第177話 決戦前の準備
サバト様から聞かされた昔の真実を聞いた俺達。
正直に言えば、俺達にはあまり馴染みがない存在ばかりで、神と言われてもあまりピンとこない。
ここまでの話からすると、『新しい闇の神』というのは、間違いなくサバト様だろう。
という事は、教会で祭られている女神様って…………サバト様って事になるんだな。
まさかみんなが一番恐れている存在と一番敬う存在が同じ存在だとは誰も思わないだろうな……。
「そういえば、サバト様は
「ああ。もちろんだ。
サバト様の瞳の奥から悲しみが伝わってくる。
「人間というのは、この『封印の地』の外にいる人族の事だ。『新しい光の神』――――
「外の……人族…………」
「ソラが思うような人族ではない。彼らに会えば理由が分かるはずだ。彼らを救う手立ては最早存在しない。彼らに安寧を送るのみじゃ。わしの前任がこの『封印の地』を残す際、外にはまだいくつかの人族が残っておった。その中から『新しい光の神』に敵対した者は滅ぼされたのだろうが、配下に下った者もいる。彼らは自我を奪われ、完全なる操り人形になっている。新しい光の神によって」
「っ!?」
「だから彼らを救いたいと思うなら、彼らをあの世に活かせるいかない。いずれまた魂が循環して生まれ直すじゃろうから」
俺に魂とか神様とか難しい事は分からない。でもサバト様の雰囲気から彼らが『囚われた人族』なのは分かった気がする。
「彼奴らは前任のわしが育てた神にも匹敵する種族が残っておる。これから戦う相手は神をも滅ぼした人族である事を念頭に置いておくといい。外との決戦は間近じゃ。『封印』は内側から破られてしまい、もう修復は不可能で数日後には破壊されるじゃろ。このままではこの地にいる全ての人族と大地が滅ぼされるのじゃ。わしはそのあと、天照大神との戦いがある。恐らく魔女達だけでは止められないだろう。ソラ。あとはお前が決めるがよい」
「サバト様……」
「わしが集めた全ての戦力と資材を持っていくがよい。わしは前任の願いを果たす役目があるのでな」
「分かりました。俺達『銀朱の蒼穹』は絶対に大陸を滅ぼさせません。絶対人々を守って見せます。ですからサバト様も安心してサバト様のやりたいことを成してください」
「くっくっ。たった数日で言うようになったのじゃな?」
「あはは…………サバト様が知っている人族とは、常に進化し続けるんですよね? 俺達もここで足踏みし続けるつもりはありません。それに俺達には大切な人を奪われたという事実があります。絶対にこの地を守って、妻を取り戻して見せます」
「よかろう。各地にあるクリスタルの使用に関しては全て任せよう。あれがどういう役割をするのかは知っておろう?」
「はい。精霊と繋がりが深い部族から色々話を聞いています」
「あの精霊王の生まれ部族か」
「はい」
「くっくっ。これも因果応報よの…………あの部族は『光の神』を信仰していた人族だったのじゃ」
「えっ!?」
「前任のわしが作った命とはいえ、彼らにも思考はある。ましては一度大陸の覇者となった種族じゃ。彼らが信じたい神は何も『闇の神』だけではない。前任の『光の神』はそれを分かってなかったのじゃ。何が何でも平和と言いながら各々の自由を無くした方が平和になると思ってしまったのだろうな。仕方ない事だが、決戦でその目を覚まさせてやろうではないか」
「はいっ! こちらも出来うる事は全て協力しますから!」
こうして、俺達『銀朱の蒼穹』は最後の決戦を前に、その戦力を整える事にした。
◇
次の日。
俺は集まっている『銀朱の蒼穹』の全てのメンバーに現状を伝えて決戦が近い事を伝えた。
さらに決戦に向かうために、『銀朱の蒼穹』の全てのメンバーの職能を一新させる事にした。
最後のレベルで獲得した『最上級職能』への転職。
『銀朱の蒼穹』の全てのメンバーは最上級職能となり、凄まじい速度でレベル10に到達し、それぞれの連携の練習を行う事となった。
◇
数日後。
各国の王城に『シュルト』と名乗る暗殺集団が現れた。
圧倒的な強さで一瞬にして王城を制圧した。
全ての王に決戦の参加を申し入れた。
納得はいかなくとも、『シュルト』に勝てるはずもない彼らは全員『シュルト』の配下になる事を決意。
全員がレベルを1にされるも、奇跡的な力ですぐにレベル10を達成した。
こうして各国はそれぞれの戦力で守りを固め、『銀朱の蒼穹』は大陸の外に向かう手筈となった。
さらに数日後。
世界の空を覆っていた見えない封印の亀裂が今にも割れそうなくらいひび割れていた。
大陸の全ての人々が震えて待っている中、遂に封印が破壊された。
上空から硝子が割れる音が大陸を包み、真っ青だった空はたちまち黒い雲に覆われる。
そんな遥か上空に現れる二人の影。
封印が破壊されたその日、神と神の戦いが始まったのである。
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