第27話 ようやく迷宮へ

 翌朝、少し早めに起きた私は、昨日の事もあって一人での散歩を避け、いつの間に買ったのか、リビングの片隅に置いてあったジムのマシンで筋トレしていたアリスに声をかけ、一緒にトレーニングを開始した。

「まだ甘いな。全ての筋肉がなってない」

「そ、そりゃ、アリスに比べたらね!!」

 あーだこーだいい合いながら、私としてはかなりハードなトレーニングを終え、アリスのプロテインをかっぱらって飲み、汗を流そうとキッチンにある給湯器のスイッチを押して起動させ、自動湯張りをはじめた。

「うん、この時間が暇だな。先にやっておけばよかった」

 アリスが笑みを浮かべた。

「そうだね。いつも、こうなるよね」

 私は笑った。

「うん、我ながら段取りが悪いな」

 アリスが苦笑した。

「そういえば、リナとララは相変わらず剣の修行?」

「うん、朝早く出ていったぞ。あの根性は見習うべきだな」

 アリスが笑った。

 そのうち風呂が沸き、私たちは風呂場に移動した。


 脱衣所で服を脱いで、シャワーで汗を落としてから、二人並んで風呂の湯に浸かった。「そういえば、いい入浴剤があったな。待ってろ」

 アリスは一度風呂から出て、小袋入りの固形入浴剤を湯船に入れた。

 シュワシュワして気持ちいい風呂に浸かっていると、眠そうなスコーンとお目覚めバッチリな様子のエメリアが入ってきた。

「おはよう……眠い」

「おはようございます」

 スコーンとエメリアがそれぞれ挨拶した。

「おはよう。スコーンは徹夜?」

 私は笑った。

「うん、徹夜。面白くてボコボコ魔法を作ってたら、この時間になってたよ。お風呂入ったら寝る……。ん、なんかシュワシュワ音が聞こえるけど?」

「ああ、入浴剤だ。なんでも屋でみつけて買ってきた。たくさんあるから、使ってやってくれ」

 アリスが笑みを浮かべた。

「そっか、炭酸のお風呂だね。温かくなるし、疲れも取れるよ」

 スコーンが笑みを浮かべた。

「詳しいね」

「うん、温泉好きだから」

 スコーンが笑みを浮かべた。

「温泉好きね。確かこの町の地下深くに湯脈があるって聞いたがあるけど、一回掘ってみてダメだったって聞いてるよ。千メートル以上はあるって聞いたな。普通じゃ無理だよ」

 私の言葉に、スコーンが反応した。

「えっ、そうなの!?」

 スコーンの寝ぼけ眼がすっ飛んだ。

「うん。でも、掘るっていわないでね。経費がべらぼうにかかるから」

 私は笑った。

「大丈夫、魔法で掘るから。詳細探査で探って、魔法で掘れば一瞬だよ。やる!!」

 スコーンがシャワーだけで、そのまま脱衣所にすっ飛んでいった。

「……多分、千五百メートル以上っていわれているんだけど、大丈夫かな」

 私は苦笑した。


 風呂から上がってしばらく経つと、ズンっと鈍い音が聞こえ、スコーンが家に飛び込んできた。

「温泉でたよ!!」

「ええっ!?」

 にんまり笑みを浮かべるスコーンに、私は思わず声を裏返してしまった。

「うん、とりあえず庭を調べたら二千五百メートル附近になんかあったら、試しに掘ってみたら、熱々の温泉が出たんだよ。今は何でも屋が配管工事してくれてるけど、おかしいな冷泉しか出ないはずなのにな……って不思議そうに呟いていたよ!!」

 スコーンが笑った。

「地熱で温められたかな……。まあ、いいや。よかったね」

 私は笑みを浮かべた。

「キッチンは水道水で、お風呂も湯船だけ温泉にしてもらってるよ。そのままじゃ熱々すぎるから、虹色ボール八個で冷やしてる。庭に露天風呂も作った!!」

 スコーンがキラキラ光る目で、嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 そういえば、スコーンは即断即決。欲しかったら、可能性がある限りどこまでも追求する性格だった。

