第196話 アマテラス
戦場にフィリアが加戦して一瞬で決着がついた。
そこに丁度お父さん、ルリくん、ルナちゃん、カシアさんもやってきて、それぞれ不思議な宝玉を持ってきてくれた。
「みんな。無事でよかった」
「フィリア姉が無事でよかったね~ソラお兄ちゃん~」
ルナちゃんが真っすぐフィリアに飛んでいき、俺を見ながら笑顔で手を振って応える。
「ソラ。どうやら無事に終わったようだな」
「これもみんなが手伝ってくれたおかげです」
「いや、このメンバーは全員がソラのおかげでここにいるメンバーだ。全てソラの力さ。これは俺が相手した者が持っていた宝玉だ。青龍の宝玉というらしい」
お父さんから、美しい青色で中に水が流れている不思議な宝玉だけじゃなく、内部からは大きな力の波を感じられる。
スサノオが話していた光の神アマテラスの意識が入っているのは間違いないようだ。
そもそも彼が嘘をついているとは思えない。
俺が青龍の宝玉を眺めていると、そこにカシアさんが玄武の宝玉を、ルナちゃんが白虎の宝玉を、ルリくんが朱雀の宝玉を渡してくれた。
そして、最後にフィリアが虹色に輝く宝玉を渡してくれた。
「この五つの宝玉を壊す事で、封印されたアマテラスの意識を取り戻せるらしい。今でも遥か空の向こうではサバト様とお母さんがアマテラスと戦っているはず。最後の戦いに決着を付けよう」
みんなが俺を見つめて大きく頷いてくれる。一人一人の想いが伝わってくる。
最後にフィリアが双剣を抜いた。
お互いに顔を合わせて合図を送り合って、五つの宝玉をフィリアに向けて優しく投げ込んだ。
五つの宝玉が美しい放物線を描いてフィリアに向かって飛んでいく。
そして、フィリアの双剣によって一瞬で粉々となった。
粉砕された宝玉の中から目に見える程の色とりどりの光が上空に飛んでいき、一か所に集まり出した。
光は少しずつ集まり大きな霧状の何者かに変わっていく。
でも霧状に広がって何かの形を持つが、動きがみられない。
「どうしたんだろう?」
不思議がっている俺に、お父さんが思いついたかのように話した。
「もしや…………意識だから実態がなく、意識だけ生まれてしまって、何もできないのではないか?」
言われてみれた確かにそうかも知れない。
その時、俺の召喚獣のルーとラビが出て来る。
普段から二人には自由に出入りの許可を出しているので、好きな時に出入りしているのだ。
ラビとルーが霧に向かって何かを話し合い始める。
「ラビ? ルー? どうしたの?」
「ぷう! ぷううぷう!」
えっと…………霧に何かあると言いたいと思うんだけど、いまいち分からない。
身振りから、霧は凄く大きい何かだよと言っている気がする。
その時、ルーが霧に向かって飛んで行った。
「ルー!?」「ぷう!?」
ラビも驚くくらいルーの行動が急だった。
霧の中央に入ったルーに広がっていた霧が段々とルーに集まり出した。
まさかの状況に俺だけでなく、この場にいる全員が驚く。
特に、少し離れて俺達を見守っていた神田家の面々とサオリさんも大きく驚いていた。
少なくともアマテラスの意志なのは間違いないはずなのに、それがどうしてルーに集まるのだろう?
霧がどんどんルーに集まり、霧が全て消え去った。
そして、ルーの全身から世界を慈しむような眩い光があふれ出した。
何が起きているかは知らないけど、光の神がいるなら、まさにそれだと思える程に心が温まるような光だ。
その時。
【みなさん。私は
不思議な声が頭の中に直接響いて来た。まるで俺達が使っている念話にも似ている。
「初めまして。俺達は『銀朱の蒼穹』と申します。俺はマスターをやっていますソラです」
【はい。存じております。宝玉の中でみなさんの戦いを見ておりました。今の光の神は飛鳥という娘に依り憑いております。このままでは…………憎悪に染まった光の神によって世界が滅んでしまいます」
サバト様もそう仰っていた。今の光の神は憎悪に身を任せていると。
【みなさん。どうか力を貸してください。光の神を止めないといけません」
「もちろんです。俺達も両方の大陸に平和が訪れて欲しいと願っていますから。今もサバト様が上空で戦っているはずです」
【はい。今は少し離れているようですが、いずれ光の神が追いつくでしょう】
という事は、例の作戦が決行されたという事。
つまり――――最も危機状態である事を示していた。
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