第200話 世界を救う光
空の向こうからまだ見えぬそれは、絶望と恐怖を振り撒く音を鳴り響かせた。
「さて……
サバト様の声に応えるかのように、俺の召喚獣、ルーが現れる。
「まさかこういう事になるとはね……もう私達にはどうしようもないわね」
「随分と諦めが早いのぉ?」
「あれだけは起きないで欲しいと願っていたからね」
空を見つめる二柱の言葉には不思議と重みがあった。
「サバト様。お久しぶりです」
「娘。帰って来たんだな」
「はい。空の向こうからこちらに降りてくるのは何ですか?」
「…………光の神と闇の神がまた一つだった頃。世界を
「そう……ですか…………」
ここまでは何とかなると思っていた。
現にアマテラスは倒して、俺達の勝ちとなったはずだ。
なのに世界の危機はより酷いモノに変わってしまった。
「ソラ……」
「フィリアらしくないな。諦めたのか?」
「えっ? 諦め……たくはないけど、どうしようもと思って」
諦めた顔をするフィリアの頭を優しく手を乗せて撫でて上げる。
幸せそうに笑みを浮かべたフィリアが美しく光り輝いた。
フィリアが平和に暮らせるなら、俺は絶対にこの世界を守りたい。
「サバト様。アマテラス様」
二柱の神々が俺を見つめた。
「神でも止められると仰いましたが、その理由はどうしてですか?」
「あれはわし達が触れないように作ってあるのだ。アルマゲドンを神が止められないようにな。だから
「つまり、俺達で止めればいいのですね?」
「ん? くーはははは! 面白い事をいう。あれは、もしわし達が触れられるようにしたとて、止められる程の代物ではない」
「でも俺達なら触れる事はできるんですね?」
「ああ。その通りだ。止めるつもりか?」
「もちろんです。俺はフィリアを世界を守りたい。そう決めたんです。だから絶対に止めます」
「…………くっくっ。やれるものならやってみるがいい」
サバト様がその場に座り込んで、空を見つめた。
ルーの姿になったアマテラス様もその隣に降りる。
そして、俺は母さんの元に向かった。
「母さん。一つ聞きたいんですけど、精霊眼を持つ者は死んだら必ず精霊になるんですよね?」
「ええ。そうよ」
「では、爺さんはどうして精霊になれたんですか?」
「それは私にも分からないけれど、精霊になる親族がいる人は、強い意志があれば精霊になるとされているわ」
「なるほど……分かりました」
「どうするつもりなの?」
「このままでは難しいみたいなので――――――俺は精霊になろうと思います」
「ソラ!?」
母さんとの会話にフィリアが血相を変えてやってきた。
「フィリア。俺はフィリアを世界を守りたい」
「な、なら、私もっ! 私も行く!」
そう話すフィリアに俺は首を横に振った。
「フィリア。俺は必ず帰ってくる。だから信じて待っていて欲しい」
「で、でも!」
大きな粒の涙を流すフィリアを優しく抱きしめてあげる。
そして、俺はある事を彼女に告げた。
スサノオから聞いている話で、それを聞いたフィリアは諦めたように承諾してくれた。
「フィリア。頼みがある」
「うん」
「フィリアの手で俺を――――殺してくれないか」
「…………必ず帰ってくるよね?」
「もちろんだ。俺はフィリアの旦那だから、俺の居場所は君の隣だけだから」
「分かった」
空の雲が割れ、遂に姿を見せる『アルマゲドン』は、禍々しいオーラを放ちながら地上を覗き込む。
真っ黒い巨大で丸い建造物は、ただ地上を消し去るためだけに降りてくる。
「フィリア。行ってくる」
「……うん。行ってらっしゃい」
フィリアは最後まで笑顔だった。
涙を流してはいたけど、世界を守りたいという俺の意見を尊重してくれて、その手で俺の最期にとどめを刺した。
◆
暗い。
何も感じない。
ここはどこ?
――――「ソラ」
君は……?
――――「私はフィリア」
フィリア。良い名前だね。
――――「でも私に両親はいないよ」
俺も両親とは殆ど会わないんだ。
――――「そっか……じゃあ、私達って似たもの同士なんだね」
そうだな。でもフィリアの方がずっと凄い。
――――「え? どうして?」
それは――――――
◆
全身が力に溢れる。
目を開けると世界が淡い緑色に輝いていた。
しかし、空の上にはどす黒い巨大な物が落ちてこようとしている。
俺は全力で空の上を飛ぶ。
――――「ぷう!」
心を通して聞こえる声。
「おいで! ラビ!」
俺の前に美しい緑色のオーラが溢れ、中から真っ白の肌を持つ可愛らしい空飛ぶ兎が現れた。
「ぷうぷ!」
「そうか。待っていてくれたんだね。ありがとう」
「ぷ!」
「あはは、アマテラスとの戦いで活躍できなくて悲しかったんだ。でもこれからもっと大きな仕事があるよ」
「ぷうう!」
「そうだね。ラビがいてくれたら百人力だよ」
「ぷうぷっ~!」
「ん? 進化の許可? ラビのやりたいようにしていいよ?」
そう答えると、ラビの身体から凄まじい光が周囲に放たれていく。
額の宝石が眩い光を放ち、やがて虹色に輝く宝石に変わった。
それと共にラビから絶大な力が感じられる。
「ぷうううう~!」
「ラビ!?」
俺が精霊
俺を残して空高く飛んでいき、降りて来る巨大なアルマゲドンをも飲み込める程の暴風を生み出す。
そして――――――アルマゲドンを
「あはは、せっかく精霊神となったのに、美味しいところは全部ラビに持っていかれたな」
世界は一匹の空飛ぶ兎によって救われる事となった。
「ぷい~!」
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