「さすが、やる事が早い。この温泉どうするの、町中に配るの?」

「そんな事しないよ、うちの敷地内だもん。隣のトロキさんに分けるだけだよ。なんでも屋さんににも分けようとしたけど、配管が面倒だからいいっていわれちゃった」

 スコーンが笑った。

「そっか、色々お世話になってるのに、申し訳ないね」

 私は苦笑した。

「当たり前だ。商売ならともかく、自分のために労力なんて振るうか。よし、できたぞ。さっそくやってみろ」

「分かった!!」

 スコーンは自宅に飛び込み、しばらくすると出てきた。

「問題ないよ。あとは、露天風呂!!」

 スコーンがちょっと小ぶりなまだ柵もない湯船に手を入れた。

「うん、いいお湯だよ。ありがとう!!」

「あとで傘みたいな屋根もつけてやる。そっちの浴室から直接いけるように、渡り廊下もつけた方がいいな。こりゃ三日はかかるな」

 なんでも屋が唸った。

「反則だけど、スコーンが可哀想だね」

 私は呪文を唱えた。

 すると、柵で囲われた立派な露天風呂ができあがり、浴室からの短い連絡通路ができあがった。

「……物質創成魔法。これは、内緒だね」

 私はそっと呟いた。

「なんだおい、いきなり終わっちまったぞ!?」

 なんでも屋のオッチャンが声を上げた。

「私の魔法だよ!!」

 私は思わず笑った。

「そ、そうか。だったら、最初からやればいい気が……あっ、ダメ。いいだしたのは私。そういう考えは!!」

 スコーンが頭を横に振った。

「物質創成魔法っていうらしいけど、滅多に使えないの。必要な時じゃないと発動しないんだ。今がその時なんじゃないの」

 私は笑みを浮かべた。

「……あの、危険な事は承知しているんだけど、また例の自動筆記で教えてくれないかな。ビスコッティやリナ、メリスさんにも内緒にするから」

 私は笑みを浮かべ、新品のノートを取り出して自動筆記を試みた。

 結果は許可されたらしく、スバババとノートに筆記されていき、開けたままの空間ポケットから一冊ずつ新しいノートが繰り出されて、合計十冊にも及ぶ長大な呪文の元ができあがった。

「ふう、ノートが足りたか。あと百冊近くあるはずだけど、補充しないとだめだね」

 私は笑った。

 マッパーといっても色々なマップの描きがあるが、私はクリップボードに重要事項をメモしていって、適宜ノートに書いていくという方法だ。

 こういうマッピングの仕方は、個人でやりやすいようにやるので、どれが最適という 事はなかった。

 それ故にノートは必須のアイテムなので、常に百冊は確保しているが、補充しておこうと思ったときが補給時だった。

「おーい、オッチャン。ノート百冊補給!!」

 私はまだ各部の点検をしていた、なんでも屋のオッチャンに声をかけた。

「あいよ、あとで届ける。それにしても、これだけの量出てくるなら、公衆浴場にでも流した方がいいぜ。家の土台を削っちまう可能性がある。まあ、そうないように工夫はしているが、垂れ流しにしておくのももったいなくてな」

 オッチャンが息を吐いた。

「うーん、それもいいんだけど、せっかく苦労したのに……」

「湯を公衆浴場に売るって考えるんだ。料金設定の相場は分かっているが、この辺りで源泉掛け流しができるなんていったら、そりゃ高額で売れるぜ!!」

 オッチャンが笑った。

「うん、じゃあそうして。配管とか任せるから」

「よし、分かった。手数料で儲けた分の一割はもらうぜ。なに、その分はきっちり上乗せして請求する。それでいいだろ。ただ働きはしない主義だ」

 なんでも屋のオッチャンが小さく笑った。

「それでいいんじゃない。ここまでやってもらったなら」

 私は笑みを浮かべた。

「うん、それでいい。さて、呪文解析をはじめるよ!!」

 スコーンがノート十冊を抱えて、胸を張って笑みを浮かべた。


 スコーンがオッチャン相手に段取りをつけ、あとは任せろということだったので、スコーンは自室にこもった。

 今のところやる事がないので、私は護衛も兼ねてビスコッティとアリスを連れて、家の前にある、手入れされていないビーチというより、砂浜といった方が正しい場所に移動した。

