第180話 海岸での決戦

 昨日は村人達からお裾分けという事で、食事をご馳走になった。


 どうやら村人の中にも狩人がいるようで、狩りには困ってないらしく食料はそれ程困ってないそうだ。


 中央大陸では神術と呼ばれているモノがあり、俺達でいう魔法を彼らは神術と話していて、神聖視するようで、仙人と呼ばれる存在になるために中央大陸の全ての地を訪れて修行を重ねる修行僧というのがあるそうだ。


 多くの人が仙人を崇めるために、修行僧の段階で拝められる存在だそうだ。


 不思議な衣装を身にまとうため、俺が着こんでいる服でも違和感がないそうだ。




 小さな村で一番だけお世話になって、修行僧を装うためにお返しは何も渡さず村を後にして東を目指した。


 現在の場所は中央大陸の西なので、東を目指して中央大陸の中央にある真都を目指す。


 『転職』を使い『勇者』から『アサシンロード』に変更して平原を駆け抜ける。


 周囲に敵意は全く感じず、印象としては幾つもの動物が無数に生きていて、自然にあふれている印象だ。


 封印の大陸は魔物がいて動物の住処がないので、街で飼っている動物くらいしかないし、観覧用が多いので動物が視界いっぱいに映るこの景色を美しいと思える。


 平原を抜け、また深い森に入っていく。


 大きな樹木の上部の枝を伝って、どんどん先に進んで行き、やがて暗闇が訪れたので、野営を始めた。




 ◇




 ソラが中央大陸を進めていた頃。


 封印の大陸では大きな戦いが始まろうとしていた。


 大勢の軍勢が大陸の東海岸に集まっていた。


 そこは魔女の森を越えて広がっている海岸で、海の向こうから真っ赤に染まった大船が数百隻見えている。


 圧倒的な数とそこから伝わる強者の雰囲気はその場にいる全ての者に絶望を与えるのは容易な事である。


 だが、その場から逃げ出そうとする者はいない。寧ろ――――――誰しもが笑みを浮かべて敵を眺めた。


「思っていた以上に多いな」


「それも予想通りといえば、予想通りです。伯爵」


 水平線を眺めているのは、封印の大陸の最大戦力と言っても過言ではない戦力。


 帝国最高戦力の飛竜隊は仮の姿の『銀朱の蒼穹』の陸式である。


 それだけではない。


 大陸全土から名だたる戦士と兵が集まり戦争に備えている。


「ミリシャ殿。では貴殿の作戦通りに進めるとしよう」


「ええ。ご武運を。伯爵」


 伯爵が一歩前に出て兵達に向かって声を上げる。




「これより、事前に伝えていた掃討・・作戦を行う! 彼らは同じ人族でありながら人族ではない! 思う存分力を発揮して敵を討ち滅ぼしてくれよう!」




 伯爵の演説から空が割れんばかりの歓声があがった。


 それと同時に陸式の面々が飛竜に跨り、共に壱式の面々も乗り込む。


 二人一組のペアとなり空を駆けると、一気に飛竜隊が敵陣の上空に飛んで行った。




 数分後、海での戦いが始まる。


 敵船団からの魔法による迎撃が空を埋め尽くし、上空から飛竜と壱式の魔法の雨が降り注ぐ。


 青い空、青い海、その狭間に色とりどりの美しいとも思える景色が広がっていく。


 だが、そのはやがて赤く染まっていく。


 飛竜隊により多くの船が沈んでいく中、超高速で進む船団は止まる事なく大魔法の嵐を越え勢いをそのままに船ごと海岸に突撃させた。


 重苦しい音と砂の嵐を周囲にまき散らして届いた船団から、赤い甲冑を着込んでいる大勢の侍達が地上に降り立つ。


 降り立った赤い甲冑の兜の中からは真っ赤に燃える瞳が一斉に大陸中央に向く。


 圧倒的な数の甲冑が動き出すと共に、海岸の手前に布陣していた封印の大陸の兵達から魔法の攻撃が始まる。


 しかし、その魔法をもろともせず、真っすぐ走り進める侍達。




「怯まなくていいわよ! 侍達がただ前を向いて走るだけだから! このまま守り切るわよ~!」




 ミリシャの声に応えるかのように封印の大陸の連合軍の攻撃は鳴り止む事なく放たれ続ける。


 その猛攻に敵陣の魔法も炸裂し、数人の侍達が砲撃を搔い潜り、連合軍に到達する。


 顔は見えないが侍達の笑みが浮かんでいるようだったが、その前を防ぐのはゼラリオン王国の騎士達である。


 ハレインにより疲弊しているとはいえ、ゼラリオンのインペリアルナイトは大陸でも有数の強さを持っており、国王もまた最前線で戦い抜ける程の実力を持つ。


 連合軍の魔法援護隊を守るゼラリオンの騎士達が侍達に剣を振り下ろした。


 真っ白だった海岸はいつしか真っ赤に染まる程に大きな戦いは続き、やがて海岸を埋め尽くす赤い甲冑が大量に横たわる事となった。




「ソラくん。前線は守ったわよ。私達が着くまでどうにかフィリアちゃんを頼むね」


 ミリシャは敵陣の壊滅を確認して、中央大陸に向かっているソラくんの安否を案じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る