第14話 新たな出会い

 次の村はちょっと変わっていて、『落ちエルフ』と呼ばれるどこかの部族から追放されたり、逃げ出したエルフが集まるところだった。

 街道沿いにあるので排他的ではないが、ここを通る冒険者や旅人は足早に通り過ぎていくのが常だった。

 しかし、そんな村にも特攻野郎するのが商隊というもの。

 私たちは村に入る短い側道に入り、堂々とトラックを村の広場に止め、サランさんたちが露店のような店を開いた。

 最初は遠巻きに何事だという感じで隠れていた村人たちだったが、一人の若者が近づいてきて、声をかけてきた。

「失礼、みたところ商人のようだが、ここがどんな村か知っているのか?」

「左様で。いつでもどこでも商売するのが、私の心情です。なにかご入り用はありますか?」

 サランさんが笑顔で頷いた。

「知っているなら話は早い。ここでは、あまりいい商売ができないと思うが……。ちょっと待て。その苗木は!?」

 エルフの若者が声を上げた。

「はい、トネリコの木です。成長に時間はかかりますが、先行投資ということで悪くないと思いますよ」

 サランさんの眼鏡がキラッと光った。

 トネリコの木は様々な魔法道具を作る際に土台として使用する事が多く、一本あればかなり便利ではあるが、滅多にみかけないので高価なものだった。

「俺も初めてみた。いくらだ?」

「そうですね……」

 サランさんが電卓を叩いた。

「こんな感じで。原価割れスレスレですがお近づきの印にいかがですか?」

「まて、長老に相談してみる。それまで、好きなように商売をしてくれ。おい、みんな大丈夫だぞ!!」

 若者の声に隠れてい村人たちが出てきて、様々なものを購入していった。

「あの、ちょっとお肌が……」

 少し年配という感じの女性がやってきて、サランさんに声をかけた。

「はい、分かりました。薬といえばビスコッティさんです。お願いします」

 サランさんがビスコッティをみた。

「はい、分かりました。ちょっと肌の様子を……」

 ビスコッティが女性の肌をチェックしはじめた。

「なるほど、分かりました。スコーン、これも時間との勝負です。やりますよ!!」

「……はい」

 こうして、ビスコッティはスコーンを助手のようにこき使い、軟膏のようなものを作って容器にいれて女性に渡した。

「ついでに、シミやシワも取り除く効果を付与しました。売値が分からないので、サランさんに聞いて下さい」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。

「分かりました、ありがとうございます」

 女性はサランさんにお金を払い、嬉しそうに帰っていった。

「この笑顔がいいんです。商人をやっていてよかったと思う瞬間です」

 サランさんがニコニコしながら呟いた。

 しばらくすると、少し歳を取った感じの男性と先ほどの若者がやってきた。

「うむ、確かにトネリコの木だな。これをどこで?」

 歳を取った感じの男性が笑みを浮かべた。

「それを明かさない事を約束して、特別に分けて頂いたのです。ここでなら、きっと役に立つだろうと思いまして」

 サランさんが笑みを浮かべた。

「そうか。分かった、買い取ろう。しかし、我々は人間の通貨をあまり持っていない。せいぜい、近くの村や町に特産品を売りにいくくらいでな。提示された金額に足りるかどうか……」

