第4話 川沿いを下ってみる
ヤスコは木の上でグッスリと眠り、朝日と共に起床しました。夜目が利く鳥の魔物は近くに居なかったようです。
キョロキョロと辺りを見回すと、朝日にキラキラ輝く小川が流れているのが見えました。
「まぁ、小川があったのですね、下流に行けば町か村か有るでしょう?」
ヤスコは人間サイズに戻って、小川に沿って歩いて下って行きます。
「きれいな水に見えますから、喉が乾いたら飲んでみようかな?」
綺麗な小川の水を飲んで喉の渇きは癒されましたが、空腹は満たされませんでした。
食べ物を持っていないので朝から何も食べてないのです。
「あ、赤い果物が木の枝に実っていますぅ」
ヤスコはチョット大きくなって、枝から果物をむしり取りました。
シャクッ、
「まぁ、林檎ですね。完熟していて美味しいですぅ」
ヤスコは赤く完熟している実を全てむしり取り、マジックバッグに収納します。
「身長を変えれるから、高い場所の林檎も簡単に取れますぅ!」
けれどもヤスコは、林檎を齧りながら小川に目を移しました。
「この小川にはキットお魚がいますよね。焼いて食べれないでしょうかぁ?」
ヤスコは釣りをした事がありません。魚を取れたとしても捌いた事もありませんし、火の起こし方も知りませんでした。
靴を脱いで川に素足を入れてみます。
「ひゃっ、チベタッ! ちょっと無理~。町迄我慢するしかなさそうですぅ」
小川沿いには時々果実が実っていました。太陽光が当たりやすく温暖な気候なので、果実が実り易かったのです。
丸一日歩きましたが、その日も町に辿り着けませんでした。人すら見かけなかったのです。
「はぁ、人恋しいですぅ。誰かと話したいですぅ。寂しいなぁ……」
又、木の上で寝る事にしました。
チュン、チュン、チュン
ヤスコはその日も木の上で目が覚めました。
「ゥウ~ン、おはようございますぅ。今朝もひとり朝チュンですぅ……」
林檎を
しばらくすると、桃の木に1つだけ果実が成っていました。
「実が1つしかありません、食べたらスグに終わってしまいそうです。……そうだ、小さく成って食べてみましょう!」
ヤスコは枝に手を掛けてから毛虫サイズに成って、ぶら下がっている桃の実に潜り込みました。
そしてお腹いっぱいに食べて満腹になり、モモの甘い香りの中で再び居眠りを始めてしまったのです。
その行動をじっと遠くから見ていた烏が、ヤスコが桃の中に入って見えなくなったので
〇 ▼ 〇
人里離れた森の中の一軒家に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
2人は子宝に恵まれず貴族家から疎まれて、田舎に引きこもって静かに暮らしています。
子の居ない貴族は跡取りが無い為に、権力争いに勝てずに出世街道から外れてしまうのでした。
おばあさんは川に洗濯に来ました。
するとドンブラコ、ドンブラコと普通のサイズの桃が上流から流れて来ます。
偶然でしょうか? 桃の皮を破ったヤスコが、おばあさんの目の前で人間サイズに大きくなりながら現れたのです。
「ヒャァアアアッ! 桃の中で眠ってしまいましたぁ!」
「ギャッ!」
洗濯していたお婆さんが、尻餅をついて口をポカ~ンと開けてフリーズしています。
「初めてのおばあさんですぅ。こんにちわぁ!」
「こ、こんにちは」
その後2人は無言でしばらく見つめ合っていました。
「こ、こんな所で立ち話も何ですから、取り敢えず
「は~い、お願いしますぅ」
おばあさんはヤスコを家に連れて帰りました。
「大変ですよ、おじいさん。川を流れていた桃からこの娘さんが出て来たんです」
「ええっ?」
「きっと、神様が私達に子供をくれたんですよ。イザナギ様が桃の実で邪神を払ったと言う昔話があったじゃないですか」
「う~ん、そうかものぅ。……お嬢さん、遠慮なくここに泊まって行くがよいぞ」
「は~い、ありがとうございますぅ。 マジックバッグに金銀財宝ザックザクに持ってますので、宿代はいくらでも払いますぅ。どうぞ宜しくお願い致しますぅ」
「いやいや、ワシらは貴族だったのでお金には困っておらぬ。それにポツンと一軒家なのでお金を使う所も無いのじゃよ。
心配はな~んもいらんぞい。子供が欲しかったんで、お嬢さんさえ良ければズット居てくれていいんじゃよ」
「優しいおじいさんとおばあさんですぅ、ありがとうございますぅ」
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