五章前半『エスピルト民』
第159話 精霊眼
「ヒンメルの目~精霊眼~」
「やっぱり……間違いないわ。精霊眼だわ」
精霊眼?
俺の目を覗いているアンナとセレナさんから同じ言葉が出た。
「驚いたわ…………無くなったとされている精霊眼が出現するなんて…………」
「アンナもセレナさんもこの目の正体を知っているのですか?」
「うん~」
「知ってるも何も……私がずっと探し求めていた力よ…………本当に懐かしいわね。でもおかしいわ…………どうして
セレナさんが求めていた? 懐かしい?
「セレナさん。クリスタルを仕舞いましょう」
「っ!? そ、そうね」
そのあと、セレナさんが不思議な羅列――――ではなく、聞き取れる言葉を唱える。
――――「我、求める。この地を見守る精霊達よ。大地の祝福を隠したもう」。
すると『クリスタル』の姿が消えていった。
いや、消えたのではない。
『クリスタル』の周囲に多くの
そして、彼らは全員――――俺を見つめる。
「初めまして」
声を掛けてみると、彼らは俺に手を振る。
どうやら声が出せないらしい。
「っ!? やはり、精霊が見えるのね!?」
「ええ」
「驚いたわ……私達以外で精霊を見れる者がいたなんて…………聞いた事がないけれど…………」
「見れる人なら一人いる~」
「……まさか」
「女王様なら見れる~」
「…………そうね。サバト
「女王様何でも出来る~でも」
「でも?」
「ヒンメルが出来る事は出来ない~」
「っ!?」
あはは……アンナ……買いかぶりすぎだよ。
「それに、女王様が唯一
「う~ん。この精霊眼ってそんなに凄いのか?」
俺の言葉に、セレナさんが一番の反応を示した。
「凄いってモノじゃないわよ! 精霊眼はね。精霊に愛された者だけが受け継げるのだけれど、そもそもその力は――――生まれる前から決まっているのよ」
「生まれる前から決まっている?」
「そうなのよ。私達の一族がずっと守ってきた力なの。人々を幸せに出来る力だと伝わっているわ。私は姉様の精霊眼ほど強い力は受け継げなかったから開眼は出来ないけれど、私の瞳にも少しの精霊眼の力が宿っているの」
それを聞いたアンナがじーっとセレナさんの瞳を見つめる。
「凄い~セレナも弱い精霊眼だ~」
「そ、そうよ。ただ、私では弱いので朧げに見えるのと、何とか精霊語を唱えるくらいかしら……」
こんなにくっきりは見えない感じか。
それはそうと、俺達が『シュルト』の衣装を身にまとっているのもあり、周りからの視線が集まり始めている。
「そろそろ離れた方がいいようですね」
「ええ。王都に戻りましょうか」
俺達はその場をあとにして、王都の研究棟に戻って行った。
◇
「驚いた…………中は可愛らしい少年少女だったなんて」
セレナさんが『シュルト』衣装を脱いだ俺達を見て驚く。
「ふぅ…………シュルトの衣装は暑くて困るよ~」
ソファーに寛ぐルナちゃんがはしたない格好で声をあげる。
少し目の置き場に困っていると、フィリアが苦笑いしながらルナちゃんのスカートを直してあげる。
「えっと、改めまして『銀朱の蒼穹』のクランマスターソラです。こちらはサブマスターのフィリア。こちらはルナちゃんです」
ずっと『シュルト』でもいいんだけど、『禁忌』を共有した時点で、彼女なら秘密を守ってくれそうだから正体を明かした。
「それはそうと、セレナさん。精霊眼について詳しく聞かせてください。『禁忌』についても」
「分かった。まず『禁忌』は私達の一族に伝わる秘術『精霊術』で精霊と交信する事でこの世界のあやゆる礎を書き換える事を言うわ。そして、この礎を守っているのが魔王の女王サバト様ね」
「アンナ? そうなの?」
「うん~女王様はずっと守っているの~」
意外というか、魔女王様ってなんだか怖いイメージがあったんだけど…………。
「女王様は『禁忌』を犯した人は全員消滅させる~」
うん…………やっぱり想像通りだったよ。
「ん? でも不思議ですね。セレナさんの一族はずっとその力を持っていたのでしょう?」
「ええ。サバト様と契約を交わしているから、力の乱用さえしなければ、命は保証されているの」
「ではセレナさんはどうして?」
「…………私は破門されて追い出されたの」
「破門!?」
「まあ、破門というか、自分から破門されて外に出た感じだわ。姉様の件が納得いかなかったから」
そういえば、セレナさんから度々姉様の言葉が出てくる。
「セレナさんのお姉さんに何かあったんですか?」
「ええ。姉様はね。人に騙されて拉致されたのよ」
「拉致!?」
「ええ。あれは拉致に近いわ。だから何とか姉様を連れ戻したかったんだけど、大人の連中から止められてね…………はぁ……」
「えっと……未だ会えていないのですか?」
「そうよ。あの憎たらしい男…………赤い髪と赤い目」
赤い髪と赤い目?
「ん…………? ソラくん? 貴方名前はソラだったわね?」
「そうですね」
「…………? 苗字はないのかしら?」
「苗字ですか? ない――――――あるにはあるのか」
そもそも俺はお父さんの息子だけど、あまり馴染みがないというか何というか。
「……………………あるの?」
「えーっと、普段は使わないですし、あまり使いたい訳ではないんですけど――――――リントヴルムと」
「あああああ! あの憎たらしい男の名だわ!」
セレナさんがその場で立ち上がり拳を握り締めた。
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