「なんだ、ここに用事か?」

 アリスがそこら中の関節をバキバキならしならが、笑みを浮かべた。

「うん、そろそろ肉弾戦も覚えようかと思って……」

「やめておけ。怪我するだけだぞ」

 アリスが笑いビスコッティが笑って構えを作った。

「まずは私です。痛いほど思い知らせてあげましょう」

「えっ、ビスコッティって狙撃だけじゃないの?」

 思わず呟いた瞬間、私は空を舞って砂浜に叩き付けられた。

「誰が狙撃だけですか。そんな事、いいましたっけ?」

 ビスコッティが再び構えを取った。

「ちょ、ちょっと待って!?」

 その後、私は一方的に投げられ、蹴られ、パンチを食らい、最後に金だらいが頭に落ちて終了になった。

「イテテ……。ビスコッティって、強かったんだ」

「……ビシバシしておきましょうか」

 ビスコッティが私の顔を引っぱたいた。

「いっておくが、私はビスコッティより数段上だって自信があるぞ。だからいっただろ、怪我するだけだって」

 アリスが笑った。

「そうだね、私には向いてないか。それが分かっただけでいいよ」

 私は笑った。

「ん、急にどうしたんだ?」

「はい、今まで一言も格闘戦を教えろなどといった事がなかったのに……」

 アリスとビスコッティが不思議そうに私をみた。

「いや、なんだか分からないけど、グモルグっていうヤバいものが接近してるって聞いて、手数を増やしておこうと思っただけだよ。これは向いてない!!」

 私は笑った。

「なんだ、無理にお前がやる事ないだろ」

 アリスが笑みを浮かべた。

「はい、生兵法は大怪我の元といいます。そういう事は、私たちに任せて下さい」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。

「分かった、そうする。それにしても、ビスコッティちょっとやり過ぎ。そこら中が痛い……」

「あら、手抜きしていますよ」

 ビスコッティが笑った。

「あっそ……。イテテ」

 私は苦笑した。

「さて、戻りましょう。もう工事が終わっているなら、温泉に入りましょう」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。


 家に帰ると、庭に折りたたみ椅子とテーブルを置いて、オッチャンとメリスさんが難しい顔をして額を付き合わせていた。

「あれ、オッチャン。どうしたの?」

「ああ、五階建てがいいらしいんだが、この町の決まりじゃ三階建てまでなんだ。だから、横に広げようって話しなんだが、それ自体は簡単だ。元々、周囲にはなにもないからな。ただ、整地の費用が結構高くつくんだよ。それでまあ、やるかどうかで最終確認を取っているんだよ」

