第128話 こんなユニット名でいいんですか!?

『あっはっはっはっはっはっはっはっはっは──ッ!!!!!!!!! マジで? アズマ、これマジで!? あっはっはっはっはっはっ──ッ!!!!!!』


『あははははは──ッ!!!!! ダメ、ホントにダメってばアズマさん!! あっはっはっはっはっは──ッ!!!!』


「ー♪ ーー♪」


『やめてやめてやめて!!! お腹痛い──ッ!!!!』


『も、無理。ダメだってこれは──ッ!!!!』


「……ふぅ。ていうか、戸羽ニキとムエたんが歌えって言ったんですよね!? 笑い過ぎじゃないですか!?」


 せっかく戸羽ニキたちとのチャンネル名を決める配信だからって、気合いを入れて臨んだらこれだよ! 俺、歌は本当にダメなんだってば!!


『い、言った。言ったけど、ぷっ、あははははは!!!!!!』


『ごめ、笑うとか、そんなつもりは──、ぷっ、くっくっくっくっ、あははは!!!!!』


「OK。わかりました。それじゃあ、皆さんをもっと笑顔にしてあげましょう。リスナーさんたちもいいですね!?」


『待って』

『無理』

『ちょ、腹痛い』

『ごめんって』

『やめて』


「いーや、謝っても許しません。それじゃあ、二曲目いきますよ」


『ちょ、しかもラップ!? って、あははは──ッ!!!! 歌ってない!! それは歌ってないって!!!!』


『ダメダメダメ!!!! これ以上はやめて!!!! 本当に死ぬ!! 死んじゃうから!!! あははは──ッ!!!!』


『ラップじゃない!! これラップじゃない!! 読んでるって、朗読してるって!!!』


『なんで!? なんでそうなるの!? 音程は!? ノリは!? あははは。ダメだよこれは!! 新ジャンル生まれてるよ!!!!!』


「ーー♪ ーーー♪」


『ア、 アズマ。本当にもう勘弁して。あはは。これ以上は無理だって──ッ!!』


『大丈夫! もう十分アズマさんの実力はわかったから!! もう平気だから!! ていうか、もう許して──ッ!!!!!』


「……ふぅ」


『あーーーーー………………、一生分笑った。ぷっ、くふふふっ』


『フメツ君、思出し笑いしないで──、くっ、ふふ、こっちも、ふっ、つられちゃうから、くふふふふ──ッ』


「では、行きましょうか。三曲目」


『もう大丈夫だから!!』


『これ以上は勘弁して!!』


「いやいや、せっかくリスナーさんたちも盛り上がってるんですから、ねぇ? そうですよね、皆さん?」


『ごめん』

『マジでごめん』

『もう無理w』

『笑うのってしんどいんだな』

『電車で見るんじゃんかったw』


 お前ら本当に、俺の歌を何だと思ってるのさ!!

 ちくしょう……。俺最大のコンプレックスなんだぞ──ッ!?


『うわ、電車で配信見てる人いるのか。大丈夫? 生きてる?』


『アタシなら絶対に我慢しきれないで笑っちゃうなー』


『アズマの歌はヤバいって聞いてたけど、ここまでの破壊力だとは思わなかった』


『これからは元気がない時はこの配信のアーカイブ見よ。絶対笑顔になれるから』


『よかったね、アズマ。推しのムエナちゃんにこう言って貰えて』


「今のを褒め言葉として受け取れと!?」


 今のは絶対バカにされてたよね!?

 俺の勘違い!?


『褒めてるよ! アタシはアタシの歌をみんな届けて、みんなに『楽しい』って思って欲しいの。そのために歌を歌いたいって思ってるの。だからアズマさんの歌はすっごいんだよ! アタシもフメツ君も笑顔になったし、リスナーさんたちみんなも『楽しい! 笑顔になる!』って言ってるよ!!』


「お、おう……。はい」


 本当に褒め言葉だったんだ……。

 まさかそんな全力で褒められるとは……。


『あれ、アズマ照れてる?』


『え、アズマさん照れてるの?』


「て、照れてません──ッ!!」


『照れてるよ』


『照れてるね』


「だから照れてませんってば!! というか、本題は? どうするんですか? 俺たちのチャンネル名っていうか、ユニット名は」


『逃げた』


『逃げたね』


「逃げてませんけど!?」


『いやぁ、アズマも可愛いところあるよね』


『いいよ! アイドルにはそういう人間味がとても大事!! これはトレーナー兼プロデューサーの腕が鳴るよ!』


「で、そのトレーナー兼プロデューサー的にはどうだったんですか? ユニット名のヒントを見つけたいから歌えって言われて歌いましたが、二曲も」


『あ』


「ムエたん?」


『笑い過ぎてて忘れてた』


「OK、クビですね。このポンコツトレーナーは」


『待って待って!! そんなこと言わないで! ちゃんと考えるから!!』


『じゃあ、アズマにはその間にもう一曲』


『また考えるの忘れちゃうよ!?』


「もう歌いませんよ!?」


『何を言ってるんだい、アズマ。ファンがこんなに待ちわびてるのに──ッ!! 君はそれでもアイドルなのか!?』


「いやいや、よく見てください。誰一人として待ちわびてませんよ」


『やめて』

『もう許して』

『やりすぎダメ絶対』


「ほら」


『そんな!? アイドルの夢を応援する! それこそがファンの喜びじゃないの!? どうしちゃったんだよ、みんな──ッ!!』


「どうしたはこっちのセリフですよ。どうしたんですか、戸羽ニキ。突然テンションおかしくなってないですか? そんな熱血キャラじゃないですよね?」


『ああ、うん。アズマの歌の影響だろうね。ちょっと頭おかしくなってる』


「はい解散でーす。このユニットは解散しまーす」


『じゃあ、再結成しよう。ユニット名は《ボクサイ》。僕たち最強の略ね』


「何とも言えないセンスですね。大学生のバンドサークルにいそう」


『そんなことを言うからには、アズマは抜群のセンスを発揮してくれるんだろうね!?』


「なんでそんな突っかかってくるんですか!?」


『アズマが解散なんて言うからだろ!? そんなこと言われたら、僕は、僕は……っ』


「ああ、はい。大丈夫です。解散は無しです」


『いやいや、なんでそんなに冷めてるのさ。今のは結構感動的なやりとりに繋がる前振りじゃないか』


「戸羽ニキが明らかにふざけてるのが伝わってくるからですよ」


『以心伝心ってこと?』


「声音!! 笑いながら言ってたらさすがにわかりますよ!?」


『ふっ、それもまた、アズマの歌の影響さ』


「今日ホントにテンションおかしいですね!? キャラクター性が行方不明ですよ!?」


『うん。僕もそう思ってる。今日なんか変だ。笑い過ぎたからかな』


 ……それは俺のせいじゃないですよね?

 ……歌わせたのあなたたちですからね?


『はいはい! アタシ思いついた! ユニット名!!』


「うわ!? ムエたん!?」


『いるなら言ってよ。ビックリしたじゃないか』


『ずっといるけど!? ほら立ち絵も表示されてる!! トレーナー兼プロデューサーを無視するなんてダメなんだよ!?』


『ところでアズマはユニット名思いついた?』


「その流れでそのフリは鬼じゃないですか!?」


『? 何のことかな? 僕、何かした?』


 戸羽ニキのこういうところ、マジでドSだと思う。

 俺に推しを無視しろと言うんですか!?


『うんうん。今のと言い、やっぱり2人のユニット名はこれしかないと思うんだ』


「こっちもこっちで全部無視して話進めてる……」


 あれ、もしかしてこの2人って人の話を聞かないタイプだったりする?


『アタシが考えたユニット名はね、《リード》!!』


『僕がアズマの首にリードを付けてるってこと?』


「なんでですか!? 犬ですか、俺は!?」


『そういうユニットにするのもいいねー。ちょっと危ない2人的な』


「全然よくないですよ!? どこにもいいところひとつもないですよ!?」


 ああもう。2人が好き勝手喋り出すと話が1mmも前に進まない!!


