第184話 神宮寺家

 数日後。


 ジュウエモンさんの依頼で俺は空を経由して東の大都市大坂にやってきた。


 ラビが一人で頑張ってくれたおかげで、馬車ごと風魔法で空の旅を楽しんだ。


 どうやらサオリさんは空を飛ぶのは初めてらしくて、目を光らせて窓からの景色を堪能していた。


 大坂近くに着いて、後はゆっくりと歩いて大坂に入っていく。


 この街も京と同じ大規模で大勢の人で賑わっていたのだが、京とは雰囲気が違い、京が上品な街だとすると、大坂は活発な街のように見える。


 人々が元気よく走ったり、大声で商売をする姿に、同じ中央大陸で真都エドを中心に東西にあるとはいえ、全く違う文化なのだろうなというのが率直な感想だ。


 大通りをサオリさんと二人で歩いていくと、周りから不思議そうな視線で見つめられる事に気づいた。


「ソラ様は髪が赤いですからね。ここら辺ではとても珍しいのですよ。特に、神術を極めた人はその属性が髪の色に出るといいますから、ソラ様は火の神術を得意とするのも彼らからしたら、警戒対象にもなるんです」


「赤色で警戒対象ですか!?」


「ええ。火の神術を極めた人は性格が短気の人が多く、その神術の威力が高い事もあり、一度喧嘩になると被害が大きいのです。さらに言えば、神術使いは国から重宝されるので損をするのは大体相手になりますからね」


 意外にも神術の属性に性格が反映するのはあるのかも知れない。


 例えるなら、うちのカールのようにクールな一面を持っていると、氷魔法が得意とかね。極スキルも性格が反映される気がするから。


 周りの人達からの視線を感じながらサオリさんとお城の前にやってきた。


 サオリさんが門番と何かを話し合うと、血相を変えて中に入っていき、やがて武装したお爺さんが一人出てきた。


「これは、お久しぶりでございます。神田家のお姫様」


「ご無沙汰しております。サオリでございます」


「中央が止められているというのに、ここに来られるとは大したモノです。さあ、中で主がお待ちになっておりますので」


 お爺さんの案内で中に入っていく。


 京にあった神田家のお城に引けを取らない立派なお城で、真っすぐ進み、玉座の間のような場所にやってきた。


「久しいな、サオリ姫」


「ご無沙汰しております。神宮寺様」


 サオリさんに習った挨拶の仕方で俺も隣で続けた。


「それで、どうやってここまで?」


「はい。こちらのソラ様と共に」


 神宮寺と言われた大きな身体を持つ歴戦の戦士の気配を感じる彼が俺を見下ろす。


「ほぉ……中々強者だな。西にこれ程の強者がいたとはな」


「いえ、実は――――もっと西の方でございます」


「!?」


「以前話していた件でございます」


「なるほど。やはりサオリ姫の言う通りになったのだな…………あいわかった。東は全力で神田家を支援しよう」


「感謝申し上げます。決戦は――――――四日後。私もこのまま神宮寺様と共に参ります」


「よいだろう。それまではこの街でゆっくりするといい」


「ありがとうございます。ですがこちらのソラ様との件もあるので、四日間は街の方で過ごさせてください」


「ん? くーははははっ! これはすまなかった。よいだろう。この手形を見せるとよい。旅館費用くらい儂が持とう」


「ありがとうございます」


 俺は一言も話すことなく、サオリさんと神宮寺さんの会話が終わり、その足でお城を後にした。




 ◇




 ソラが大坂での話し合いを終えた頃。


 世界の上空では人とは思えない程の力を持つ二人が対峙していた。


「久しいな。アマテラス」


「…………」


「もはや口も利けなくなったのか?」


 サバトの言葉を聞いたアマテラスはただただ無表情で睨み続ける。


 そんな彼女の視線をただ微笑ましく見つめるサバトであった。


 睨む間の時間が虚しく去っていく。


 そして、


 アマテラスの両腕が上がると同時に周囲に真っ白い雷がサバトに直撃する。


 が、その寸前に自分の周りに真っ黒い球体のバリアを召喚して閉じこもる。


 そこに次々アマテラスの圧倒的な神術による攻撃が続いた。


 だが、サバトは反撃一つせず、ただじっと耐え続けるのであった。

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