第155話 双剣聖と最強【前編】
「せっかくの可愛い顔が台無しだぞ? 姫よ」
ローエングリンは目の前の
身を隠していた『シュルト』の衣装である仮面が半分に割れて地面に落ちている。
中から現れた美しい黄金色の髪がなびく。
フィリアが両手に持っていた剣が少し震えている。
ローエングリンのたった一撃がそれほど強く、まともに防いだだけで、少し手が痺れているのだ。
「剣聖が双剣とはまた面白いな」
「貴方も普通の剣聖ではなさそうね」
剣聖はあくまで剣を
それを両手で持つ剣聖も存在しないのだが、目の前のローエングリンは両手に大きい大剣を持っているのだ。
「そうだな。俺様は剣聖ではないからな」
「!?」
「俺様に勝てたら教えてやるよ。だが――――――今の俺様に勝てるやつなんざ、いないがな!」
重そうな大剣を玩具のごとく軽そうに振り回すローエングリン。
受け止めるというよりは、双剣を使い、上手く受け流す。
たった数秒で十数合の剣と剣が交わる。
大剣を上手く交わしているように見えたフィリアだったが、その右手のしびれが加速していく。
「『双神の皇』」
フィリアの言葉に呼応するかのように、両手に持った双剣から赤い光と白い光が漏れだす。
今度は双剣の連撃が続くが、不敵な笑みを浮かべたローエングリンは大剣の側面を使い、巧みに捌いていく。
「――――――アルカディア」
大剣が真っ赤に燃え盛る。
普通の炎ではない事をいち早く察知したフィリアが遠く後ろに飛び逃げる。
「…………普通ではないと思ったけど、まさかそんな職能だとはね」
「くっくっ。知って絶望はしてくれるなよ」
「まさか。私は絶対に貴方に負けないもの」
「奥義、百花繚乱!」
「っ!? 剣聖奥義、百花繚乱!」
ローエングリンから放たれる無数の爆炎攻撃と、それを上回る数のフィリアの攻撃がぶつかり合う。
一打でも周囲に轟音が鳴り響くほどの攻撃が無数に激突していく。
ローエングリンの大剣が少しずつ色を濃くしていき、赤から深紅の色に染まった頃、前方に爆炎が放たれる。
「ほぉ……あれを喰らってまともに立ってるやつなんざ、見た事がないぞ」
「はあはあ…………」
双剣を杖代わりにして立ち上がるフィリア。
たった一撃で全身に無数の傷が出来たが、大きな傷は増えていない。
「今の
間髪入れずローエングリンの大剣がフィリアを襲う。
「おいおい! 姫よ! たかだかそんなモノか!」
「っ!」
重い一撃一撃を双剣で受け止めるフィリアだが、受け流す事が出来ず押されていく。
「『双神の皇・絶』!」
双剣の柄部分から包帯が伸びて、ローエングリンの身体に刺さる。が、彼の身体を貫く事は出来なかった。
「ふ~ん。面白い武器だな? それもあの転職士の力か?」
「はあはあ…………」
「くっくっ。あのグンゼムがやられるわけだな」
「剣聖奥義、朧月ノ夜風」
「――――リベリオン」
ローエングリンの周囲に黒い稲妻が走る。
すぐに前方から大爆発が起きる。
「ほぉ……そういう事か。面白い事をするな?」
大きく吹き飛んだフィリアが立ち上がる。
「それは――――魔法か? 両手に魔法を合わせているのか。なるほど」
「くっ、がはっ……」
フィリアの口からおびただしい量の血が吐かれる。
「はあはあ…………ここで、負けるわけには…………」
「大したモノだ。俺様もあの転職士のおかげでこれを二発も撃てるようになったが、そもそも一発すら耐えられた奴はお前が初だぜ」
「くっ」
フィリアは両手に大きな炎を纏わせる。
「――――フレイムバースト!」
合体した炎の魔法が特大魔法にも等しい勢いでローエングリンを襲う。
「その短い詠唱でこれほどの魔法が使えるか。剣聖だとばかり思っていたが、面白れぇな――――――――アブソリュート」
続けてもう一回フレイムバーストを放つフィリアに、真っ青な色の氷が迫ってくる。
爆発の轟音を響かせ、周囲に冷たい氷の景色が広がる中、中央に辛うじてフィリアが立っていた。
「少し舐めていたが、これこそ『銀朱の姫』だな。アイザックがずっとけん制していたのも頷ける。転職士の力がなければ、俺様でも負けていたぞ」
氷の山の上からフィリアを見下ろすローエングリンが剣を構える。
「勇者奥義、アルカディア」
再度ローエングリンの剣に赤色の炎が灯る。
数秒間、少しずつ色を濃く変化させていく炎は赤色から深紅色に染まっていく。
「『銀朱の姫』。お前は俺様が戦ったどんな相手よりも強かったぞ。一生記憶に刻んでおこう」
そう話し剣を振り下ろす。
爆炎が氷の山を伝い、中央に佇んでいるフィリアに直撃する。
周囲の氷を吹き飛ばすほどの爆発が吹き荒れた。
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