第151話 俺たちの目指す先はどこなんだ──ッ!?!?

『ねえ、アズマ』


「なんですか、戸羽ニキ?」


『爆弾の解除、出来ちゃったんだけど』


「出来ちゃいましたね」


『まだ配信初めて10分も経ってないんだけど』


「一回目で解除出来ちゃいましたからね」


『……どうしよう?』


「……どうしましょうね」


 気まずい!!

 これは逆に気まずい!!

 カレンちゃんやムエたんみたいに失敗が続くのも気まずいけど、一発成功はそれはそれで気まずい!!


『このゲームもうちょっと難しいと思ってたんだけどな』


「おかしいですよね。他の人たちとやった時はこんなにスムーズにいかなかったんですが」


『もうさ、アズマ。これはそういうことだよ』


「? どういうことですか?」


『最強のてぇてぇは僕らってこと』


「俺たちを指して“てぇてぇ”って言うのやめません!?」


 それは何て言うか、色々と語弊があるよね!?

 今更かもしれないけどさ!! やっぱりなんか違うと思うんだよ!!


『え、じゃあ、アズマ的にはどんな感じなの? 僕らの関係って』


「……最強の2人?」


『アズマって自分のこと最強って思ってるんだ』


「いや! それぐらいの気構えが必要って話ですよ! やっぱりVTuberたるもの常にそれぐらいの気持ちを持ってないといけないって話です!!」


『まあまあまあ。そうだよね。そういう気持ちを持っておくのは大事だよね』


「いやいや、なんでそんな反応なんですか。戸羽ニキはそういうの無いんですか?」


『あるに決まってるじゃん』


「あるんじゃないですか。さすがトップVTuberは違いますね」


『何、他人事みたいなことを言ってるのさ。アズマもこれからそのトップVTuberの仲間入りをしていくんだよ』


「それはそうなれたら嬉しいですけど、俺はまだまだですよ。もっと頑張っていかないと」


 チャンネル登録者数も伸びてはいるけど、戸羽ニキの背中はまだまだ遠い。

 本当にすごいよ、この人は。今だって伸び続けてるし。

 ……冷静に考えると、そんな人からスカウトしたいって言われてるのって、めちゃくちゃすごい話だよな。全然実感ないんだけどさ。


『つまり、今日ここから僕らの最強無敵コンビの伝説が始まるってわけだね』


「誰もそんなこと言ってませんけど!?」


『? すでに伝説は始まっていたって言いたいってこと?』


「そんなことも一言も言ってませんけど!?」


『どういうこと? アズマが何を言いたいのか全然わかんないんだけど?』


「それはこっちのセリフです!!」


『だよね。今なんとなく喋ってただけだし』


「そういうとこ! 戸羽ニキって本当にそういうところありますよね!!」


『どうしたのさ、アズマ。いきなり大声出して。あ、そっか。爆弾が無事に解除出来て安心してるってこと?』


「また無理矢理に話を繋げましたねぇ!?」


『脈絡はあったよ』


「どこに?」


『配信タイトルに』


「確かに!!」


 ちなみに今日の戸羽ニキの配信タイトルは、『【爆弾解除】大丈夫だよ、アズマ。僕に任せて』というものなんだけど、どうせこれもノリで付けたんじゃないの!?

 思わず『確かに!!』とか言っちゃったけど、絶対にそんな伏線だなんて考えてないよね!?


