第135話 銀朱の蒼穹の最凶戦力
帝都城、玉座の間。
ワンド街での戦争、シカウンド地域での戦争に負け、アポローン王国との戦争も途中で止めた帝国の玉座の間に重苦しい空気が流れている。
その場に、真っ赤に燃える髪をなびかせた男が入って来る。
「…………来たか」
「陛下。アクアソル王国は我がリンドヴルム家が支配しました」
「…………」
「このままアクアソル王国及びワンド街周囲は我がリントヴルム伯爵領にします」
「分かった。元々その約束だからな。ただ一つ仕事を頼みたい」
「……どうぞ」
「南のアポローン王国との件だ」
「あの血気盛んな王国を制圧しろと……?」
「制圧出来れば良い。だがこのままではローエングリンによって、あの国は滅びるぞ」
「なるほど……ローエングリンはまた一人で攻め入ったのですか」
「ああ。アポローン王国も黙っていはいまい」
「…………かしこまりました。その任、リントヴルム家がお受け致します」
「…………」
リントヴルム伯爵は優雅に挨拶をし、玉間の座を後にする。
「陛下、このままリントヴルム家を放置しても良いのですか?」
「ふむ……だがあの男を止める方法などないのだからな」
「では、ここは一つ、わたくしめに任せて頂けますか?」
「…………ローレンス。下手をすれば宰相の座すら危ういぞ?」
「構いません。これでこそ帝国の宰相というものです」
「…………やってみるといい」
「はっ」
帝王と宰相の間に小さな言葉が交わされる。
だが――――それを既に予想していた人間がいるとは、彼らは知る由もなかった。
◇
数日後。
「ソラ。よろしく頼む」
「こ、こちらこそお願いします!」
俺に右手を前に出すのは、伯爵様こと、俺の本当のお父さんだ。
未だどう呼べばいいか分からずにいるが、お父さんと呼んでくれていいとの事で、貴族なのに格式に囚われない感覚はお母さんとの生活で培ったものだろうか。
現在、俺達『銀朱の蒼穹』には大きな試練が待ち受けている。
試練というか、まさか、お父さんが俺達『銀朱の蒼穹』に入りたいとの事。
ミリシャさんと相談の上、お父さん達を味方と判断し、全員を『銀朱の蒼穹』のメンバーに認定する事にした。
つまり…………お父さんを隊長枠に入れるという話にまでなったのだ。
現在隊長になっている十人の中から、隊長の恩恵があまり必要ないシヤさんに降りて貰い、そこにお父さんが入り、育て親のアレスさんとシオンさん、お父さんの右腕のルブランさんと左腕のシシロさんもメイングループに入った。
それによって、『銀朱の蒼穹』の主力は以下の通りとなる。
最強戦力として、剣聖フィリア、獣王カシアさん、アサシンロードのルリくんとルナちゃん、剣聖のアインハルトさん、剣聖のルブランさん、特殊職能の爆炎騎士のお父さん。
次点で、魔導士カール、拳法家アムダさん、アサシンのイロラさん、上級騎士の五騎士の五人、アサシンのアレスさん、アサシンのシオンさん、上級騎士のシシロさん。
特殊枠として、指揮官のミリシャさん、交渉者のシヤさん、魔女のアンナ。
上記が一応幹部となっている。
それに続いて、弐式リーダーのメイリちゃん、参式リーダーのエルロさん、肆式リーダーのカーターくん、伍式リーダーのアルハくん。
弐式メンバーはほぼ全員が魔導士とローグ、回復士で約900人。
参式メンバーは拳法家、ローグ、獣人で約30人。
肆式メンバーは魔導士、ローグ、武道家か、もしくは、アサシン、武道家、回復士で約60人。
伍式メンバーは職能こそアサシンなどになっているが、基本的には戦わず、物流の調整役などをしていて、肆式のメンバーと同じ仲間達で約450人。
そして、今回新しい仲間になり化け物集団が出来た。
彼らは
全員で200人いて、全員が飛竜を操る高い技術を持ち、剣術にも秀でている。
そんな彼らの職能を全員魔導士、回復士、付与術師にして上空から魔法を放ちながら被弾した飛竜を回復させつつ、能力を上昇させる最凶の戦力となっている。
まあ、その現状を見たお父さんとルブランさんはその場で膝から崩れたけど。
「これで『銀朱の蒼穹』戦力を再分担出来たよ。陸式は50人がアクアソル王都、50人がリントヴルム伯爵領の防衛に当たって貰い、100人はこのまま伯爵様が率いて南下して頂きます」
「「異議なし」」
お父さんとルブランさんも承諾。
これからアポローン王国と一戦交えることになると思う。
俺達は飛竜に馬車を掴んで貰い、空の旅を楽しんだ。
向かっている間、ラビが少し寂しそうにしていたのはとても印象的だったが、すぐにフィリアが撫でてあげるとご機嫌になった。
最近フィリアとラビが一緒にいるのをよく見かけるけど、正直、とても似合っている気がする。
「おいソラ、顔に全部書いてあるぞ」
「へ?」
「戦争前だというのに、彼女にニヤニヤするなんてな~」
「ッ!? か、カールだってミリシャさんを見てニヤニヤしてたじゃないか!」
「お~ソラも言うようになったな!」
馬車内が笑い声で包まれた。
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