第183話 神田家
俺が中央大陸にやってきて見かけた村達から想像もできないような大きさだったのが、目の前に広がる大都市京だ。
サオリさん曰く、中央大陸には3つの大都市があり、どれも霊連峰を中心に存在するそうで、まず、最も中央に位置するのは霊連峰の頂である霊峰。
その麓に存在するのが真都エド。
そこから東と西に進んだ場所に霊連峰に
東にある大都市大坂はここからだと真都エドを超えないと辿り着けないので、向かうだけでも随分と苦労しそうだが、ここ京だけでも真都と大坂の規模を垣間見る事ができる。
京の大きさは封印の大陸の帝国の帝都と同じくらいの広さであり、都市の壁の外からでも賑わっているのが伝わってくる。
それ程の大都市に俺達を乗せた馬車は何事もなかったかのように中に入って行く。
道を進めていく間に、窓から外の景色を眺める。
建物は大体が2階建てが多く、中央大陸では見た事もない作りになっていて、他の村の建物とも全く違う構造になっていた。
帝都や王都も素晴らしい景色だと思っていたのだが、京の町並みはそれをも遥かに凌ぐ程に美しい。
というのも、町並みが非常に洗練された作りになっているのだ。
まず、道が均等に続いていて曲がっている道は見かけない。
その道沿いに建物が建っていて、家の作りや色、広さも均等さを感じるので大通りから左右を眺めても似た景色になっている。
ただお店にはそれぞれの看板がでていて、それぞれが違うお店である事は一目瞭然だ。
そんな統一感のある町並みを眺めていると、馬車は大通りを真っすぐ進み、街の最も大きな建物――――お城のような場所に入って行った。
「お帰りなさいませ、お姫様」
「ただいま。お客様がいるので、最上階の客間に案内してください」
「かしこまりました」
カンベさんと同じくらいの年齢の、服装は違えど中央大陸の執事のような雰囲気のある方に案内されてお城の中に入って行く。
お城は7階程あるので、そのまま階段を上って行くのかと思ったら、階段の脇に設置されている不思議な板に乗ると、板にある箱のようなモノを触ると板が浮かび上がってゆっくりと上層に上がり始めた。
力の気配から、魔法でもはく、精霊でもないのを見ると、中央大陸で使われているという神術だと思われる。
最上階に着くと、広い部屋に案内されて、ふかふかのクッションに腰を下ろした。
待ち時間に閉められていた扉に似た窓を開けて貰うと、そこから京の街が一望できるようになっていた。
大通りからでも分かっていたけど、高いところから眺める京の街の美しさはより際立ったものがあり、『銀朱の蒼穹』の街もこういう作りにしたいとさえ思えてしまう。
無我夢中で景色を楽しんでいると、こじんまりとした食卓が並び始め、サオリさんと、もう一人の男性がやってきた。
「初めまして。サオリから話は聞いております。私はサオリの父、神田
「初めまして。ソラと言います。こちらがルリくんとルナちゃんです」
ルリくんとルナちゃんとも挨拶を交わし、それぞれの席に着いてサオリさん達と対面になった。
話を進める前に先に食事にしようという事で、豪華な食事を食べ進める。
味は濃いというよりは薄い味だが、言葉にするには難しい深みのある味わいだ。
繊細な味が口の中に広がり、パクパクと食べるよりは一つ一つ噛みしめながら食べるとより美味しい。
ルリくんとルナちゃんは意外にも顔に出るくらい美味しいようで、次々味わった事ない食事を進める。
ジュウエモンさん曰く、お酒も一緒に呑むととても良いらしいけど、この国では俺達は成人ではないので飲めないし、これから話し合いもあるのでジュウエモンさんも控えるそうだ。
食事が終わり食卓が下げられ、窓のような扉も全部閉められた。
「お三方はこのまま真都を目指していると聞いておりますが、その目的をお聞きしても?」
「はい。俺の妻が真都に攫われたので助けるために向かいます」
「奥様が…………なるほど。ですが、今の真都には誰一人出入りできない状況が続いております」
「出入りできない?」
「ええ。女王様が西の大陸との戦争に向かっている間、真都はその扉を固く閉め、出入りを禁じているのです」
出入り禁止にするという事には何かしらの理由があるはずだ。
サオリさんから聞いている話だと、真都を中心に物流が回つていると聞いているので、真都を通れないと中央大陸の東と西は分断されてしまうはず。
「このままでは我々西側も大きな打撃を受けるのは間違いありません。東側との交流を生業にしている者も多いですから」
「どうして出入りを禁じているかは分かりますか?」
「…………恐らく、私と、東の大坂を纏めている
女王の力が絶大だと思っていたのだが、実はそうでもない?
「失礼ですが、ジュウエモンさんは女王様に忠誠を誓っているわけではないのですか?」
「我々は元々東と西を分けて国を構えて戦争に明け暮れていました。それを止めるために唯一の通り道である真都の地域を納めていた
淡々と説明したジュウエモンさんが一度お茶で口を潤わせる。
「元々屈服され、皇家としてもそれでよいとここまでやってきました。我々は女王に忠誠を誓ってるのではないのです」
「では神田家としては、この先どうなさるつもりですか?」
「我々は自らの民を守りたい。少なくとも神宮寺家も同じ事を思っているはずです。昔はお互いに戦争をしていたが、皇家のおかげで手を取り合って生きる道こそが生き残る道だと知りました。だからこそ、このまま分断されたままではまたいずれ溝を産んでしまう。――――――このまま西大陸との戦争を進める皇家を止めるつもりです」
ジュウエモンさんの固い意志が込められた返事だった。
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