第193話 転職士と弟神との決着

 俺とツクヨミ様の連携が始まる。


 ツクヨミ様はどちらかというと援護タイプで、多彩な真神術を繰り出してスサノオを攻撃し始める。


 俺も上空の下部からスサノオを押し詰める。


 神術は無効化できないようで、そのまま俺の剣戟にも神術を纏われた攻撃をスサノオに叩き込む。


 スサノオの太刀が非常に堅く感じたのは、間違いなく神術を灯らせていたのだろう。それを無効化できるだけでこちらの疲労がぐっと減る。


 さらにルーの最終奥義のおかげで、身体も軽く戦いやすい。


 先程とはまるで違う戦いを繰り広げる。


 スサノオの猛攻が一気に止んで、こちらの攻撃を一方的に防御し続ける。


 数合の剣を交えると、ツクヨミ様による後方からの真神術によって被弾し始める。


「くっ、小癪な!」


 ずっと無表情のまま戦い続けていたスサノオの表情が崩れ始めた。


 前より攻撃が雑にはなっているが、的確に俺とツクヨミ様を巻き込んで攻撃を繰り広げる。


 スサノオの剣術には大振りの型があって、円を描くように剣戟が流れる。


 フィリアの身体の美しさも相まって、空中で踊っているかのように、光り輝いていた。


「ソラ! 見取られるでない!」


「す、すいません!」


 同じ軸に前後に飛んでいたのを少しずらして左右にさらに別れる。


 少しいびつな立ち位置だが、スサノオの円形剣術をこれで効かなくさせる。


「ちっ! こんなところで終わる訳には……っ!」


 スサノオがそのまま戦線を離脱する気配を見せる。


 飛んでいく方向が何となく感じられた。


 だから、そこに向けて勇者のスキル『スーパーノヴァ』を発動させる。


 消滅属性を持つスーパーノヴァは、俺達が持つ多くのスキルの中でも最強格の力だ。


 もしかしたらフィリアを巻き込んでしまって、存在ごと消し去るかも知れないと不安すら抱いてしまうが、このタイミングを逃すと、スサノオを追い詰められるのがいつになるか分からない。


 それにツクヨミ様がこの世界に顕現できる時間は限られている。


 不安を覚えながら、俺はスーパーノヴァを放った。


 たった一瞬の出来事。スサノオもその行動を読めると思わなかったようで、俺が発動させたスーパーノヴァに自ら入っていった。




 ◇




「…………ここは?」


「エド城の最上階だ」


 最上階の床に横たわっているのは、ボロボロになったフィリアの身体を持つスサノオである。


「…………あの最後の脱力・・はお前の仕業か」


「ああ。フィリアが持つレベルを1に戻して貰った。一瞬の脱力でお前に最後の攻撃を叩き込めた」


「ふっ……そういえば、そういう力を持っていたのだな」


「…………約束は守ってもらうぞ」


「いいだろう…………」


 そして、スサノオはフィリアの過去について語り始めた。






 その昔、光の神のアマテラスは封印の大陸を攻略するために悩み続けていた。


 一度闇の神に負けたおかげで、違う人格となったアマテラスは、二度目の戦争を仕掛けたいと思っていたが、封印の大陸を攻められる手立てがなかった。


 その最も大きな理由は、封印の大陸を纏っているバリアを外から崩すことができないからである。


 しかし、一つだけそれを崩す手立てがあった。


 人族の身であれば、バリアを通り抜ける事ができたのだ。


 神の力を持つ人族や、神では通れないのだが、純粋な人族であれば中に通ることができた。


 そこでアマテラスが考えた作戦は、自身の弟であるスサノオを人族に転生させて、人族のまま封印の大陸の中に忍び込ませて、中で覚醒をさせる事である。


 スサノオはとある条件を出してアマテラスと契約を交わして、アマテラスの作戦を実行する事にした。


 そうやってスサノオは長い年月を掛けてアマテラスの力により神の力と記憶を封印させられて人族に転生させられた。




 スサノオが転生したのは、神田家の末の息子に生まれながら神術が使えないとして、剣術に明け暮れたからであった。


 すでに男としての人格が育ち、スサノオの記憶が一切なかったのだが、何故か西の大陸を目指さなければならない使命感を感じて育っていった。


 やがて男は神田家が支配する中央大陸の西の国では最強に名高い剣士となった。


 そして、真都エドからの指示により、彼らの船団は西の大陸を攻め入ったのである。


 しかし、神術を持たない船団は魔女により一瞬で殲滅された。

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