第145話 七番目の仲間達

「かかれ!」


 広間に男の声が響く。


 誰でも目の前で惨事が広がると思われた。


 その時。


 大人達は微動だにしない。


「あん? どうした! 早くこいつらを斬り捨てろ!」


 しかし、誰一人反応を見せない。


 男が目の前の男に手をやると、その男は力なくその場で倒れ込んだ。


「は!? な、なんだ?」


 次々倒れる男達。


「みんな! 作戦開始!」


 ノエルの声が響くと、子供達も我に返り、その場から動きだす。


 短剣を持つ15人が倒れている男達を斬りつけ麻痺させている間に、ノエルも複数人の子供とともにリーダーと思われる男を襲う。


「な、なんなんだお前らは!」


「僕達はずっとお前に苦しめられた亡霊だ! 報いを受けろ!」


 ノエルの短剣が男を斬りつけると、男は成す術なくその場に倒れ込んだ。


「みんな! 予定通り手分けして仲間を探そう!」


 子供達から歓声とともに、手があがる。


 すぐにみんな10人ずつに分かれ、地下のそれぞれの場所を探索した。



「それにしてもどうして大人達は倒れたんだろう?」


 広間で待機しているノエルとシイナが疑問を口にする。


「きっとシュベスタ様の加護だと思う」


「そうね。シュベスタ様のおかげかも知れない。急いで仲間達を救出しよう」


「ああ。でもそろそろ大丈夫かも知れない」


 ノエルの言葉通り、奥からは多くの孤児達が希望に溢れる顔色で広間に集まった。


「全員で250人だね。こんなに沢山いたんだ……僕達の仲間が」


「そうね。後はどうしよう? シュベスタ様からここに来てとかは言われてなかったよね?」


「このまま外に出ると衛兵に捕まる可能性があるから、ここで待った方がいいのかな?」


 広間に集まった孤児達は大人達を縛り上げ、バラバラに牢屋に入れる。


 全てが終わった頃。


 広場に二人の拍手が鳴り響く。


 入口から入って来る二人は誰が見ても死神に思われるような黒い衣装と黒いベールに息を呑む。


 すぐに彼らに跪くノエルを見て、他の子供達も彼らが『シュベスタ様』なのだとすぐに理解して、全員が跪いた。


「ノエルくん。並びに孤児達。貴方達の努力・・覚悟・・はしかと見届けたよ。では、最後に私達『シュルト』に迎え入れるために、絶対に誓って貰わないといけないことがあるの。みんな顔を上げて」


 みんなが立ち上がる。


「私達『シュルト』は、これからも沢山の人の命を奪うかも知れない。でも私達は必ず家族を守る為にその力を振るうの。絶対に力を見せびらかしたり、私利私欲で使ってはならない! 私達は家族を守り、そのためなら命も投げ出す覚悟が必要なの! それに賛同出来る者だけ私達に付いて来て」


 ――――その場を後にするシュベスタに、誰一人欠けることなく、全ての孤児達が付いて行ったのは言うまでもない。




 ◇




 ルナちゃんから大急ぎで来て欲しいという連絡を貰ったので、見張りはアンナにお願いして、俺はラビたちと共にルナちゃん達の所にやって来た。


「ソラお兄ちゃん~」


「ルナちゃん、ルリくん。お疲れ様」


 そう労った瞬間、俺の視界に多くの子供達が映った。


「え!? 子供達がめちゃくちゃいっぱいいるん……だけど?」


「うん! 孤児達を食い物にしていたやつらを片付けて来たの~」


「なるほど……という事は、彼らは『地底ノ暁』ではないんだね?」


「そうだね。王都の宝石屋の営んでいた者が手を引いていて、その後ろ盾に貴族がいるみたい」


「もしかしたらその貴族が全てに繋がっているかも知れないな」


「そうかも! それはこれから調べるよ! それよりも――――この子達を迎え入れたいんだけど、ダメ?」


 ルナちゃんがおねだりポーズをする。


 めちゃくちゃ可愛い。


 後ろのルリくんが少し苦笑いをするが、きっと二人で頑張ってくれたんだろう。


 それに孤児達からも期待の眼差しを感じる。


「えっと。ルナちゃんの部下でいい?」


「うん!」


「…………分かった。ルリくんは肆式を纏めてくれているし、ルナちゃんには彼ら――――しち式をお願いね」


「ありがとう! みんなとても良い子達ばかりだから、みんな・・・とも仲良く出来ると思う!」


「そうだね。みんな良い表情をしている。みんな! これからルナちゃんのサポートをお願いね!」


「「「「「はいっ!」」」」」


 元気良い答えに、ルナちゃんの頑張りのおかげなのだろうと思うと、自然と嬉しそうな笑みがこぼれる。


 彼らに一人一人『転職』を行い、全員をアサシンに変更する。


 ルナちゃんは、彼らを連れて狩りに行ってくるといい、250人もの人数を連れて狩場に向かった。


 既に『アイテムボックス』を使い全員がお腹いっぱい食事を取っていて、装備も充実しているのは、ここまで裏方で用意してくれている他のメンバーのおかげだね。


「ルリくん。例の貴族をお願いできる?」


「まかせておいて! 今回はルナちゃんに全部持って行かれたから!」


「ふふっ。無理はしないでね? アンナは王城から一度こちらに来たけど、明日には交渉に戻ると思う」


「分かった」


 ルリくんも姿を消し、僕はフィリアが監禁されているアジトに戻った。

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