第125話 ラブコメ主人公企画 Side.ナキア①……+?

『却下。なんで向こうが《カレ♡アズチャンネル》なのに、《ナキアズチャンネル》なんて二番煎じにしようとするの?』


『い、いいじゃない!! 私たちのチャンネルなのよ!? 名前ぐらい私たちで決めさせなさいよ!!』


『ダメ。無理。却下』


『ズマっち!! ミチェがいつになく辛辣よ!? どうしましょう!?』


 どうって言われても……。

 こちとらどうせオモチャになるの確定してるし諦めモードっていうか、まさかのリスナー投票が《カレ♡アズチャンネル》になった衝撃の方がデカいんだが!?

 いいんですか本当にそれで!?

 アマリリス・カレンとのチャンネルですよ!?

 相手は美少女VTuberですよ!? そんな、名前の間に『♡』を入れるなんて所業が許されていいんですか!?

 俺、カレンちゃんのガチ恋勢に処されません!?

 あ、もしかしてだけど。カレンちゃんにはガチ恋勢がいないのか……?

 それはそれでさみしい事実を浮き彫りにしてしまった感があるなぁ──ッ!?


「えっと、ちなみにミチエーリさんは何かアイデアがあったりするんですか?」


 さみしい事実と言えばもうひとつ言っておかなければならないことがある。

 ナーちゃんサイドの《お助け親友キャラ》はミチエーリさんひとりです。

 もう一度言います。

 ナーちゃんの《お助け親友キャラ》はミチエーリさんひとりです!!

 カレンちゃんには3人もいた《お助け親友キャラ》がナーちゃんにはひとりなんです!! ひとりしかいないんです──ッ!!

 ……ナーちゃんの友達が少ないのは知ってたけど、まさかここまでとはって思った。

 でもそれ以上に、その事実を察したコメント欄の反応が、ね? とてもね、『あ、察し……』って感じで香ばしかったよ。

 ──リスナーのみんな! そういう時は、『俺たちがいるぜ!』ってコメントしてあげようね!! ナーちゃん泣きそうになってたから!!


『アズマさん、聞いてる?』


「ええ、もちろん聞いてますよ。聞いたうえで無視したくて無視してました」


『なんでそういうことするの!? 一生懸命考えたのに!!』


「一生懸命考えて出てきたアイデアが《ナキアズしか勝たん》《ナキアはアズマのお姫様》《ナキぴはアズぴにふぉーりんらぶ♡》って言われたら、誰だって無視したくなりますよね!? どういうセンスしてるんですか!?」


 他がひどすぎて『ナキアズしか勝たん』がめちゃくちゃマシに思えるってひどくない!?

 逆にこれ、俺とナーちゃんがミチエーリさんからいじめられてない!?

 くそう。信じてたのに。ミチエーリさんはセンスいいって信じてたのに……っ。


『なんか失礼なこと思ってる?』


「俺たちが今失礼なことをされてると思ってます」


『そこまで言わなくていいじゃん!!』


「そこまで言いたくなるんですよ!!」


『せっかくナキアが好きそうなのにしたのに!!』


「え、ナーちゃん……? 嘘でしょ……?」


 好きなの? こういうのが……?


『ゥんんっ。ミチェ。さすがにこれはないと思うわ』


「あ、好きなんですね、こういうのが」


『違うわ。誤解よ。偏向報道はやめて頂戴』


「好きなんですよね? こういのが。そういう声のトーンしてますもんね」


『いいえ、そんなことないわ。ミチェのセンスをバカにされて間接的に私にも刺さってるとか、そんな事実はないわ。ええ、大丈夫よ。私のセンスは普通よ』


「弁明するならもうちょっとマシな弁明してください。俺も謝りますから」


『あー! そうやってナキアだけ甘やかすんだ!! むしろ我慢に我慢を重ねてこのアイデアを絞り出した私に謝ってよ!! 私のセンスがこんなひどいわけないでしょ!?』


「そうですよね!? いや、安心しました!! よかったー! ミチエーリさんは普通で」


『私が普通じゃないみたいな言い方、やめてくれないかしら!?』


『ナキアは普通じゃないでしょ』


「そうですよ! むしろ、ナーちゃんのハチャメチャな感性を汲み取ろうとしたミチエーリさんを褒めるべきです!! すごい! 偉い! ミチエーリ最強!!」


『いえいえ。それほどでも。まあ、これでもナキアの親友として参加させてもらってますので』


『ちょっと!! 何で2人で丸く収めようとしてるのよ!! 私が傷ついただけじゃない!! 謝りなさいよ!!』


『二番煎じに逃げようとしたくせに』


『う』


『どうせ自分のアイデアを出したら総ツッコミになると思って、二番煎じに逃げようとしたんだよね? 『ナキアズチャンネル』ってそういうことだよね? ナキア。親友の私はナキアのことは何でもお見通しなんだよ』


『チェンジ!! 親友をチェンジするわ!!』


『変えられないから親友なんだよ。それにナキア。私以外にこんなこと頼める友達、──いるの?』


 あ~あ、言っちゃった。

 いやまあ、いいんだけどね? ミチエーリさんだし。本当にナーちゃんと仲いいからこそ、こういうこと言っても燃えたりしないだろうし。

 ていうか、コメント欄がバカみたいに盛り上がってる……。

 すげーな、安芸ナキア。3万人が見てる中でぼっち暴露されて草生やされてるよ。生き様がロックすぎるだろ……。


『ズマっち!! こういう時こそヒロインを助けるのが主人公でしょう!? 私を助けなさいよ!!』


「ヒロインの成長を支えるために、逃げずに現実を伝えるのも主人公の役目だと思いませんか?」


『そうやって私にひどいことをするのね!? 私をかわいそうだと思わないの!?』


「でもナーちゃん前に言ってましたよね。『かわいそうなのは抜ける』って」


『それは性癖の話よ!?』


「ではナーちゃん。今こそあなたがあなた自身の性癖を体現する時ってことですね!!」


『言ったわね!? それは私が『なんだかんだ王道イチャラブが一番好き』って話したのを覚えてて言ってるのよね!? いいのかしら!? 性癖を体現するわよ!? ズマっちで!!』


「……何て言うか、世界一最低な告白をされた気がするんですが」


『……アズマさんは今のを告白って受け取れるんだ。すごいね。私だったら無理だ』


「いやぁ、正直言うと俺も今のはちょっと……」


『2人ともひどいわよ!? せっかく勇気を出したのに!!』


『勇気の出しどころと出し方が、……ね? だからナキアは友達少ないんだね。頑張ろうね!!』


「大丈夫ですよ!! 俺たちもいるじゃないですか!!」


『慰めるんじゃないわよ!! もっと惨めになるじゃない!!』


 あ、ほらリスナーさんたちも応援してくれてる。


『頑張ろう!』

『大丈夫!!』

『俺たちがついてるぜ!』


 あったけぇなぁ。

 VTuberやってると、こういう人の温かさに触れられるからいいよなぁ。


『そ、それで、チャネル名はどうするのかしら?』


『あ、逃げた』


『逃げてないわ!! むしろこれが本題じゃない!!』


「それはそうですけど、でもナーちゃんはさっきのミチエーリさんが出してくれた3つが気に入ってるんですよね?」


『そ、そんなことないわよ……?』


「あの3つで《選択肢》やりましょう」


『え、正気……?』


「ミチエーリさん。そこはせめて『本気?』って聞いてくれません? ていうか、あの案出したのあなたですよね!?」


『だって、本当にそうするとは思わないじゃん!!』


「しょうがないでしょう!? ナーちゃんがそれがいいって言うんですから!」


『言ってないわよ!!』


「本当にいいんですか?」


『いいわよ……。あ、でも《ナキアズしか勝たん》ぐらいは入れてもいいんじゃないかしら……?』


「……。OKです」


『間があったわね』


「結局好きなんじゃん、とか思ってないので大丈夫です」


『思ったのね!? そうなのね!?』


「さて、あとどうしましょうか。《選択肢》をやるならあと3つぐらい欲しいですが」


『もう選択肢やらなくていいと思うよ』


「《ナキアズしか勝たん》で決定ですか?」


『うん。だってナキアが気に入ってるって言ってるし』


「確かにそうですね」


『ま、まあ、あなたたち2人がそう言うなら、しょうがないわね。それでいいわよ』


「なんでこっちが認めてもらった風なんですか」


『まぁまぁそういうことにしておこうよ』


「そうですね。そういうことにしておきましょう」


『……なんだか釈然としないわ』


 ナーちゃんが何か言ってるけどスルーして──、


「ぴょんこさん、袈裟坊主さん。チャンネル名決まりましたよ」


『え~、もう決まり~? 《選択肢》やらないの~?』


『リスナーたちも残念がっているぞ』


「あれは困った時の主人公スキルなので。ヒロイン役が『これがいい』って言ったならそれで決まりです。ラブコメなので」


『ん~、それもそうかもね~。じゃあ~、これで2つともチャンネル名も決まったっていうことで~』


『うむ。本格的にラブコメ配信を始めていく、と行きたいところだが!?』


『実は~、ひとつお知らせがあるんだよね~』


 え、何それ。聞いてないんですが!?


『これはね~、めちゃくちゃすごいよ~』


我々企画屋も驚いた内容だ』


「なんですか? 何が始まるんですか!?」


『ズマちゃんは覚悟しておいた方がいいかもね~』


『間違いなく東野にとって重要な出来事になるに違いない』


「いやいやいや! そういうことは事前に言ってくださいよ!! 心の準備もさせてくれないんですか!?」


『じゃあ~、早速いってみよ~』


「だから心の準備させてくださいって!!


『無理だ東野。盛り上がりとは生ものより足が速い』


『今回のこのラブコメ配信企画に~、なんと飛び入り参加者が現れたよ~』


『しかも予想外な人物だ。みな、驚くなよ?』


「え、え。飛び入り? は? 誰!?」


『じゃあ~、登場してもらいましょう~。この方です~』


 待って待って、だから心の準備が──ッ!?


『みなさん、こんばんは。戸羽丹フメツです』


 は? 

 え、戸羽ニキ!?

 飛び入りって戸羽ニキ!? 

 え!? 

 はい!? 

 どういうこと!?


『アズマ。──君を奪いに来た』



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今回はアンケートありません。

また、前回のアンケートに参加いただいた皆様、ありがとうございました。

結果は下記の通りでした。


投票数:70票

Q.東野アズマとアマリリス・カレンの配信チャンネルの名前は?

①カレ×アズチャンネル:30.0%

②カレ⇒アズチャンネル:27.1%

③カレ♡アズチャンネル:34.3%

④カレアズチャンネル:8.6%


僅差でしたが『♡』が上回りましたね!

なので、カレンとアズマのチャンネル名は《カレ♡アズチャンネル》となりました!

たくさんのご投票ありがとうございます!

引き続きよろしくお願いいたします。


藤宮

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