第147話 クライマックス前に訪れるもの。それは最大の試練。
『カップリング論争に終止符を~。《最強てぇてぇ決定戦》開催決定~』
『いよいよ、このラブコメ企画もクライマックスということだな』
『今日は簡単なルール説明と~、みんなの意気込みを聞いていくよ~』
『ということで、どうだ? てぇてぇをすることに定評のある東野としては』
「なんですか、その定評! って、一切反論出来ないじゃないですか!?」
『ノリツッコミだ~。ズマちゃんも腕を上げたね~』
『自覚があるようなら問題はない。ここで《え、なんだって?》などと言われたら、きっと台パンの嵐だったぞ』
「こわ。袈裟坊主さんってそんなに殺意高い人でしたっけ?」
『いや、俺ではなく彼女たちが』
『ちょっと袈裟坊主。私たちを何だと思ってるのよ!』
『そうですよ。わたし、これまでの配信で台パンなんてしたことありません!』
『そうだそうだー。それにアタシはトレーナー兼プロデューサーだから、てぇてぇ枠ではないと思いまーす』
『なんで『彼女たち』なのさ。僕がいること忘れてる?』
「むしろ袈裟坊主さんが台パンされそうな勢いですが?」
『うむ。目論見が違ったな』
『ということで~、《最強てぇてぇ決定戦》に参加する皆さんだよ~』
「って、戸羽ニキも参加するんですか!?」
『するに決まってるじゃん。僕と君は2人でひとつなんだから』
「いやいやいや。言い方!! ユニットね。一緒のユニットで《歌ってみた》を出すって話ですから!! そこ!! ナーちゃん!! 変な反応しないでください!!」
『ふん。突然供給してくるそっちが悪いと思うわ』
「どういう開き直りですか!? やめてください。あなたに開き直られると誰も勝てないんですから!!」
『お~、早速てぇてぇが始まってるね~』
「今のをてぇてぇと呼ぶんですか!? そんなこと言ったら、会話したら即てぇてぇになりますが!?」
『なるほど。さすがはてぇてぇに定評のある東野だ。喋れば即堕ちさせられると。そういうことだな?』
「どういうことですか!? 意味わかんないんですが!?」
ヤバい。あの夜は2人が頼もしく思えてたのに、今は心配でしかない。
大丈夫?
本当に企画を2人に任せて大丈夫だった?
『え~、ということで~、改めて参加者の紹介です~。まずは~、アマリリス・カレンちゃん~』
『あ、はい! アマリリス・カレンです! 何をするのか聞かされてないので怖いですが、頑張ります!!』
『安心して~。ちゃんとズマちゃんのノルマはこなせるようにしてるから~。一日一カレ虐だったよね~?』
『そんなノルマありませんから!!』
「さすがは安心と信頼の《企画屋》ですね。頼もし過ぎます」
前言撤回。やはり《企画屋》は頼りになる。
やっぱり一日一回はカレンちゃんの悲鳴を浴びないと。
『そんなところで頼もしさを覚えないでくださいよぉ!! 逆にわたしは不安になったじゃないですか!!』
『なるほど。確かに東野が浴びたいと言うだけはあるな。いい悲鳴だ』
『……うわ~。袈裟坊主が言うと変態っぽい~』
『わたしも今ゾッとしました……』
『なぜだ!? 東野は許されてるのに!!』
『それは~、やっぱりてぇてぇだからじゃないかな~。ということで~、次は~。ズマちゃんのてぇてぇと言えばこの人~、安芸ナキア~』
『……何よ、その紹介は』
『事実~』
『無いわよ! そんな事実は!!』
『じゃあ~、辞退する~?』
『……そうは言ってないじゃない』
『東野。今のを通訳するとどうなるのだ?』
「なんで俺に聞くんですか!?」
『言わせたいの~?』
「……次、行きましょう?」
『ちょっとズマっち!! なんで私を無視するのよ!!』
「そこで突っかかって来るから色々言われるんですよ!?」
『あんたが無視するからじゃない……。バカ』
「えぇ~……」
『これもこれでノルマなのだろうな』
『一日一デレ的なね~』
『そんなノルマ無いわよ!!』
『あ~はいはい~。そうだね~。そうだよね~。じゃあ~、次行ってみようか~。鳳仙花ムエナちゃん~』
『はい! 鳳仙花ムエナです! トレーナー兼プロデューサーとして、うちのアイドルの恋愛力をアピールしに来ました!!』
『……アピールできるほどあればいいけど~』
『そうだな』
「人をラブコメ主人公に仕立てといてその言い草はなんですか!?」
『ラブコメ主人公って恋愛力は低いと思うんだ~』
『主人公補正というものを知っているか?』
『それをアタシがアイドル力に昇華しちゃうよ! 頑張ろうね、アズマさん!!』
「あ、はい」
『ぶぶ~。それはラブコメ主人公の返答だよ。アイドルならそこで、『君が一緒なら大丈夫だよ』ぐらいのレスは出来ないと!』
「そんな瞬発力ありませんが!?」
『も~、しょうがないなぁ。ビシバシ鍛えてあげるから、覚悟しててね!! アタシも頑張るから、二人三脚で頑張ろう!!』
「……ははは。お手柔らかにお願いします」
『ということで~、トリを飾るのはこの人~』
『大丈夫だよ、アズマ。ムエナちゃんに頼らなくても、僕が全部教えてあげるから』
「いきなりイケボで囁かないでください!!」
なんかゾワッと来たんだけど!?