 先ほどの若者が、財布を取り出して札を数えはじめ、ガクッと肩を落とした。

「半分くらいしかありません。村の財産を全てかき集めても足りないでしょう」

「ああ、直接お金でなくても結構ですよ。エルフの特産品は、どこでも高価で売れるので、物々交換でも構いません」

 サランさんが笑った。

「そうか、すまんな。特産品といえば……おい、あれを持ってこい」

 長老の声に、若者が頷いて走っていった。

「この村には腕のいい武器職人がいてな、武器や防具ならよそには負けぬという自信がある。その中でも、特に出来のいい三本をワシが預かっているのだ」

 年配の男性が笑うと、若者が三振りの剣を持ってきた。

「け、剣!?」

 剣好きのララが反応した。

「ほう……これは逸品ですね。分かりました、これでお譲りします」

 サランさんが笑みを浮かべ、トネリコの苗木を渡した。

「よし、いい買い物ができた。またなにかあったら立ち寄って欲しい。おっと、その首飾りをくれ。これなら、現金で支払える」

 年配の男性が、小さく笑った。


 興味があるのか、女性も男性もアクセサリを中心に買い物に華を咲かせ、私は木陰でタピオカミルクティを飲んでいた。

 無論、サランさんから買ったものだが、ジワジワと暑いこの時期は冷たいドリンクと木陰はありがたかった。

 しばらく休憩していると、エルフの女の子が近寄ってきた。

「あの、お願いがあるのです。聞いて頂けますか?」

「うん、いいよ」

 私は笑みを浮かべた。

「はい、私はハーフエルフのエリダと申します。不躾ですが、仲間に加えて頂けないかと思いまして。戦闘行為は出来ませんが、料理には自信があります」

 エリダと名乗った女の子は、ペコリと頭を下げた。

「料理か……。今は交代制でやってるけど、疲れた体でやるにはもう……。今もっとも必要な人材だね。でも、勝手にこの村から出ちゃって大丈夫なの?」

「はい、長老には話を通してあります。もっと広い世界がみたいのです。よろしくお願いします」

 もう一度頭を下げたエリダに、私は笑みを向けた。

「それじゃ、よろしく。冒険者ライセンスは持ってる?」

「いえ、ないです。どうしたらいいのか分からなかったので……」

 エリダが困ったような顔をした。

「あのね、私たちは冒険者ライセンスっていう免許証みたいなものを持っている、正規の冒険者なの。役所ですぐに発行してくれるから、まずはそこにいこうか。エルフの村とはいっても、ここは人間社会の一部になっているはずだから、役場くらいはあるはずなんだけど……」

「はい、あります。小さいですが村役場でよければご案内します」

 メリダが笑みを浮かべた。

「よし、役場でもやってるはずだから、さっそくいこう。書類書きが面倒だけど、提出さえしちゃえば、ライセンスをもらえるはずだから」

 私は笑みを浮かべた。

 メリダに案内され、村外れに立っていた建物には、共通語とエルフ語で『役場』とだけ記してあった。

 メリダを先頭に役場に入ると、窓が全開にされて多数の扇風機が回っていて、暑そうにうちわでパタパタしていた役人が三人こちらをみた。

「いやー、暑いね。今日はなんの用だい?」

 一番カウンターのそばにいたオッチャンが声をかけてきた。

「あの、冒険者ライセンスの手続きにきたのですが……」

 メリダに代わって私がオッチャンに告げると、さっそく用紙をカウンターに置いてくれた。

「そっちの記入台で必要事項を書いてくれ。暑い暑い……」

 私はカウンターの用紙を手に取って、記入台に置いた。

「項目が多くて大変だけど、全部書いたら私にみせてね」

「はい、えっと……」

 エリダが用紙に向かって書きはじめると、私はその様子を見守った。

「あの、『冒険者になりたい理由』って……」

「そこはなんでもいいよ。私は、世界をみたいからだけだったし」

 私は笑った。

「ああ、いい忘れていたけど、私たちはダンジョンハンターっていう括りの冒険者なの。つまり、迷宮探索を目的にしているから、『臭い』『汚い』『気持ち悪い』は日常なんだけど、それでも大丈夫?」

