第197話 最後の戦いの作戦
空の更に上。雲が海のように流れる世界。そこには禍々しい巨大な扉から無数の触手が美しい女性一人に向かって溢れ出していた。
女性は世界を照らす光で触手を次々消していく。
そして、次第に扉の気配は弱くなっていき、触手も本数を減らしていた。
その頃。
上空から猛スピードで地上を目指すのは、闇の神サバトと精霊王イザベラであった。
「サバト様。予定通りに」
「ああ」
「ありがとうございます」
一瞬止まって深々と挨拶をするイザベラを置いて、サバトは変わらず地上を目指す。
サバトを見送ったイザベラは東に向かって飛び上がった。
◇
中央大陸でアマテラス様が復活を遂げて僕の召喚獣であるルーの中に入った。
一応召喚獣のままらしくて、暫く俺の中で休むそうで、ルーは俺の中に戻っている。
戦争終結早々に、俺達は急遽西に向かって空を飛んでいた。
ラビに頑張ってもらい、いつもの荷馬車による移動だ。
「ソラ様。これから本当の戦いが始まるのですね?」
不安そうに聞くのは、中央大陸で出会った仲間、サオリさんである。
彼女はツクヨミ様を顕現させられる能力を持っているので、このまま光の神との戦いに参戦してもらう事になった。
本来なら平和になった中央大陸に残ってもらいたかったんだけど、本人のたっての希望で一緒に来ている。
そして、その隣にはルリくんとルナちゃんが、俺の隣にフィリアがいる。
「むぅ……二人とも? 手は繋がなくても…………」
ルナちゃんが膨れて不満を口にする。
「こら、ルナ。ソラ兄さん達はやっと会えたんだ。手を繋ぐくらいいいだろう」
「むぅ…………」
何故か肩を落とすルナちゃんに悪い気がする。
フィリアも理解してくれたようで手を離してくれた。
「それはそうと、これからの予定を話すな。ミリシャさんの作戦で、このままサバト様と光の神の戦いを続ければ、サバト様が負けるかも知れないらしくて、それなりの作戦を考える事になったよ。そこで東に中央大陸、西に封印の大陸があるように、丁度その真ん中から真っすぐ北に向かった場所に、神々の島という場所があるそうで、そこで戦う事になる」
神々の島は光と闇の神が生まれたとされる島で、この世界で最も神聖な場所とされている。
「その島には現在サバト様が向かっているはず。それとミリシャさん達が一足先に向かっているはずだ。そこでやってきた光の神をサバト様が全力で光の神を拘束し続ける。それを俺達が撃破する流れになっている。ただ、このままでは間に合うか怪しいので母さんが迎えに来てくれる手筈になっているよ」
精霊王である母さんなら、ラビと共に全力で俺達を飛ばしてくれて、少しでも早く光の神の元に着く算段だ。
「ソラ? もしもの時は――――私が
「…………」
「ふふっ。大丈夫。もういなくなったりしないから」
「…………分かった。でももしもの時だけだよ?」
「うん!」
フィリアの特別な力。
その力を解放する事に俺はどこか反対意見を感じてしまう。
だって…………その力は…………。
その時。
空の向こうに美しい翡翠色の光が見え始めた。
「ソラお兄ちゃん! イザベラ様が来てくれたよ~!」
ルナちゃんが指差すと、遠目からも分かる母さんの姿が見えた。
それから数分後、空の上で母さんと合流する。
「みんな。無事で何よりだわ。そして、フィリアちゃん。おかえりなさい」
「! た、ただいまです!」
「ふふっ。そんなに緊張しなくても、私は怖い姑さんにはなりたくないわ」
母さんの笑顔にフィリアも笑顔になり、二人が向き合う姿がとても嬉しい。
隣を一緒に飛んでいる父さんも満足そうにこちらを見て頷いていた。
「では、みんな! これから全速力で飛ぶわよ~!」
母さんの号令のあと、空を飛び父さんの隣に移動して魔法を展開した。
なんやかんや二人が一緒にいる姿が一番絵になるというか、父さんと母さんが一緒にいてとても幸せそうに見える。
だから、この世界を必ず守りたい。
父さんもずっと後悔していたからこそ、これからも母さんとの時間を。
俺もフィリアや仲間達との時間を過ごしたい。
俺達を包む風魔法によって、速度を上げた俺達は光の神と闇の神が待っている神々の島へ向かった。
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