『そんなに恥ずかしがらなくていいんだよ。なんせ僕らはユニットなんだから。ムエナちゃんが二人三脚なら、僕たちは一心同体じゃないか』
「いやいやいや! 何を言ってるんですか!?」
『……以心伝心の方が好み?』
「好みの問題じゃないですから!! というか、やめましょうよそういうの!! ナーちゃんが発情しますよ!?」
『私だけじゃないわよ! そうよね、ぴょんこ!!』
『……ノーコメント~』
『聞いたかい、アズマ。僕らを求める人たちはこの世界にたくさんいるんだ』
「ええ、この世は腐りきってるってことですね」
実際そういうファンアートをたまに見かけるんだよなぁ……。
いや、いいんだけどね!? 嬉しいんだけどね、応援してくれるのは!!
……ただまあ、ちょっと複雑な気持ちにはなるってだけで。
『ということで~、この4人のうち~、ズマちゃんと最強のてぇてぇなのは誰か~、雌雄を決する時が来た~』
『それぞれの組み合わせで2つのゲームをプレイしてもらい、存分にてぇてぇを見せつけてもらう。そして──ッ!!』
『ラブコメ主人公の行く末は~、いつだって《選択肢》によって決まるもの~。リスナーの皆さんによる投票で~』
『最強のてぇてぇを決めてもらう──ッ!!』
……もし、この《選択肢》が俺の気持ちと違うものだったとしても、俺は揺らいじゃいけない。
だって決めたじゃないか。
この企画が終わった時、俺はちゃんと気持ちを伝えるって。
戸羽ニキにもぴょんこさんにも袈裟坊主さんにも、言ったじゃないか。
ちゃんと気持ちを伝えたいって。
だから、例えリスナーからどう思われたとしても、俺の気持ちは真っ直ぐに持っていなきゃいけない。
『プレイしてもらうゲームの一つ目は~』
『2人で協力! 《爆弾解除ゲーム》だ──ッ!!』
またベタなものを持ってきたなぁッ!?
あれでしょ? 1人が爆弾の状態を伝えて、もう1人が相方のヒントを元にマニュアルを読んで指示を出すやつでしょ?
2人で協力して爆弾を解除していくって、まんま映画のクライマックスとかであるやつじゃないか!
『緊迫した空気でのドキドキ感に~』
『迫る爆破時間』
『最後に切るのは~、赤い線か青い線か~』
『定番だと言いたければ言うがいい。だが──ッ!!』
『定番だからこそ~、2人のてぇてぇ力が色濃く試される~!!!!』
いやもう絶対にそうだ。
絶対なんかの映画を見て思いついたでしょ──ッ!!
『そしてもうひとつのゲームは~』
『オフコラボでの《愛してるよゲーム》だ──ッ!!』
!?!?!?!?!?!?!?!?
はい!?
今なんて言いました!?!?!?!?
『本気ですか!?』
『待ちなさいよ!!』
『……正気?』
『僕は今からやってもいいけど?』
「戸羽ニキは黙っててください! じゃなくて!! どういうつもりですか!?」
『どうもこうも~、ただ愛を囁き合ってもらうだけだよ~』
『そう。やることは至極単純。てぇてぇ候補者が順番に東野と見つめ合って愛を囁き合う』
『見つめ合ってって言いました!?』
『そんなの無理に決まってるでしょ!?』
『あはは……。それはさすがに。ね?』
『ん? 何なら僕は抱き合ってやろうか?』
「だから戸羽ニキは黙っててください──ッ!!」
なんだよ抱き合ってって──ッ!!
じゃなくて、今はそこじゃない!!
「本気ですか!? 本気でやるんですか!?」
『私たちが企画で本気じゃなかったことなんてないよ~』
『何を今さら言っている。本気に決まってるだろうが』
『当日は私たちの口角が下がらなくなっちゃうね~』
『電車の中ではマスクが外せなくなるな』
「いやいやいや! そういうことじゃなくて!!」
『きっと天井を突き破っちゃうよね~』
『下げるために二次会でグロ映画の鑑賞会でもするか』
「だからそうじゃなくて!!」
『ということで~、何か騒いでる人がいるけど~』
『リスナーの皆は楽しみに待っていてくれ』
「ちょ──ッ!!」
『それじゃあ~、また次の配信で~』
『さらば』
終わった──ッ!?
この流れで終わった!?
え、マジで……? 本気で言ってる……?
あの2人、俺が何て言ったか覚えてる……?
どうして告白の直前に《愛してるよゲーム》なんてやらせるんだよ──ッ!!!!!!
抗議だ!! こんなの抗議しかない!!
今すぐチャットしてやる!!
『これで気持ちが揺らがなかったら~、本当に好きってことだよ~』
『俺たちからの愛の試練を、乗り越えてみろ』
ちくしょう!!!!
これだからエンタメに魂を売った奴らは──ッ!!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます