精油師と紙漉師

食連星

第1話

「伽羅ちゃん

怪しいよね?」


『何が?

マスター。』


「この辺り通る時、

変な感じがしない?」


『あぁだから体付きで連れてきたのねぇ。

するわ。

囚われた人の臭いが。』


「だよね。

一緒頑張ろっか。」


『マスター…

依頼されてからで良いのでは?

タダ働きはしません.』


「だって、何だか

ここ最近

ずっと同じ気配だし、

良くなる気配がない…

というか、

悪くなる一方。


待ってても依頼来ないでしょ.」


『自業自得でしょ。

付け入るスキを見せる方が悪い。』


「そうバッサリしないでよ。

人間たるもの欲がないと。

伽羅ちゃん

綺麗だからさ。

これから説教たれに行く訳だしさ。

男になっててくれない?」


『はぁ?

何を寝惚けて。』


「頼むよ。

主が女性の時は男の姿でって

古文書にも書いてたじゃん。」


『マスターが男性だから

此のままで良かろうでしょ。』


「だーかーらっ。

綺麗な女性連れてる男が、

囚われてる男の所に行って

色々言った所で聞いて貰えないって

言ってるんだよっ。」


『この感じ…

正常な判断出来なさそうな所迄

往ってますよ。

私、此の姿気に入ってますゆえ。

マスターの意見は聞けませんわ。』


「はー…

何処のどの物が主の意見を

無視して話を進めるんだよ…」


『早くっ、

早く好きにしたらって言って。』


「今回も

折れるのは俺ですかい。」


『協力しませんよ?』


「…

あぁ、はいはい。

好きにしたらいいよ…」

あー不本意だっ!

どうして好きにしたらいいとか言えるんだよっ.


うん…

人の澱みが内側ドロドロに巣食っている時,

黒いヘドロのようなものを

適度な人間性を残しつつ除去するような力は

伽羅が一番やれる.

ただ,伽羅は我が強いんだよなー.

扱いにくい.

そして,

都合上そうそう使えない.

話は長くなるんだ,これが…


『マスター!

ぼんやりするなら私戻りますよっ!?』


「あー御免御免.

んじゃぁまあ

サクッと行こっか.」


『駄目な者は放って置けば良いんですよ.

どうせ落ちる…

落ちて喰われてしまえば良い.』


「伽羅.

そこまで言うのは聞き捨てならんよ.

白檀に代わって貰おうか.」

さぁ,伽羅どう出るか.


『マスター…

私は白檀よりも遥かに良い仕事をしますわ.』


…知ってる.

だから,名前出して煽ってるんだよ.


「やれる?

出来る?

大丈夫?」


『勿論ですわ.』


よっしゃ,そう来なくっちゃ.

白檀は繊細に仕事をする.

そういう場面に必要.

伽羅と白檀は犬猿の仲.

何故だか詳しくは知らないけれど.

聞くと,自分の肩を持ちながらしか

話せ無さそうなんだよね…

いつか聞いてみるけれど,

多分絶対今じゃない…




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精油師と紙漉師 食連星 @kakumi

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