「はい、問題ありません。探検大好きなので」

 エルダが書きながら小さく笑った。

「ならば問題ないね。あとはゆっくり書いて」

 私は笑みを浮かべた。

 しばらく待つと、メリダが用紙を書いたとみせてくれたので、私は各項目をチェックした。

「うん、問題ないよ。冒険者ライセンスにはあまり意味はないのに職種が書かれるんだけど、これなら調理人(コック)だと思うよ」

 私は笑みを浮かべ、メリダが用紙をカウンターに乗せた。

「はい、お疲れさま。最初はブロンズだけど、大丈夫かい?」

 オッチャンが心配そうに問いかけてきた。

「私たちは七人パーティで、全員プラチナです。全力でサポートするので、問題ないですよ」

 私は笑みを浮かべた。

「そうか、なら安心だね。じゃあ、写真撮るからこっちに……」

 オッチャンがカウンターの向こうにある撮影コーナーにメリダを連れていき、一瞬フラッシュの光が散った。

 メリダが写真撮影から戻ってくると、あとは樹脂板に必要事項が印刷された冒険者ライセンスが出来上がれば終了だ。

 十五分ほど待って、オッチャンがカウンターにメリダの冒険者ライセンスを置くと、それを受け取って礼をいってから役場の外にでた。

「これが冒険者ライセンスだよ。冒険記録を提出していって、認められれば段階的にクラスが上がっていくから」

「はい、分かりました。ありがとうございます」

 メリダが真新しい冒険者ライセンスをみながら、嬉しそうに頭を下げた。

 私とメリダはまだ商売をやっているサランさんの元で、それとなく警備をしていたみんなを呼び集めた。

「ん、なんか拾ったのか?」

 アリスが不思議そうに聞いてきた。

「今度、私たちのお仲間になった、ハーフエルフのメリダだよ。みんなに挨拶!!」

 私はメリダの肩を叩いて笑った。

「あ、あの、お役に立てないかもしれませんが、よろしくお願いします」

 オドオドした様子のメリダのお尻を、ビスコッティが叩いた。

「ダメです。もっと自信を持って下さい。ビシバシしますよ!!」

 ビスコッティが笑い、全員が簡単な自己紹介を終えた。

「そうか、戦闘はできないのか。戦えとはいわないが、最低限の護身術は憶えておくべきだぞ。教えるからな」

 アリスが笑みを浮かべた。

「は、はい、よろしくお願いします」

 メリダが小さく息を吐いた。

「それじゃ、装備を調えようか。サランさんに見繕ってもらおう」

 私は商売中のサランさんに近づき、事情を説明した。

「そうですか。では、さっそく装備を揃えましょう。下手に武器を持たせては危ないので、まずは防具を……」

 サランさんがトラックからどんどん荷を下ろし、メリダの装備を調えていった。

 結果として、防御重視で戦闘服に半身を覆う鎧を着て、たくさんの携帯用コンロを空間ポケットに入れ、ミスリル製の頑丈な包丁セットまで買って、もう一端の冒険者という風情を漂わせる姿になった。

 あとは気持ち程度に、小さな拳銃をメリダの鞄にこっそり忍ばせておいた。

「あ、あの、お代は……」

「うちのパーティでは、装備品は共有財産からだす決まりなんだ。だから、気にしないでいいよ」

 私は笑みを浮かべた。

「分かりました。ありがとうございます」

 メリダが笑みを浮かべた。

「ん、そういえばこれは大丈夫じゃないか?」

 アリスが空間ポケットから、対戦車ミサイルの筒型ランチャーを取りだしてみせた。

「反動もあまりないし、目標をロックオンして撃つだけだからな」

「これもありますよ」

 今度はビスコッティが、携行用地対空ミサイルを空間ポケットから取りだした。

「あ、あの、そういうのはちょっと……」

 メリダの顔色が悪くなった。

「こら、無茶な事はいわない。メリダは戦わなくていいからね。まあ、なんかぶっ壊したくなったら、私にいってくれればいいよ」

 私は笑った。


 この村での商売も成功裏に終わり、サランさんをはじめとする商隊のみなさんが撤収作業をはじめると、私たちは自然と警戒態勢に入った。

 不慣れなメリダが怖がったので、先に二号車に乗ってもらい、出発準備が整うのを待った。

 一時間ほどで準備が整い、私たちは村を発った。

 街道に入るとちょうど長距離昼行便のバスの後ろにつき、いいペースメーカーが出来たと、ハンドルを握るリナが笑った。

「さてと、次の村までは約三時間か。これが最後の村で、あとはカランザシティだけ」

 まだ昼過ぎくらいなので、なにもなければまだ明るいうちに着けるだろう。

 途中で沿道を警備している街道警備隊の様子がみえ、リナが軽くクラクションを鳴らすと、向こうも手を挙げて答えてくれた。

「こういう交流は大事だよね!!」

 リナが笑った。

 隊列はバスの後ろについたまま走り、今までとは心持ちペースが上がったが、背後のトラックは問題なさそうだった。

 しばらくそのまま進んでいくと、待ち伏せしていたようで、二十人ほどの盗賊たちがバスに向かって車を出そうとしたが、リナの攻撃魔法が炸裂してあっさり吹っ飛んで全滅した。

