第137話 修羅場の後には地獄が待っている

『あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ──ッ!!!!!!!!!』


『ポチ。うるさい。──ふっ、ふふ、あはははははは!!!!!!』


『姐さんかて笑てるやん。ぶふ──ッ! こんなん、ぅくっ! 笑うやろ!? なあ、レオンハルト!? くっくっく。あっひゃっひゃっ!!!!!』


『ダ、ダメ、だよ。笑っちゃ。──くくく。く、ふふ!!!!』


『無理~。これは無理~。なんでこんなことになるの~。あはははははは~!!!!』


『こ、これは──ッ! さすがに無理というもの。ふっふっふ! くはははははっ!!!!』


『あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!! あ~、無理だって!! 何あれ!? い、いける!! いけるよ、ナキア!! 勝てるよ!!!!』


 ……うるさいぞ、ミラー配信組。

 そっちは盛り上がって楽しいだろうけどな、俺はそれどころじゃないんだよ──ッ!!!!

 待って待って待って!!

 ムエたん!? ムエたんちょっと待って!?

 何それ!

 今、鍋に何を入れたの!?

 食べれるよね!?

 それ、大丈夫なやつだよね!?


『昔、友達と闇鍋したんやけど、これよりはマシやったで!? あっひゃっひゃっ』


『闇を越えた料理ってこと? ふふ。じゃあ、カオスだ。カオスクッキング!! あははははは──ッ!! すっごいよ、あれ。何してるの!?』


『にーちゃん、大丈夫かな……?』


『ん~? ダメじゃないかな~? ま~、もうそんなことどうでもいいけどね~』


『東野。調理時間はあと13分だ』


「なんでそれを俺に言うんですか!?」


『トイレの場所を確認するぐらいの時間はあるだろうよ』


「それがあなたの優しさって言うんですか!?」


『南無』


「今さら坊主キャラを出したって遅いですからね!?」


 ああ、ヤバい。ヤバいよ……。

 何がトイレだ。違うだろ!?

 今俺に必要なのはトイレじゃない。胃薬だ!!


『アズマさん。ナキアの料理はちゃんと食べてね。あの子、すっごい頑張ったんだから』


「まっとうなこと言ってるミチエーリさんが逆に浮いてるこの状況って、何──ッ!?」


 最初はよかったんだよ、最初は。

 俺やカレンちゃん、ナーちゃんにムエたんがスタジオ入りしてさ、そりゃちょっと準備中の雰囲気が怖かったりはしたよ?

 でもさ、その後は順調に配信が進んでいったと思っていたんだよ──ッ!!

 でも違った!!

 気づいたら迫る地獄を見守る配信になっていたんだよ──ッ!!

 なんだよ、それ。一体なんなんだよ!?

 ムエたん!? 今何を入れたの!? ねえ!?


『調理時間は、後7分だな』


「──ッ!? え、嘘ですよね……?」


『あっひゃっひゃっ!! なんや~? アズマ。なんか変な反応してへんか? せ~っかく推しの手料理が食べれるんやから、もうちょっと楽しそうにしたらどうなんや?』


 エイガ。お前、覚えてろよ──ッ!!


『東野ちゃん。こういうのはどう? カレリンの料理を食べて先にお腹いっぱいになっちゃうの』


「それだ──ッ!!!!」


 そうだよ、料理配信だからって無理して食べる必要はないんだよ!

 カレンちゃんの料理をじっくりと堪能してお腹いっぱいになっちゃえば、それで地獄との対面は回避できるじゃないか──ッ!!


『ダメだよ』


「……ミチエーリさん?」


 何? その迫力は。


『アズマさんは絶対にナキアの料理を食べなきゃダメ』


『ん~。でも、お腹いっぱいになっちゃらしょうがなくない?』


『それでも食べなきゃダメ。ナキア、頑張ったんだから』


『それを言うならカレリンだって頑張ってるけど?』


 なんか、なんか……怖くない?

 ラナさんもミチエーリさんも、なんかいつもよりちょっと、いやだいぶ、迫力を感じるよ……?


『あ、見てよ東野ちゃん。カレリンの料理、すっごく美味しそうだよ』


「あ、ああ。そうですね。慣れた手つきですし、料理も美味しそうです」


『だよね~。だからさ、円那的にはあったかくて美味しいタイミングに食べた方がいいと思うんだよね~』


「確かに、……そうですね」


『ねぇねぇ、アズマさん』


「はい。なんでしょうか、ミチエーリさん」


『ナキアってさ、めちゃくちゃ料理苦手なんだよね』


「そう、でしたね。たくさん絆創膏貼ってましたし」


『そうだよ。今は手袋してるからわからないけど、ナキアの手って傷だらけなんだよ。なんでだと思う?』


「練習を、頑張ったからでしょうか」


『うん、そう。今日のためにすっごく練習してたの。だから、ナキアの料理を一番最初に食べてあげて欲しいんだよね』


「そう、ですね」


 なんか、なんか場外乱闘始まってない……?

 ラナさん? ミチエーリさん?

 ど、どうしたんですか?

 いつもみたいにみんなで楽しく盛り上がってくださいよ──ッ!!


「エイガはどう思いますか?」


『へぁ!? なんで自分に振るん!?』


「カレンちゃんの料理が美味しそうなのもわかりますし、ナーちゃんが頑張ってくれたのもわかるので、悩むんですよね。エイガだったらこういう時どうしますか?」


『ポチ』


『──ひぃ!?』


『狼森さん』


『──ひゃい!?』


「エイガ」


『って、お前がはっきりしないのが悪いんやないか──ッ!!!! 何しれっと自分を巻き込んでんねん。この唐変木ラブコメ主人公が──ッ!!!!』


 いや、だって。ねぇ?

