第75話 一軍の実力

 俺達は二度目のハイオーク戦にやってきた。


 メンバーは『銀朱の蒼穹』のメンバー。


 俺、フィリア、カール、アムダ姉さん、イロラ姉さん、ミリシャさん。


 そして、フィリアとミリシャさんの意見によって『銀朱の蒼穹』のメンバーに加えられたカシアさん――――――さらに、ルリくんとルナちゃん。


 ルリくんとルナちゃんが授かった職能は『アサシンロード』という職能だ。


 その職能がどういう職能なのかは知らなかった。


 理由としては『アサシン』という言葉は、全ての職能中でも珍しいモノであり、上級職能『アサシン』ですら珍しいのにも関わらず、最上級職能『アサシンロード』となれば、その時代に一人いるかいないかと言われている。


 だから『アサシン』は特殊職能の中でも最も珍しい職能として――――そして、その力から『暗殺』を生業にしている『暗殺者』達が最も願望する職能だという事を知った。


 ただ、『暗殺』と聞いた時、俺の中で最も着目したのは、『人』ではない存在も『暗殺』が出来るのではないかと思えた。


 ルリくんとルナちゃんを交えて、その話をした時にとても嬉しそうに笑ってくれたのが印象的だった。


 フィリアの強い推薦もあり、二人はこれから俺達と一緒に戦う事になり、こうして一緒に狩り場に同行したのだ。


 職能を授かってから数日、ルリくんもルナちゃんもレベル上げを懸命に励んでいた。


 レボルシオン領のダンジョン『石の遺跡』二層はレベル上げにとても適している。


 そもそも周りの狩人パーティーが殆どいたいので、狩場の獲物が溢れている。


 全ての狩場での魔物は、狩場独特な自然の力で自動的に生み出される。


 生まれた魔物が一定数に辿り着くと、あとは生み出されない仕組みになっている。


 ただ、生み出される時間に差異があり、全ての狩場、魔物の種類によってその速度は違い、弱い魔物であればあるほど速い。


 冒険者ギルドではこれを『リポップ再出現』と呼んでおり、各魔物のリポップ時間を調べていたりする。


 その代表的な例として、俺達が挑戦したかったセグリス沼地で戦った『レッサーナイトメア』。


 倒してから三日後に出現するフロアボスとして有名だ。


 それを『リポップ72時間』と言う。


 話を戻して、『石の遺跡』二層で出現する『ハーピィ』はCランクでも弱い・・方だ。


 ただ、弱いのに狩りにくいという欠点があるので、あまり好んで狩りに来るパーティーがいないのだ。


 この事が俺達に取っては最もアドバンテージとなる。


 俺の『経験値アップ③』により、ハーピィだけでもレベルが最大8まで上げられる。


 これが嬉しい誤算で、この階層の魔物を俺達だけで独り占めしてしまうと、数日でレベルが8まで上がる事が立証出来たので、それを使いパーティーメンバーのレベルを早速8まで上げてしまったのだ。




 現在、俺達の前には一際大きいオーク、ハイオークが待ち受けている。


 以前来た時のハイオークの強大な威圧感は思っていた以上に感じない。


 それも心強い味方が沢山増えたからなのだろうか?


 以前は大勢で来たけど、今回はそれよりも少数で来ている。


 でも、前回より確実に強くなったパーティーメンバーと俺ならそれほど強いと感じないのが現状だ。


「ルー! 周りのオークは任せた!」


 ミャァアア!


「ラビは防衛と、例の攻撃の対処をお願い!」


「ぷう!」


「ルリくんとルナちゃんは闇に紛れて援護。最初のアタックはカシアさんとフィリア!」


「「「「はい!」」」」


 受け答えしたルリくんとルナちゃんがその場から消える。


 あまりにも自然な消え方に、最初からいなかったのではないかと錯覚する程だ。


 『アサシンロード』はそれほどまでに強い職能なのだろう。


 カシアさん達を見つけたハイオークが咆哮を上げる。


 グルァアアアア!


 大地を震わせる大声にも関わらず、俺は全く恐怖を感じない。


 走って来るハイオークにより、周囲の地面が揺れ始める。


 それと同時期にフィリアとカシアさんの攻撃が両足に直撃する。


 ハイオークの大きな包丁型大剣が振り下ろされる所に、カールの特大氷魔法が包丁に直撃する。


 その勢いから大剣が振り下ろされる事なく、後方に倒れ込む。


 フィリアとカシアさんが奥義を繰り広げ、ハイオークにダメージを蓄積させていく。


 倒れたハイオークの顔面部分にはアムダ姉さんとイロラ姉さんの奥義で傷を増やして行く。


 予定通りの攻撃だったが、思っていた以上に火力が強かったようで、ハイオークから真っ赤なオーラが出溢れる。


「退避!」


 メンバーはハイオークから速やかに離れる。


 いつでも離れるように準備しているからこその速さだ。


 ハイオークの爆炎トルネードが一人空しく周囲に響いた。


 空間を揺らすような爆炎はそのまま空の彼方に消えて行く。


 しかし、その爆炎は消える事なく、そのままハイオークに降り注いだ。


 グルァアアアア!


 ハイオークの悲痛な叫びが響く。


 もしかして、ハイオークって火魔法に弱かったりするのかな?


 爆炎が消え、ボロボロになったハイオークが見える。


 その時。


 ハイオークが頭部を狙って移動する影が二つ。


「「アサシンロード奥義、シュティレ・アンピュテイション」」


 二つの影が目にも止まらぬ速さでハイオークの頭部を交差して、ルリくんとルナちゃんの静かな声が聞こえた。


 二人が地面に着いて、こちらにゆっくり歩いて来る。


 その姿を見たハイオークが、二人を目掛けて大剣を持ち上げる。


 しかし、ハイオークの大剣が振り下ろされる事はなかった。


 ――――既にハイオークの頭は胴体から切り離されて、地面に転げ落ちたからだ。

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