『さてさて、それじゃあここらでひとつ告知でもしておこうか』


「え、この流れでですか……?」


『だってこんなにスムーズにクリア出来るなんて思ってなかったし』


「まあ、そうですね。言っちゃいますか」


『うん。で、その後はダラダラEX.でもやろう』


「これから告知なんですから、もうちょっと盛り上げません!?」


『大丈夫。任せてよ、ちゃんと盛り上がるから』


「どこが!? どこにそんな雰囲気あります!?」


『僕のイメージの中に』


「妄想って言うんですよ、そういうのは!!」


『はい。ということで、かねてから練習配信も見てもらってた僕ら《L⇔Read》の歌ってみたが、この後22時からプレミア公開されます!!』


「本当にこの流れで告知しちゃった!?」


『配信でもボチボチ言ってたと思うけど、僕らにピッタリな楽曲なので、ぜひ聞いてみてね~。ほら、アズマからも何か言ってよ』


「あ、はい。えっと~、今回サムネ含めてイラストはカレンちゃんとナーちゃんが描いてくれてます。最高のイラストになってるので、そっちもぜひ注目してください」


『そう考えるとアズマって酷い男だよね』


「どういうことですか!?」


『他のカップリングのイラストを、ヒロインたちに描かせたんでしょ?』


「違いますから! イラストについては2人から『協力したい』って連絡を貰いましたから!! そんな人をクズ男みたいに言わないでくださいよ!!」


『クズとは言ってないよ。酷い男だなぁって言ったんだよ』


「どっちにしろ誤解を招きますから!! 大体そんなこと言ったら、戸羽ニキだって主人公をヒロインたちから奪おうとしてるじゃないですか」


『しょうがないよ、真のヒロインは僕だって証明されてしまったし』


「いつ!? いつそんな証明されました!?」


『さっき。爆弾解除を一発で出来たし』


「それは単純に戸羽ニキのゲームIQが高いからですよね!? あと、俺がこれまで3回もやってきたおかげでゲームに慣れてたって言うのもあります!!」


『照れてるの? アズマ』


「そんなわけない!! そんなわけないじゃないですか!!」


『みんな。どう思う? アズマは照れてるだけだって思う?』


「リスナーに確認するのはやめてください!!」


 どうせ悪ノリするに決まってるんだから!!

 あ、ほら。早速『アズマも素直じゃないから』とかコメントしてるリスナーがいるし!!


「せめて相棒とか、そういう感じにしましょうよ。ヒロインは絶対に違いますって」


『へぇ、相棒か。そんな風に思ってたんだ』


「ヒロインよりはそっちの方が近いって話ですからね!?」


『まあまあ、アズマがどうしてもって言うなら、しょうがないよね。僕らは相棒ってことにしておいてもいいけど?』


「なんですかその、微妙な上から目線は」


『だってほら。僕ってトップVTuberだし』


「ここでまさかのマウント取ります!?」


『僕と相棒だからって、僕と同格だと思い上がっちゃうとアズマも色々大変なことになりそうだし、僕なりの愛情だよ。コンビ愛ってやつ』


「無理矢理いい風に言おうとしてますよね!?」


『アズマがいい風に捉えよとしてるだけじゃないの?』


「いやいやいや!!!! 絶対に違います。それは絶対に違いますって!!」


『てな感じで、息の合ったボケとツッコミも出来る僕らの初《歌ってみた》を、みんなもぜひ聞いてね~』


「よろしくお願いします~。では、本日の配信は、」


『僕、戸羽丹フメツと』


「俺、東野アズマでお送りしました~。って、なんですかこの流れは!?」


 コントかよ──ッ!!


『アズマ。閃いたよ』


「絶対にまたろくでもないことをノリだけで言おうとしてますよね!?」


『VTuber界最強のコンビとして、コントを極めよう』


「ほらぁ!! やっぱりノリだけで喋ってる!!」


 というか、地味に考えてることが一緒だってわかって、なんかムズムズするんだけど!?


『大丈夫だよ、アズマ。僕らならいける。VTuberナンバーワンの称号を手に入れよう!!』


「他にコント芸をやってる人たちがいないから、何もしなくてもナンバーワンですけどね」


『チート能力持ちってこと?』


「それはラノベでよくあるやつ!!」


 また話が飛躍した!!

 ノリだけで喋ってる時の戸羽ニキについて行くのは、正直大変なんですが!?


『転生したら常勝無敗の最強コンビだった件』


「それは絶対に能力バトル物!! コント要素が微塵もなくなりましたが!?」


『大丈夫だよ、アズマ。常勝の『勝』の字を『笑』にすれば、常笑無敗の最強コンビになるから』


「余計わけわかんなくなりますって!! しかも常に笑いながら無敗って、結構サイコパスじゃないですか!? 笑いながら敵を蹂躙してる絵しか思い浮かばないんですが!?」


『よし、この後のEX.の縛りはそれにしよう』


「は?」


『敵を倒すときは常に笑う縛り』


「最っ低のプレイヤーじゃないですか!!」


『クラウンを獲ったら、次のマッチは常に笑い続ける縛り』


「新手の腹筋トレーニングですか? 酸欠で死にますよ!?」


『ねえ。やっぱり僕らは最強のコントVTuberを目指さない? アズマとならやれる気がするよ!!』


「だからいつまで言ってるんですか!!」


 あ、ここだな。

 そんな直感があった。そしてそれは多分正解だった。


『「はい、ありがとうございましたー!!」』


 なんて締めの挨拶が戸羽ニキとバッチリ重なったからね!!

 いや、絶対にコント系VTuberなんて目指さないけどね!?

 アイドルだけでも意味わかんないだから、これ以上要素を増やしたくないし!!

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