第178話 中央大陸への着陸

 上空から硝子が割れる音が全世界中に響き渡った。


「始まった! みんな! 全力で大陸を守るよ!」


「「「「はい!」」」」


 数百名のメンバーが拳と共に声をあげた。


 ミリシャさんが事前に組んでいた作戦通り、メンバーが散っていく。


「ミリシャさん。大陸をお願いします」


「任せておいて。ソラくんもしっかりね」


「はい」


「こっちが片付いたら絶対に追いつくから」


「無理はせずに、安全にお願いしますね」


 ミリシャさんとカールを残してお父さんから託された飛竜――――ガーヴィンの背中に乗り込み空高くあがっていく。


 空の向こうには黒い光と赤い光が遠のきながら、その存在感を示している。


 黒い光が大陸を守っていた闇の神、サバト様。


 赤い光が大陸の外からやって来た光の神、アマテラス。


 二人がぶつかり合うのも時間の問題だ。


 サバト様の提案で、大陸に被害が及ばないようにと、遥か空の向こうで戦うそうだ。


 その間。


 俺達『銀朱の蒼穹』は大陸を守る事に専念。


 俺はガーヴィンの背中に乗り込み、ルリくんとルナちゃんが影に隠れて共にしてくれる。


 事前にサバト様から聞いた情報で大陸を後にして、真っすぐを目指していく。


 そこにアマテラス神が支配している中央大陸があり、そこに真都エドがあるはずだ。


 フィリアは間違いなくそこにいる。


 今でも頑張っているはずのフィリアのためにも、一刻も早く東に向かった。




 大陸を出てしばらく進んでいると、永遠に続くんじゃないかと思わされた海の向こうに小さな影が映り始める。


「ソラお兄ちゃん! 向こうに何か見えるよ!?」


 影の中からルナちゃんが声をあげる。


「そうだね。後ろには俺達の大陸が見えるから、もしかしたらあれが中央大陸なのかも。ガーヴィン! 疲れたら教えてね! 今度はラビが頑張ってくれるそうだから」


 するとガーヴィンが大きくひと鳴きする。


 …………何となくガーヴィンならあの大陸まで飛ぶと思う。お父さんに似て・・ちょっと頑固だからね。


 大陸に近づくにつれ、影がどんどん大きくなり、形がはっきりと見えるようになる。


 俺達が住んでいた大陸は、海岸と呼ばれる場所があって、海と大陸が繋がっているかのような高さだけど、向こうに見える中央大陸は断崖絶壁で海を拒むかのような作りになっている。


 強烈な波が大陸にぶつかり、空高く上がるのが、ここからでも目視出来る程だ。


 これもサバト様から聞いた話だけど、中央大陸の周囲の波は非常に強いらしく、封印の大陸のような穏やかな波とは真逆である。


 それもサバト様はアマテラス神の怒りだと言っていた。


 大陸が目の前になった頃、ガーヴィンの息が少し荒くなってきた時の事だ。


 向こうから身体が青い光に包まれた何かが数体こちらに向かって飛んでくる。


 数は全部で4つ?


「ソラ兄さん。恐らく敵だと思う。殺気を感じるよ」


 アサシンロードでもあるルリくんはすぐに殺気を感知したようだね。俺はまだ感じられない。


 ただこちらに向かう相手の方から、不思議な魔力の波を感じた。


「攻撃かもしれない! ガーヴィン!」


 ギャオー! とひと鳴きしたガーヴィンは高度を高くあげながら、その口に火炎ブレスを蓄える。


「ラビ!」


「ぷう~!」


 ガーヴィンの口から一気にブレスが吐き出されたタイミングで、ラビの風魔法がブレスに混ざり合い、強烈なブレス攻撃に変わっていく。


 赤と緑の色が調和され美しいとさえ思えるブレスが敵4体を巻き込む。


「ラビ! ガーヴィンの飛行を手助けしてあげて!」


「ぷい!」


 海同様に空にも強い風が吹いていたのを逆手に取り、ラビの風魔法で風の進路を後ろから前方に吹くように変えると、風の軌道をすぐに感じ取ったガーヴィンが体勢を細く変え風に乗り中央大陸に凄まじい速度で近づいた。


 ここまでの速度の数倍の速さに俺も必死にガーヴィンの背中にしがみついているとルリくんとルナちゃんの糸が、俺とガーヴィンを繋いでくれて、大陸にやって来た。




 ◇




「ソラ兄さん。ガーヴィン。お疲れ様。少し休んでて。ここは僕が出るよ」


「私も~!」


「ルナは後方を守って欲しい」


「え~!」


「先の4体が生きてる可能性だってあるだろう?」


「あ! そうだね! ルリ! 気を付けてね」


「分かった」


 俺達がたどり着いた断崖絶壁の上から、目の前に広がるのは黒い色をした木々が存在感を示している不思議な森だった。


 そんな森の中から、不思議な格好の達がこちらに向かって一歩ずつ歩いてくる。


 赤い鎧は俺達が住んでいる大陸では見た事もない鎧で、サバト様から事前に貰えた情報によると防御力に優れた甲冑という鎧と思われる。


 そんな甲冑を着込んでいるのなら、間違いなく――――


サムライとやらがどれ程のモノか、かかってこい!」


 ルリくんが彼らに挑発すると、一斉にこちらに向かって走って来た。

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