第152話 君が選ぶのはどれ? みんなで決めよう最強のてぇてぇを──ッ!!
『リスナーさんたちの~、推してぇてぇはどれだ~──ッ!?』
『最強のてぇてぇを決めるぞ──ッ!!』
『ということで~、長々とやってきたラブコメ主人公企画だけど~、最後にみんなの推してぇてぇを決めようじゃないか~』
『前回までやっていた爆弾解除ゲーム。そして! 今回行うのはそのものずばり《愛してるよゲーム》──ッ!! まさしくラブコメ主人公企画の幕を下ろすのにふさわしいゲームと言えよう』
うっわ、盛り上がりエグくない!?
同接人数が5万人越えって……。
何があったらそんなに人が集まるの!?
というか、この中で《愛してるよゲーム》なんてやるの!? 正気!?
しかもこっちはオフコラボだから、対面しながらなんですが!?
「……すぅ、はぁー」
落ち着け、俺。
同接人数がすごいのは《企画屋》の企画なんだから今更だろ。
こんなのにビビってる場合じゃないだろ。
「アズマ。緊張してるの?」
「戸羽ニキは余裕みたいですね」
「僕にとってはほとんどお遊びみたいなものだしね。まあ、アズマが本気で僕に『愛してる』って言って来るなら、その時はちゃんと考えないこともないけど?」
「いやいや、何言ってるんですか」
「冗談。でもほら、君が緊張してたら彼女たちはもっと緊張しちゃうんじゃない?」
そう言いつつ戸羽ニキが示す先には、俺たち同様に待機中のカレンちゃん、ナーちゃん、ムエたんがいる、んだけど……。
「あれは、緊張してるって言うんですかね……?」
「気合い入れてるのかも……?」
なんてして男2人でコソコソ喋るぐらいには、何て言うか雰囲気が異様だった。
「………………」
カレンちゃんは椅子に座って一点を見つめて微動だにしないし。
「……。~~!! ──ッ」
ナーちゃんはブツブツ言ってたかと思えば急に悶えてるし。
「──ッ。~~♪ ~~~♪」
ムエたんは身振り手振りをしてたかと思えば急に踊り出すし。
「…………」
「…………」
俺と戸羽ニキが揃って無言になるぐらいには、話しかけ難い雰囲気を醸し出している。
昨日までは、そりゃ緊張はするだろうけど、企画なんだし和気あいあいとした雰囲気で楽しく盛り上がるとかするのかなー、とか思ってたんだけど、そんなことはなかったね。
でも、なんか覚えがあるんだよね。この張り詰めた雰囲気。
なんだっけ……?
「ねえ、アズマ。僕ちょっとトイレに行って来ていいかな?」
「いいわけないでしょう。もう配信始まってますし、トップバッターは戸羽ニキですよ?」
「あ、じゃあそれ終わったら僕は失礼するということで」
「……逃げようとしてません?」
「まさか。そんなね? 僕がアズマを置いて逃げるなんてそんなそんな。……でもこの部屋にはちょっといたくない」
「……それはわかりますが。でも大丈夫ですよ!! みんな配信者ですし、ミュートが解除されたらいつも通りの雰囲気になりますって」
「……本当に?」
「……多分」
え、さすがにそこは大丈夫だよね!?
こんな雰囲気で配信に出たら、お通夜確定だよ!?
ラブコメ企画なんてものとは真逆の空気感になるよ!?
いやまあ、それがラブコメ的修羅場だ! って言われたらそれまでなんだけどさ!!
あ、というか修羅場で思い出した。この空気あれだ。ブイクリのライブ後にカラオケに行った時の空気とそっくりなんだ!!
いやぁ、あの時もしんどかったけど、今日も今日でしんどいなぁ。はっはっはっ。
って、笑ってる場合じゃないんだけどね……。
『さてさて~。それじゃあ~、まずは爆弾解除ゲームを一発でクリアして~、《愛してるよゲーム》のトップバッターを飾るのはこの人~、戸羽丹フメツ~!!』
とかなんとか言ってる間に紹介始まったし!!
「はい。どうもみんな、こんばんは。戸羽丹フメツです」
『せっかくだから意気込みのひとつでも聞かせてもらおうか』
「意気込みって言われてもなぁ……。あ、ほら! この企画に参加する時に言ったじゃん。『アズマを奪いに来た』って。あれが意気込みかな。あと、この間アズマとの《歌ってみた》も出したので、みんな聞いてね~。よろしく~」
うわぁお。戸羽ニキが緩い雰囲気で始めた分、カレンちゃんたちが今の雰囲気のまま喋り出したら空気が凍りそうなんだけど……、大丈夫だよね?
