものようにノアをその豊かな胸に抱こうとしたのである。しかし、今は近くにニアが居るためリリスは彼女にウインクをした。
(今度は私たちが悪戯をする番です。ほら魔王様も同じように)
(あぁそういうことね。分かったわ♪)
ニアもまた、同じように胸の位置をノアの頬に当たるようにした。
こうすることで何と、二人のバストによるサンドイッチが完成した。ノアは完全に頬を赤くしてしまい、どうしようかあたふたと迷っている様子だ。その様子を片目を開けて楽しむノアとリリス、どうやらまだまだノアは二人には勝てないみたいだ。
「……何やら桃色な気配を感じますね」
「いきなり何言ってんだおめえは」
「申し訳ありません独り言です」
魔界にてノアたちがイチャイチャしていた頃、ゾナの呟きにオーバが怪訝そうな顔で口を挟んだ。ゾナはオーバから視線を外し、今日もまた騒がしい冒険者たちを見つめてため息を吐く。
「もう少し華が欲しいですよね」
「それを言うんじゃねえよ……同感だが」
女よりも男が多いので、必然的にゾナのような感想が出てしまう。
しかし、ゾナの華とは女のことを言ったのではない。当然その答えにオーバは行き着くことは出来ないので真相は闇の中だ。
いつものように受付をしていると、三人の男の子がギルドにやって来た。
彼らは一目散にゾナの元に向かい、可愛い笑顔でこんなことを口にした。
「ゾナお姉さん来たよ!」
「今日も授業するんだよね?」
「大人になるために必要な授業!」
荒くれものが多いギルドに現れた天使を見てゾナはむふっと笑みを浮かべた。
「分かりました。ギルド長、私はしばらく席を外しますが」
「おう行ってこい。坊主ども、ゾナの教え方は分かりやすいからタメになるだろ?」
「うん! 凄く為になる!」
「凄く気持ちよくなれるし!」
「……恥ずかしいけど頑張る!!」
難しい問題でも解けた時の気分は最高に気持ち良い、それはオーバも経験があるから良く分かる。分からなかった時は恥ずかしくも思うが、それもまた糧になって自分を成長させてくれるものだ。
子供たちを連れて出て行ったゾナをオーバは笑顔で見送った。
この街の子供達には本当に人気のゾナだが、子供に好かれる大人の存在はとても大事なものだとオーバは考えている。
……まあ、ゾナの裏の顔を知ったら卒倒するだろうが。
今日もまた、アバランテの街は平和である。
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