第133話 ソラと両親と伯爵
「お久しぶりです。ソラ様」
「伯爵様。これ以上はおやめください」
上空から降ってきた二人は、数えるくらいしか会った事がない両親だった。
両親はいつもギャンブルで家にいなかった。
帰って来ても二人とも寝ているか、酒を飲んでギャンブルの話をしていたのが脳裏に焼き付いている。
そんな両親が、ここに来た事。
そして、二人が
さらに…………お母さんが俺に向かい「ソラ
「アレス!? シオンは今なんて言った!?」
「伯爵様、こちらは正真正銘のソラ様です。剣を納めてください」
「ッ!? どうしてソラがここにいるのだ!?」
「全てお話します。ソラ様もそれでいいですね?」
「お父さん? お母さん? どうして俺に様を付け…………」
「ソラ様。私達は貴方様の両親ではありません。本日まで騙していた事、全てお話します。ですからここは一度剣を引いては頂けないでしょうか?」
「………………」
俺は両親ではなく伯爵を見つめた。
その伯爵の両目には大きな涙が浮かんでいた。
◇
「ソラ!」
「フィリア!」
俺からの急な停戦指示により、戦場は混乱を極めたみたい。
フィリアは戦いの最中に相手を残し、ここに真っすぐ走って来てくれた。
現在、俺はテントの中で伯爵と両親と静かに座って、時を待っているところだ。
「ソラ様。そちらは?」
「俺の許嫁です」
「たしかセグリス町で生まれた剣聖ですね?」
「はい。フィリアと言います」
「お美しい方です。ソラ様にはぴったりの許嫁様です」
お父さん…………いや、ずっとお父さんと思っていたアレスさんが笑顔で話す。
「ソラ? こちらの方々は?」
「えっと……俺も全く状況が分からない。ただ一つだけ言えるのはこちらの二人が…………俺の両親
「!?」
フィリアの瞳が大きくなり、両親を見つめる。
二人も笑みを浮かべて、小さく頭を下げると、フィリアも焦りながら頭を下げる。
「これから本当の事を話してくれるみたいなので、ここにみんなが集まるまで待っているんだ」
「そっか…………分かった」
フィリアの視線が奥に座り目をつぶっている伯爵に移る。
そして、俺を見つめ直す。
何かを悟ったようで、不安げな表情で俺の隣にくっついてくる。
暫くして、ミリシャさん達と共にメンバー全員がテントの中に入って来た。
それと共に、伯爵側のルブランさんも入って来る。
「初めまして、アクアソル王国の司令官をしておりますミリシャです。そして、ソラくんは
「ソラが……リーダー…………」
伯爵が小さく唸る。
「人もそろったようですので、アレス様でしたね? 此度の戦いを止めた理由を教えてください」
ミリシャさんの言葉にアレスさんが座っていた椅子から起き上がる。
その場にいる全員をゆっくり見渡して、最後に視線が俺に刺さる。
「まず、我々の紹介からしましょう。俺はアレス。こちらはシオン。リントヴルム伯爵様の影であり――――――伯爵様のご令息様であるソラ様を守る役目を携わっておりました」
「え? ご令息?」
思わず口に出した。
お父さんが何を言っているのか、今でも理解できない。
二人は間違いなく俺の両親なのに…………どうして?
「ソラ様。我々は貴方様が大きくなり安全が確保されるまで見守る役目でした。貴方をずっと影から見守っておりました。ですが、最近になり『銀朱の蒼穹』が全員いなくなってしまったため、見失ってしまいました。だから伯爵様への連絡も遅れたのです。
『銀朱の蒼穹』が発足した時点で伯爵様はソラ様を囲うべきか悩まれておられました。ですがリントヴルム家に戻すにはまだ早すぎると判断してしまいました…………それがまさか、『銀朱の蒼穹』がこの戦争の裏側に存在しているなどと…………レボルシオン領から『銀朱の蒼穹』全員がいなくなった事が不安となり、急いで帰って来たらこの状況だったのが我々の現状です」
「ま、待ってください! そもそも、お父さん達が俺の両親ではないという話は!?」
「…………」
お父さん――――アレスさんが後ろを向いて、伯爵を見つめる。
じっと話しを聞いていた伯爵が目を開ける。
真っ赤な瞳と髪。
俺と全く同じ色の髪と瞳の色。
その視線が俺に向く。
「俺はリアム・リントヴルム。亡き妻はイザベラ・リントヴルム………………俺は間違いなくお前の父だ」
伯爵の言葉に噓偽りがない事くらい、その瞳を見ていれば分かる。
その瞳に大きな涙を浮かべている伯爵の姿に、自分が伯爵の息子で、元々両親だと思っていた二人は伯爵の命令で俺をずっと守っていて…………俺の母親は既に亡くなっていて………………。
ああ…………そうか…………本当の事なんだ。
アレスさんとシオンさんは、俺を目立たせずに育てるためダメ親を演じていて、影から見守っていたそうだ。
しかし、俺が表舞台に立ってしまい、伯爵がある計画を急いで進める事になった。
それがアクアソル王国を占領し、アクアソル王国を伯爵の支配下にして、俺をアクアソル王国に移住させる――――そういう計画だったと
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