 オッチャンが唸った。

「はい、そうなんです。予算には余裕があるので、特に問題はないのですが、段取りの最終確認をしているだけですよ」

 メリスさんが笑みを浮かべた。

「そっか、ならいいけど……。あっ、庭に露天風呂ができたから、よかったら入ってね。温泉だから」

 私が笑みを浮かべると、メリスさんが笑った。

「それはいいですね。あとでお借りします。さて……」

 メリスさんは再びテーブル上の図面に目を戻し、オッチャンと打ち合わせをはじめた。

 邪魔すると悪いので、私はアリスとビスコッティと一緒に家に入った。


 中に入るとリビングでファイルをぶら下げたユイが、私を探してかウロウロしていた。

「あっ、パステル。いつもの情報屋で仕入れた情報です。カルバルス地方で迷宮が見つかったそうです。詳しいマップ等はこのファイルに入っています」

 私はユイからファイルを受け取り、さっそく綴じられていた資料に目を通した。

「カルバルス地方なら列車で一日半くらいだけど、なにこの『異質な空気で誰も近寄れない』って」

「はい、私にも分かりません。情報屋でも分からないそうです。恐らく、またグモルグ絡みだと思います」

 ユイは小さなため息を吐いた。

 せっかく見つかった迷宮が、グモルグ絡みで近寄れない。

 これ以上のストレスは、そうそうなかった。

「……我慢、我慢」

 私は呪文のように呟きながら、資料にあったマップを地図に落とした。

「……最寄りの特急停車駅カランから徒歩三十分。いい物件なんだけなぁ」

 私は大きくため息を吐いた。

「なにしょんぼりしているのですか?」

 ビスコッティが小さく笑った。

「みて、これ」

 私はファイルをビスコッティに渡した。

「はい……これはまた」

 ビスコッティが苦笑した。

「暇で腐っちゃうよ。まいったな……」

「では、露天風呂にでもいきましょう。気分転換にはなるでしょう」

 ビスコッティの提案に乗って、私たちは露天風呂に移動した。

 シャワールームで汚れを落とし、内風呂で少し温まったあと、私たちは新たに作った扉を開け、柵に囲まれた短い渡り廊下を通って露天風呂に入った。

「うーん、ちょっと温いかな」

 私は柱に『温度調整』と書かれたダイヤル式の温度設定装置をみつけた。

「四十三度か……四十五度にしてみよう」

 私がダイヤルを回すと、プシューと微かに空気が抜けるような音が聞こえ、ビスコッティが笑みを浮かべた。

「ちょっぴり熱めがいいんだよね」

 私は笑みを浮かべた。

「ちょうどいい温度だと思いますよ」

 どこから持ってきたのか、岩を組んで作られた湯船は昼でも心地よく、確かにモヤモヤした気分が晴れてきた。

「まあ、迷宮はそう簡単にないしね。久々に当たりだと思ったら、いくわけにはいかない。そりゃイライラするし、しょんぼりもするよ」

 私は笑った。

『そう嘆くな。確かにあそこには近寄れん。撃ちもらした鱗だからな。なにもしなければ、問題ない。世界中に散ってしまったので、今は封印しておこう。再びガーディアンの力を借りなければならんな」

 頭に闇の精霊の声が降りてきて、私はなにかいおうとしたビスコッティを片手で制した。

 柵を通して、スコーンとリナの声が聞こえた。

「うぉ、まただ!!」

「なんかあったのかな?」

『これで、世界中の百八十六個全ての封印は完了した。これでも、最小限だと思って欲しい。それはともかく、要は遊び場が欲しいのだろう。この国の小島に迷宮を作ってみた。チャレンジしてくれ。マップはすでに家のポストに入れてある。あまり干渉してはならんのだが、不自由の詫びだと思って欲しい』

 闇の精霊の声はそれきり途絶えた。

「また、精霊ですか?」

 ビスコッティが笑った。

「うん、新しい迷宮っていうのは、グモルグの鱗なんだって。なにも触らなければって事で、例によってスコーンとリナが共同で全ての鱗を封印したみたいだね」

 私は笑みを浮かべた。

「それより、迷宮を作ってくれたって。さっそく行こう!!」

 私は立ち上がり、思い切り滑って転んでビスコッティを直撃した。

「……ごめんなさい」

「ダメです。痛かったので、ビシバシ三辛です」

 ビスコッティは静かに自分の体に寄りかかっている私を押し返し、猛烈な速度で往復ビンタの嵐を見舞ってきた。

「……痛い。今日は痛い日だな」

 私は苦笑して、ゆっくり立ちあがった。

「よし、行こう。久々の迷宮だ!!」

 私は笑った。


「ポストっていってたな……。あった」

 風呂から上がった私たちは、ポストに詰められた大きな封筒を取り出した。

 家に入ってリビングでファイルを開くと、場所の大判のマップと『グッドラック』と書かれた紙が入っていた。

「えっと……ポーツ群島の一つか。一番小さなを選んだか。まあ、無人島だし、当然といえば当然だね」

 私はさっそく名もないような、小さな島までの距離をコンパスで測った。

「うーん、船なら二日だね。ヘリなら数時間か……。ヘリの方が早いけど、着陸する場所があるかどうか……」

「はい、ヘリでは着陸不能の可能性があります。ここは、手堅く船でしょうね」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。