 さっき散々笑った報いを受けて貰いたいじゃん?


『ポチ』


『──ひぃ!?』


『狼森さん』


『──ひゃい!?』


『『よく言った』』


『へ?』


『そうなんだよね。悪いのはハッキリしないどこかの誰かさんなんだよね』


『それ! どこかの誰かがハッキリすれば全て解決するんだよね』


 ……おや?


『本当にいい加減にして欲しいよね』


『いつまでグダグダやってるのって思うよね』


 おやおや?


『『はぁ~~~~~』』


 この配信には女性2人に盛大に溜息を吐かれるバカ野郎がいます──ッ!!!!


『とかなんとかやっているうちに、もう調理時間は終了するな』


『楽しみだね~。誰がどんな料理を出すんだろうね~』


「いや、見たまんまですよね!? さっきからずっと料理してる手元を配信し続けてましたよね!?」


『どこかの誰かはハッキリしないのに加えて~、配信を盛り上げる気もないの~?』


『空気が読めないから察することも出来ないということなのだろうな』


 おやおやおや。

 今日の配信には敵しかいないのかな?

 四面楚歌かな!?

 いやまだだ! 俺にはまだ慕ってくれる少年が──ッ、


『で、にーちゃんは誰の料理から食べるの?』


「レオンハルト!! 君だけは、君だけは信じていたのに──ッ!!」


『心配はしてるから』


「違うんですよ! そうじゃないんですよ!! 俺はそう言うことを言ってるんじゃないんですよ!! じゃあそうだ! リスナーさんたちの意見を参考にしましょう──ッ!!」


『あ、逃げた』


 レオンハルト──ッ!!

 一体いつからそんなことを言うようになったんだ!?

 あの頃のコミュ障だった君はどこに行ったんだ──ッ!!


「ていうか、なんですか逃げって!! 逃げてませんからね!? これは俺なりに配信を盛り上げようと思ってのことで──」


『人の力に頼らないと何ひとつ決められないんだ』


『そういう男って、正直どうかと思うよ』


「ぐ──ッ」


 ラナさんとミチエーリさんがマジで手加減してくれないんだが!?

 俺、そんなに悪いことしてます!?


「でもでも、ぴょんこさんだってコラボ配信前にリスナーさんたちに聞いてたじゃないですか!! 誰の料理が一番食べたいかって──ッ!!」


 だが、だが俺はめげない!!

 どれだけ辛辣なことを言われようとも!

 どれほど圧をかけらようとも!

 自分の信じた道を突き進む。それこそが俺のVTuber道だから──ッ!!


『そうやって~、ズマちゃんは~、人のせいにするんだね~。私は悲しいよ~』


 もう何とでも言え!!

 俺はやると言ったらやるんだ!!


「え~っと、ということでリスナーさんたちの意見に則って、食べていきたいと思います!! これからいつもの《選択肢》をするので、料理終了までの間に投票をお願いします!!」


『……』


『……』


『……』


『……』


『……』


『……』


 とうとうミラー配信組が全員黙ったんだが!?

 おいおいおい。いいのかよ、それで!!

 今、配信中だぞ!?

 俺たちはVTuberなんだぞ!?


「じゃ、じゃあ《選択肢》の説明なんですが……。一つ目がカレンちゃんのハンバーグ──」


『カレリンのは《愛情たっぷり♡ 熱々ジューシーハンバーグ》だから』


「ラ、ラナさん? それは……?」


『ん? カレリンの料理名』


「いや、その料理名はちょっと……」


『《え、なんだって?》』


 あなたがそれを使うのか──ッ!!


「ぐ、わかりました。カレンちゃんの《愛情たっぷり♡ 熱々ジューシーハンバーグ》と、ナーちゃんの……、」


『《あなたに食べて貰いたい♡ ぶきっちょ女子のお手製オムライス》』


「ミ、ミチエーリさんも……?」


『アズマさん』


「はい」


『復唱。《あなたに食べて貰いたい♡ ぶきっちょ女子のお手製オムライス》』


「……わかりました。えーっと、ナーちゃんの《あなたに食べて貰いたい♡ ぶきっちょ女子のお手製オムライス》と、ムエたんの……、」


 さすがに今度は無いよな?

 いないもんな? ムエたんサイドの厄介カプ厨は。


『《あなたの推しはア・タ・シ♡ ハートも溶かすスイーツたっぷりクリームシチュー》、やな』


「エイガ──ッ!!!!!!!!!!」


 何やってんだ、お前は──ッ!?


『ポチ』


『──ひぃ!?』


『狼森さん』


『──ひゃい!?』


『『何してるの?』』


『も、盛り上がりやん!? 必要やろ!? 自分らVTuberやで!?』


『『はぁ~~~~~』』


 ようこそ、エイガ。

 こちら側へ──ッ!!




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

いつもありがとうございます。藤宮です。


今回もアンケートを実施します。

◎アンケート内容:誰の料理から食べるのがいいと思う?

※票数が多かった順に、1番目→2番目→3番目とアズマに食べさせていきます。


◎今話アンケート

--------------

下記、ツイッターアカウントにて行っていますので、よろしければご参加ください。

・藤宮カズキ ツイッターアカウント

https://twitter.com/fujima0102


・アンケートURL

https://twitter.com/fujima0102/status/1611918772797067268

--------------


よろしければご参加ください。

引き続きよろしくお願いいたします。


藤宮

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る