 バスがハザードランプを何回かつけて挨拶をしてきたので、リナがパッシングでそれに応えた。

「昼に出てくるなんて、よほどの自信家だね。ショボかったけど」

 私は笑った。

 その後はなにもなく、私たちは次の村に到着した。


 この村は比較的人口が多く宿屋や食堂もあり、立派な公衆浴場もあった。

「さすがに、カランザシティが近いだけはあるね。といっても、車で数時間かかるけど」

 私は車から降りて、大きく背伸びをした。

 サランさんが店の準備をはじめると、いつも通りシノが櫓に上って監視をはじめた。

『無線チェック』

「感度良好。なにかみえる?」

『今のところは異常なし。引き続き監視を続ける』

 シノの声を聞いて安心し、私は商売をはじめたサランさんたちをみた。

 売れ線の食料や水を買い込むのはもちろん、特に女性陣は装飾品に興味があるようで、珍しい宝石の類いを物色しては買っていた。

「私も宝石買おうかな……」

 ちらっと呟くと、ビスコッティに頭を叩かれた。

「ダメです。絶対似合いません!!」

「……あのね」

 私は苦笑した。

「あの、食事は?」

 メリダが遠慮がちに聞いてきた。

 そういえば、まだお昼を食べていなかった。

「そうだね。あっちの食堂にいってみようか」

 看板にデカデカと『冒険者御用達』と書かれた、なんとなくボロい店構えの食堂を指さした。

「あの、食材があれば私が作ります。そのためにいますので」

 メリダが笑みを浮かべた。

「そっか、その手があったね。食材は……サランさんのところで買おう。手持ちの食料は乾燥肉くらいしかないから」

 私は笑った。

「では、買ってきます」

「よろしく!!」

 私はメリダにいくらかお金を渡し、全てを任せる事にした。

 空間ポケットから屋外調理器具を取り出してセッティングしていると、メリダが肉やら野菜やら……大量に仕入れて持ってきた。

「ま、また凄い量だね……」

「はい、八人分なので気合いが入りました」

 メリダが笑い、新品のミスリル包丁で材料を切っては、私たちが普段使っている鍋やフライパンなどを使って、手際よく料理を作りはじめた。

「味は濃いめがいいですか。それとも、薄味で?」

「そうだね。みんな大体濃いめが好きだから、少しだけ濃くして」

 私は笑った。

「分かりました。では、まずスープを……」

 寸胴に材料を入れ、メリダが本格的に調理をはじめた。

 そのうちいい香りが漂ってきて、肉が焼ける匂いもしてきた。

 これも売り物と勘違いしたようで、いつの間にか行列ができてしまったが、メリダはこれも計算にいれていたらしい。

「まずは、私たちからです」

 ステーキとパン、そして美味しそうなスープが配られ、みんなは思い思いの場所で食事をはじめた。

 シンプルなメニューではあったがどれも美味しく、さすが得意というだけの事はあった。

「お待たせしました。食事がまだの方は、ぜひ立ち寄って下さい!!」

 急いで自分の食事を終え、メリダが声を張り上げた。

「……シノが可哀想だな」

 私は無線でシノを呼ぶ事にした。

「シノ、ご飯があるからきて!!」

『もう済ませた。問題ない』

 本気の警戒態勢に入ると、シノは徹底してストイックになる。

 こうなると、いつもスティック状の栄養食で食事を済ませる癖があり、無理やりにでも引っぺがす必要があった。

「交代だよ。アリスとビスコッティにいってもらうから」

 私は苦笑してベンチに並んで仲良く座り、食事を済ませた様子の二人にハンドシグナルで指示を出した。

 二人が櫓に向かっていき、狙撃銃を構える様子が見え、シノが櫓から下りてきた。

「はい、ちょっと冷めちゃったけど……」

「それはいいよ。ありがとう」