「よし、船にしよう問題は、あそこまで運んでいってくれる船があるかどうか……」

 私は唸った。

「いっそ、お金があるうちに船を買ってしまえば?」

 ビスコッティが笑った。

「……あのね、そりゃ今は潤ってるけど、いつまで続くか分からないし、メンテや維持費を考えたら、ダメ元でヘリで行く方が妥当だね。

「そうですね。まあ、みんなに聞いてみましょう。私たちだけで決めていい話ではありません」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。


 無線でみんなをリビングに呼び集めて、経緯を話した上で相談会はじめた。

「うん、状況を考えたら、ヘリが無難だろうな。船でいって桟橋がなかっら、係留しておく場所がない。ヘリならどっか隙間があれば止まれるからな」

 アリスが笑った。

「そうだね。移動に二日間も掛かったら、着く前に疲れちゃう」

 リナが笑った。

「私は船がいいな、ダメ?」

 スコーンが小首を傾げ、笑みを浮かべた。

「ちょっと聞いてみよう。待って……」


 ……質問です。迷宮の周囲に降りられる場所はありますか?

 ……無論だ。手抜かりはない。滑走路とやらもあるし、船着き場もある。ただ、船はやめた方がいいだろう。例の台座現出以来、海が大変荒れやすい。ウンディーネに働きかけてかけてなんとか収めようとしているのだが。なかなか難しいようでな。

 ……分かりました。ありがとうございます。ちなみに、滑走路の距離は?

 ……うむ、島が小さくてな。二千メートルが限界だった。足りないようなら、船しかない。では、またなにかあったらな。


 私は息を吐いた。

「どうせ闇と光の精霊に話しかけていたんだろ。なんだって?」

 アリスが笑った。

「うん、島の情報を聞いていたんだけど、二千メートル滑走路完備で船着き場もあるって、でも海は大荒れになりやすいからお勧めしないっていってたよ」

 私は苦笑した。

「そうか、なら飛行機をレンタルしよう。そっちの方が早いし、目的は迷宮だから」

 アリスがいうが早く、どこと無線連絡をはじめた。

「二千メートルで足りるかな……」

 私は小さく息を吐いた。

「パステル、八人や九人乗りの小型機なら十分です。狭いですが、それは慣れっこでしょう」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。

「まあ、いいや。というわけで、飛行機は決定だね。あとは、いつも通りの用意をしよう」

 私は笑みを浮かべ、空間ポケットからすぐ使うものを服のポケットに入れはじめた。

「あの、私は……」

 メリダが困ったような表情を浮かべた。

「武器は拳銃でよし、あとは携帯コンロとか食事関係ね。食材は特に重要だから、マーケットで見繕ってきて!!」

「はい、分かりました。エメリアさん、手伝って下さいますか?」

「分かりました。お手伝いします」

 掃除が終わったばかりの様子だったエメリアが、嫌な顔一つせずにメリダともに玄関から出ていった。

「おい、飛行機を借りたぞ。少々ボロいが八人乗れるし、私たちらしくていいだろう」

 アリスが笑みを浮かべた。

「それいいね。ちょうどいい」

 私は笑った。


 メリダの買い物が終わり、リビングに集まったところで、私は大きく息を吐いた。

「さて、みんな行くよ。どんなものだか興味あるね」

 みんなが頷き、エメリアに家の留守を頼むと、私たちは空港へ向かう連絡バス乗り場に向かった。

「さて、私たちのために作られた迷宮。どんなものか……」

 ……ダメですよ。そこはこうしないと、みなさんが滅んでしまいます。

 ……そうか。難しいものだな。

「……もっか、建築中みたいだよ。不安だね」

 私は苦笑したのだった。

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