『それじゃあ~、次~。二番目は~、安芸ナキア~』
「!? うぇあ──ッ!?!?!?」
『……何をしてるんだ、お前は』
「な、何よ!! 急に声をかけてきたそっちが悪いんじゃない!!」
『自己紹介してもらうと伝えていただろう』
「そ、そうだったかしら!? 記憶にないわね!!」
『ナキアさ~、緊張してるの~?』
「そそそそそんなことあるわけないじゃない──ッ!!!!」
『……ということで、ド緊張している安芸ナキアだ』
「してないって言ってるでしょ──ッ!?」
あ、うん。大丈夫だこの感じなら。
空気が凍るとかそんな心配一切いらなかったね。
ありがとう、ナーちゃん。とても安心出来たよ。
『それじゃあ~、次だね~』
「え、私の紹介ってこれで終わりなの!?」
『言いたいことがあるならどうぞ~?』
「………………………………………………。頑張るわ」
あの、ナーちゃん?
チラッとこっちを見たのはどういう意図?
そんなチラチラ見られても今は何も言えないよ!?
『はい~。ということで~、次は~、アマリリス・カレンちゃん~』
「は、はい!! アマリリス・カレンです!!」
『こっちもこっちでわかりやすく緊張してるな。大丈夫か?』
「大丈夫です!! 任せてください!! アズマさんなんかメロメロにしちゃいますから!! はい!!」
『……意気込むのはいいが、ほどほどにな?』
「はい!! ありがとうございます!! 大丈夫です!!」
……ひとつも大丈夫じゃなさそうだけど。で、カレンちゃんもカレンちゃんで何でこっちを見て来るの?
だからそんな視線を向けられても何も出来ないってば──ッ!!
いやぁ、でもなぁ。ナーちゃんやカレンちゃんの緊張具合を見てると、こっちまで緊張してくる。
というかまあ、俺の場合は別の意味でも緊張してるんだけどさ!!
戸羽ニキや《企画屋》の2人に、この企画が終ったら告るってタンカ切っちゃってるし。今更やめるつもりは全然ないんだけど、それにしたってね? ほら、どうしたって緊張するじゃん──ッ!! そんなの!!
『それじゃあ~、最後はこの人~、鳳仙花ムエナちゃん~』
「はーい!! 鳳仙花ムエナです!! 今日はよろしくお願いします!!」
おお、さすがはムエたん。
同接5万人なんて物ともしない場慣れ感。
やっぱり違うよな。さすがだ。
『爆弾解除ゲームでは随分と手間取っていたな』
「あはは~。アタシってああいうゲームは苦手みたいで。でも大丈夫!! アズマさんとは一緒に歌の練習もしてきたし、何よりトレーナー兼プロデューサーだからね!! 今まで見たことのないアズマさんの魅力を、みんなにたくさん見せちゃうよ!!」
……あの、ムエたん?
視線を送ってくるどころかバッチリとウインクされてもね?
さっきから言ってるけど、今は何も出来ないからね?
『ということで~、もちろん最後はこの人~。東野アズマ~──ッ!!』
あ、俺の番か!!
よっし、気合入れていこう!!!!
「はいどうも!! 今日も皆さん配信を見てくれてあざまるうぃーす!!!! 東野アズマです!! よろしくお願いします──ッ!!!!!」
『いつになくテンション高いな。どうした』
「どうしたもこうしたも、今日何をやると思ってるんですか! 《愛してるよゲーム》ですよ!? そんなのテンション上げないとやってられないですって!!」
これは冗談でも何でもなくガチでそう思ってる。
というか、普通に罰ゲームの類だと思ってる。
『……つまり緊張していると』
「普通に考えたら炎上しますからね。ヒヤヒヤもんですよ」
『みんなとの仲が冷え冷えだってアピールすれば~、燃えないかもよ~?』
「なるほど!! てぇてぇなんてなかったと、冷え切った関係だとアピールするわけですね!?」
『そうそう~、ここで裏での関係性を見せれば~、きっと大丈夫~』
「いやいや、やめてくださいよ! そういうこと言うの!! 普通に仲いいですからね!?」
『つまりはてぇてぇだと?』
「それは今日の配信を見て皆さんが判断してくれますよ。ぶっちゃけ、俺だってこの配信がどうなるかわからないんですから!!」
『それはズマちゃんの腕次第だよ~。存分にてぇてぇを見せつけて欲しいよね~』
『その通りだ。やはり企画の締めだからな。存分に盛り上げてくれ』
「わっかりました!! 死ぬ気で頑張ります!!」
……炎上しない程度に。
『ということで~、ラブコメ主人公企画のラストを飾る~』
『《愛してるよゲーム》を開始する──ッ!!!!』
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