二人に包まれて
「……あ~」
「……ノア君大丈夫?」
……何とか大丈夫だ。
お風呂場でリリスと……まあそういうことをしたのだが、本当に何もリリスに対して抵抗できなかった。……恥ずかしい話だが、リリスから与えられる快楽が強すぎてちょっと怖かったくらいだ。
「ノア君とエッチ出来るのが嬉しくて羽目を外しすぎたわね……その、悪くはなかったと思うのだけどどうだったかしら」
申し訳なさそうにしながらリリスはそう言った。
俺は確かになと苦笑してベッドの上から起き上がった。何というか、怖かったとは言ったが良かったことに変わりはない。サキュバスの女王であるリリスだからこその手腕というか、性的なモノに作用するサキュバス特有の魔法なんかもあって……夢のような時間だった。
「疲れたけど素敵な時間だったよ」
「……そう言ってくれると嬉しいわ」
不安そうな顔から一転、嬉しそうにリリスは笑みを浮かべた。
風呂で力尽きてリリスにベッドまで運ばれたのだが……それに関しては情けなかったかもしれない。とはいえ、もうすぐ夕飯の時間だけど俺はしばらくリリスの温もりが欲しかった。
「リリス、来てくれるか?」
「っ……もちろんよ♪」
リリスにおいでと言われても、俺から来てほしいとは言ったことなかったか。リリスはぴょんと俺の元に飛び込んできた。そのまま押し倒され、リリスに再びキスの雨を降らされる。
「……ふふ、こうしてキスをするとまた昂ってくるのが難点ね。私自身の性欲が強いのは理解しているけれど……まさか愛する人が相手だとこんなにも燃え上がるなんて思わなかったわ」
確かにちゃんと俺のことを労わってくれてはいたが、限界が近くなると一心不乱な様子だったしなリリスは……まあでも、ある意味本気のサキュバスを相手するのは命懸けというのは勉強になった。
「あぁそうだわ。ノア君、口を出して」
「え?」
何だろうか、リリスは俺の口に胸を近づけ……えっ!?
突然何を、そう思った俺にリリスがハッと気づいたように言葉を続けた。
「そうね。さっきはノア君も夢中だったし気づかなかったのね。ほら、そのまま口に含んでちょうだい」
「お、おう……」
……俺は一体何やらされているというんだ。
リリスに言われた通り口に含むと、何か液体のようなものが俺の喉を通っていく。まさかと思ったがあまりの美味しさにごくごくと喉を鳴らして飲んだ。すると活力というか、体の疲れが一気に取れていく感じがした。
「良い子よノア君。今私の魔力を直接ノア君の体に与えて疲れを取っているの。ちなみに私にノア君が付いてこれたのもさっきこうしてあげたのよ」
「そう……だったんだ」
なんだこのエッチなファンタジー要素は……あ、ファンタジーな異世界だったわ。
口から零れた液体を舐め取ったリリスはそのまま俺に唇を重ね、そのままさっきと同じように舌を絡ませた。
「……本当にダメね。今ノア君を前にするととても我慢できそうにないわ。えい!」
リリスは軽く両手で自分の頬を叩いた。
潤んでいた瞳をシャキッとさせ、無意識なのか漂わせていた甘い香りをリリスは引っ込めた。
「これで良しっと。それにしても……今はノア君を他のサキュバスの子に会わせない方がいいわね」
「なんで?」
「教えてあげましょうか」
リリスが鈴のようなものを鳴らすと、二人のサキュバスが扉を開けて料理を運んできた。美味しそうな匂いと共に運ばれてきたが、途中で二人は立ち止り何故か俺に目を向けた。
「……あ」
「この香り……ぅん」
二人が俺を見つめる視線はさっきのリリスと一緒で……えっと、これは一体どういうことなんだろうか。
「発情してるのよ。魔王様の魔力と私の魔力を取り込んだせいね。詳しいことは分からないけれど、どうもノア君の体は私たちの魔力ととても相性が良いみたい。それで吸収しきれない魔力が媚薬のような効果を伴って垂れ流されているの」
「なるほど……」
「私はもう慣れたわね流石に。でも彼女たちは違う……あなたたち」
パンパンとリリスは手を叩いた。
その音に彼女たちは我に返り頭を下げて出て行った。
「ということで、今日は大人しく私の部屋に泊まるといいわ。ちなみに反応するのはサキュバスのみだけど、ここを出たらサキュバスの巣窟だし大変な目には遭いたくないでしょう?」
「だな。ここに居る」
「そうしてちょうだい♪」
おそらく捕まってそれはもう大変な目に遭うんだろうが、何故か命の危険を感じたので今日はリリスの部屋に泊まることにさせてもらった。お互いに気持ちを伝え終え体も交わったからなのか、リリスの接し方がとにかく可愛かった。
ご飯も俺にあ~んをとにかくさせたがるし、食べさせてほしいなんて普段は言わないことまで言っていた。そして夕飯を終えて少しした後、ニアが転移で現れた。
「ノアあああああああああっ!!」
「わぷっ!?」
現れた瞬間抱きしめられ、いつものようにその胸元に顔が埋まった。
「もう疲れたわよ~! でもノアのことを思い浮かべればなんのその! このためだけに私は生きているんだわ!!」
「……全くもう、今日は一日ノア君を独占できると思ったのに」
少しだけ拗ねたようなリリスの声だったが、その後に笑っていたのでニアの来訪に関しては歓迎している様子だ。
「リリス、あなたもノアに愛を誓ったのね?」
「もうずっと前からですよ。でも、改めてノア君とは言葉を交わしました」
「そう、それじゃあ仲間ね。これから一緒にノアを支えていきましょう」
「もちろんです。私の全てを持ってノア君に奉仕するつもりですよ」
「……やっぱりエッチねあなた」
「エッチではないサキュバスなんて居ないと思いますが」
一瞬で賑やかになったな。
とはいえ流石にリリスの相手をしたのはかなり体力を使ったらしく、いくら疲れを取る処置をされたとはいえ眠くなってきた。
「あら、眠そうねノア」
「仕方ないでしょう。今日は二人でノア君を挟んで眠りましょうか」
俺はニアにお姫様抱っこをされるようにベッドに向かった。
そのまま三人で川の字を作るように横になった。二人から挟まれ、いつぞやみたいな光景だがあの時よりも俺の気持ちはハッキリとしていて不思議な気分だった。
「……俺さ」
「うん」
「えぇ」
呟いた声に二人はちゃんと聞いてくれていた。
「この世界に来て本当に幸せだ。ニアやリリスに会えたこと、本当に嬉しかった」
それだけ伝えてすぐに目を閉じた。
眠りに落ちる瞬間、両方の頬にそれぞれキスをされるのだった。
「私もよ。愛してるわノア」
「私も同じね。愛してるわよノア君」
そうしてその日は二人の温もりと柔らかさに包まれて眠るのだった。
しかし……なんだろうこの素晴らしい感触と温もりと香りに包まれて眠る感覚は。まるで一生分の運を使い切ったような気もするが……今はただ、彼女たちの想いに浸ることにしよう。
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