 シノが笑みを浮かべ、スープを一口飲んで笑みを浮かべた。

「……いい腕してやがる」

 シノがポソッと呟いた言葉を、私は聞き流した。

「はい、まだまだ残っていますよ。お腹が空いた方はぜひ!!」

 メリダの声に村人だけではなく、たまたま通りかかった冒険者や旅人も列に加わり、大盛況だった。

「なるほど、ついでに小遣い稼ぎか。考えたね」

 私は笑みを浮かべた。

 やがてスープも肉もなくなり、行列に取り残された人たちに肉まんを配り、メリダ食堂の営業時間は終わった。

 空は早くも夕闇が迫り、今からでもカランザシティにいけるが、足が遅いトラックでに夜道は危険だというサランさんの判断で、私たちはここで一泊する事にした。

 幸いにも宿には空室の余裕があり、私たちは久々にベッドで眠れる事になった。

 二人部屋をそれぞれに分かれて使う事にして、私とビスコッティというお馴染みのコンビになった。

「明日はいよいよカランザシティですね。比較的順調に進んだと思います」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。

「そうだね。色々と事件はあったけど、この程度なら問題ないか」

 私は笑みを浮かべた。

「さて、せっかくのベッドです。今日は早めに休みましょう」

 ビスコッティが、魔力灯のつまみを回して光量を小さくした。

「それじゃ、おやすみ!!」

 私は布団に潜り、財布をそっと開いた。

 そこにはそれなりのお金と、しつこく懲りずに『国家指定冒険者ライセンス』があった。

 これは、冒険者になってしばらく経って、クラスがゴールドになった時に申請して取ったもので、ビスコッティはその存在を知らないはずだった。

「……私も懲りないな」

 小さく笑みを浮かべた時、いきなり掛け布団が剥がされ、にこやかなビスコッティの姿があった。

「私が知らないとでも?」

「……なんで知ってるの?」

 その問いに答えはなく、ビスコッティは黙って指定冒険者ライセンスを私の財布から抜き取り、そのまま掛け布団をかけていった。

「……どこで知った?」

 私は微妙に顔が青ざめるのが分かった。

「……ちゃんと指定冒険者リストがあるんですよ。みんな偽名を使うのに、あなただけ本名。一回目は見逃しましたが、私も裏仕事ができるようになったので、二度目は見逃しません。甘いですよ」

 ビスコッティの含み笑いが聞こえてきた。

「……ズルい」

 私は苦笑して、そんなリストあったなと思い出した。


 翌朝早く、早々に宿を引き払った私たちは、目的地であるカランザシティに向かって進みはじめた。

 深夜早朝は盗賊や魔物がでる可能性が高いので緊張しながら進んでいたのだが、幸いにも無事にカランザシティの立派な門がみえる地点にやってきた。

 程よく開門時間が過ぎていて、よくある開門渋滞もなく素直に町の中に入ると、いくつかある広場の一つを占領して、サランさんにお別れの挨拶をした。

「ここまでの契約ですね。ありがとうございました。ここから先は、また別の護衛を雇います。当て所なく旅をしているので、どうしてもこうなってしまいます」

 サランさんが笑みを浮かべた。

「大変ですね。まあ、ここは大きな街ですし、粒よりの冒険者もいると思います。旅の無事をお祈りします」

 私はペコリと頭を下げた。

「ありがとうございます。では、また機会があったらお会いしましょう」

 サランさんが笑みを浮かべた。

 私たちはそれぞれの車に乗り、ゆっくりきた道を引き返して、ホームであるアレクの町を目指して街道を走りはじめた。

「迷宮探査もいいけど、たまにはこういう仕事もいいね」

 私は笑ったのだった。

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