「それで、どういう意味なんですか? 《リード》って」


『あ、うん。意味はふたつあるんだ。今日の配信もそうだし、アズマさんをブイクリにスカウトするって話とかも含めて、2人の間だとフメツ君が結構リードしてるなーって思ったのがひとつと──』


『やっぱり僕がアズマに首輪をつけてるね』


「戸羽ニキはちょっと黙っててください」


『もうひとつは、さっきのアズマさんの歌を聞いててピンと来たんだ!』


「俺の歌? どういうことですか?」


 朗読とまで言われた歌で何をピンと来たんだろう?


『歌を歌わずに“読む”アイドル! 新しいよ、これは!!』


「“read”ってことですか!? うまく言ったつもりですか!?」


『あはははは──ッ!!!! “read”ね! 確かにアズマにピッタリだ!! いいじゃん、それでいこうよ!』


「嫌ですよ、そんな意味が込められたユニット名なんて!!」


『ちっちっち。甘いよ、アズマさん。このアイドル戦国時代。いかにキャッチーで、みんなから親しまれるかが重要なんだよ。つまり、自分のコンプレックスをユニット名にするぐらいじゃないと生き抜くことなんて出来ないんだよ!!』


「さらけ出してるのは俺だけなんですが!? 戸羽ニキは!?」


『僕はほら、そんなコンプレックスに塗れたアズマを“lead”してトップVTuberまで導く存在だから』


「完全に師匠ポジションじゃないですか!」


『お前はワシが見出した』


「いや、それは間違いない! その節はありがとうございました!!」


『おお、この弟子素直だ』


『むー……。《リード》やめようかな』


『え、なんで? いいじゃん。僕は賛成だよ』


『だって、アタシがトレーナー兼プロデューサーなのに、今の見てるとフメツ君がそれっぽいんだもん』


『あー、そういうね』


「反対2票! やっぱり別のにしましょう!!」


『えー、ヤダ』


「ヤダって、戸羽ニキ……。あなたいくつですか。子供じゃあるまいし」


『あ、じゃあさ! リスナーさんたちに聞こうよ!! ほら、何かやってたじゃん。チャンネル名決めるときにリスナーさんたちにアンケート取るやつ。あれで《リード》のあるなし聞こうよ。僕は有りだと思うな~』


「戸羽ニキの案はいいんですか?」


『だって僕、《リード》の方が気に入ったし。アンケートで無しって結果になったら、その時の候補に出すよ』


「じゃあ、いったん。いったんね。それでアンケートやりますか? ……みんな、無しに投票してくださいね」


『それ、無しになったらアタシのセンスが悪かったってことにならない?』


 ……あ。


『あ~あ、アズマは推しのセンスを否定するんだ~。なるほどな~、そういうことしちゃうんだ~』


「それはドS過ぎません!?」


『だって、ほら……』


『そっか、アズマさん、そんなにアタシのセンスは嫌なんだ……。ぐすっ』


「いやいや、そんなわけないじゃないですか!! ムエたんのセンスは最高ですよ!! 皆さんもそう思いますよね!? ね!?」


『これで僕らのユニット名は《リード》に決まったも同然だね。安心していいよ、ムエナちゃん。大丈夫だから』


『本当……? 本当に大丈夫……?』


『大丈夫大丈夫。ね、アズマ』


「そうやって誘導尋問するのは卑怯ですよ!?」


『いいからほら、アンケートやるよ。全く、こういうところも“lead”してあげなきゃいけないなんて、世話の焼ける弟子だなぁ』


「今のは絶対に言いたいだけですよね!?」


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いつもありがとうございます。藤宮です。


今回はアンケートがあります。

下記、ツイッターアカウントにて行っていますので、よろしければご参加ください。

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◎藤宮カズキ ツイッターアカウント

https://twitter.com/fujima0102

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アンケート内容:フメツとアズマのユニット名について

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◎アンケートURL

https://twitter.com/fujima0102/status/1598823240675528704

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引き続きよろしくお願いいたします。

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