第3話 オークの村
「なんかぁ、いつの間にかに最初の草原に戻ってきたみたいですぅ!?」
山裾に広がる草原は、ドラゴンがヤギを捕食する狩場と成っていたのです。ですが、相変わらずここには人の姿は見えません。家も無ければ道らしきものも無く、人が行き来している様子が全く感じられないのです。
ヤスコがキョロキョロと辺りを見回すと、遠くに煙が幾筋か昇っているのが見えました。
「あっ! あっちに人が住んでいそうですぅ、行ってみましょう」
ヤスコは出会った人を驚かさない様に、人間サイズに戻って歩きだしました。
草原から林を抜けて進むと、開けた場所が見えて来て、そこに数軒の小さな木造建ての小屋が有りました。
小屋の中心に広場があり、人が集まり、焚火を囲んでキャンプファイヤーをしているようです。
「う~ん、いい匂い。何かお肉を焼いてるみたいですぅ。ジュルリ」
匂いに誘われるように、ヤスコはフラフラと無防備に焚火に近づいて行ってしまいました。
しかし、ヤスコが近づき声を掛けようとした瞬間に、こちらを振り向いたその顔はブタそのものだったのです!
人間の体にブタの顔が乗っている、何とここはオークの村でした。
「ヒャァアアアアアッツ!」
叫び声に反応してオーク達がヤスコを囲みます。
「フゴフゴッ」
「ブヒブヒッ」
「「「プッギイイイイッ!!!」」」
オーク達は人の娘の姿を見て興奮したらしく、ヤスコを囲んで押し倒そうとしてきました。
「大きくな~れ!」
グググググゥウウウウウンッ!
ヤスコはドラゴンサイズに巨大化すると、オークを次々に蹴散らしていきます。
「いや~っ、あっち行ってぇぇぇっ!」
ドガガガガァアアアアアンッ!
オークは大きくなったヤスコに歯が立たずに、蜘蛛の子を散らすように森に逃げていきました。
広場の中心には牛の丸焼きが、良い香りを上げています。
「いっただきま~すっ!」
人間サイズに戻ったヤスコは躊躇う事なく食べ始めました。転生してからズット何も食べていなかったのです。
ヤスコはお腹いっぱいに成りましたが、それは牛のごく1部でしかなく。牛の丸焼きはとても大きくて、まだまだ肉がいっぱい残っていました。
「う~ん、このお肉はオークさん達に残してあげましょうね。ごちそうさまでしたぁ」
元々オークたちの丸焼きだったのですが……。
あたりを見回すと、良さげな小屋が数件建っています。
「さすがにこの小屋で寝ると、オークさん達に良からぬチャンスを与えそうですね。他に安全に寝れそうな所を探しましょう」
再びヤスコは歩き出しましたが、もうだいぶ日が傾いて来ています。
町への道のりは遠そうで、大きくなって歩けば1歩が大きいのだから早く歩けそうで、町もスグに見つかりそうだけれども。巨大化してる姿を見られて怖がられてもいけないので、元の人間サイズで歩いて行く事にしました。
やがて、とうとう日が暮れてしまい、ヤスコは仕方なく森の中で寝る事にしました。満腹なので眠気に耐えられなくなってしまったのです。
魔物に襲われない様にと、巨大化して高い木の枝に両手を掛けて、そこで子猫サイズに小さく成ります。
マジックバッグの中をまさぐると、ドラゴンの巣から貰った服が入っていたので、それを体ごと枝に巻き付けて眠る事にしました。
「まぁ、こんなもんで大丈夫だよね? おやすみなさ~い」
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