第175話 先見の明を持つ神話
「はぁ……私が一番緊張してるよ……」
目の前のミリシャさんが少し震える声でため息を吐いた。
メンバー全員が待機している傍ら、各リーダー格で集まった会議室では、ものすごい緊張感に襲われていた。
その理由は、俺のレベル10で得られたスキルについて、そして、その結果からサバト様が全てを話してくれるからだ。
「みんな、良い?」
ミリシャさんの言葉に、全員が緊張したまま顔を上下させる。
「よし――――――ソラくん」
「はい」
「レベル10のスキルを教えてちょうだい」
レベル10で得られるスキルは普通のスキルではない。
レベル1から9までは各職能で決まったスキルを得るのだが、レベル10に到達した人は、その人だけが発現出来るスキルを獲得出来る。
それを俺達は極スキルと呼んでいる。
生まれ持つ『固有スキル』と双璧を成す『極スキル』。
俺の極スキルは――――
「『先見の明を持つ神話』というスキルです」
会議室の空気は動く事はなく、全員が不思議そうな表情を見せる。
ただ、一人だけ。
黒猫姿のサバト様だけが、小さく笑い堪えていた。
「人から
「サバト様? ソラくんのスキルを知っていますか?」
「いや、知らん。ただ、最終スキルには階級というものが存在している。大勢は『者』となるが、中に稀に『伝説』が生まれる。だが、その中でもほんの一握り。いや、一握りという言葉すら生ぬるいほどの存在が生まれる。それが『神話』なのじゃ。私が知っているだけでも10人にも満たないのじゃ」
サバト様の言葉に全員が驚く。もちろん俺も。
「ソラ。その力とはどんな力なのだ?」
「はい。これは――――昇進させる力のようです」
「「「「昇進?」」」」
会議室に疑問の言葉が響く。
「えっと、俺が持つ全ての力を昇進させます。ついでというか、俺が持つ固定スキル『限界を越えし神威』によって、昇進と共に、限界も全て外れたそうで…………簡単にいうと俺が使えるスキルはどれもものすごく強化された感じですね」
「そ、ソラくん? た、例えば、ど、ど、どんな感じで強くなったのかしら」
ミリシャさんの目は凄く泳いでいる。
「本当に全てなんですが、例えるなら――――――レベル8で獲得出来る『エボリューション』がですね」
「き、聞きたくないような、聞きたいような…………」
会議室のみんなが俺に釘付けになった。
「その上の職能に転職出来るようになりました」
「「「「ええええええええええええ!?」」」」
暫く騒然となってしまい、会議が続けられない事態となった。
◇
「ミリシャさん。大丈夫?」
「大丈ばない……」
驚きすぎて倒れたミリシャさんが変な言葉を使ってる。相当応えたようだ。
「そ、ソラくん?」
「はい」
「…………上級の
「そうですね」
「最上級って剣聖とか……そういうのだよ?」
「はい。なんなら――――――『勇者』にもなれますよ~」
「ひい!? でもそれってソラくん……
「ミリシャさん……………………とても残念ながら………………」
声にならない叫びで、ミリシャさんは二度目の気を失った。
◇
「何だか『銀朱の蒼穹』らしいよな」
「そうだね。みんな驚きすぎて結局一日が終わっちゃったよ」
「あはは~ぎりぎりじゃなくて良かったな? 親友」
「本当だよ! サバト様も面白いって笑ってくれたから良かったけど。夕方からサバト様の話が聞けそうでよかった」
「くっくっくっ。それにしても誰でも『勇者』になれるか~すげぇな~本当」
「…………一つだけ分かった事があるんだ」
「分かった事?」
「確かにこの力で誰でも『勇者』や『剣聖』にはなれる。でもそれは人がいて初めてなれる事が出来るんだ。力は先にあらず。人がいてこその力だと知る事が出来た気がするよ」
「ソラらしい考え方だな。お~そういえば、これで俺も『賢者』になれるのか!?」
「そうだね~先になってみる?」
「なってみたい!」
俺はカールの職能を『魔導士』から『賢者』に変える。
「おお~! 凄まじい力が溢れる! 気がする」
「うんうん。ちなみに、レベルが上がるのも早くなってるからちょいっと戦うとレベル10もすぐだと思う」
「まあ、それは元々早いからな。2時間もありゃレベル10になる時代だからな~」
昔なら想像だに出来なかったけどね。
「それにしても、これだとルリくん達のように最上級職能を持つ子達は少し残念なのかな?」
「あ~それも問題ないよ。彼らは普通の人と違って『昇進』させる事が出来るから」
「…………すげぇな」
「まあ、それは編成ん時にでも話すよ」
「おう。――――――なあ、ソラ」
「ん?」
「フィリアが帰ってきたら、久々にセグリス町に行かねぇ?」
「お~! いいね! 行きたい!」
「久々にみんなとも会いたいしな」
「うんうん! もう数年も会えてないからな。楽しみだ」
「楽しみだな。絶対に勝つぞ」
「ああ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます