第85話 顔合わせにギャルが来た!!!!
『めっちゃウケるんだけど。マジで言ってる?』
「冗談でこんなこと言いませんって。全部本当ですよ」
『ヤッバ。え~、アズマさんの話聞いてたら、一生社会人やりたくないって思っちゃったんだけど』
「社畜にならなければ、社会人にはなってもいいと思いますよ。と言うか、俺の話が極端過ぎですね。普通はもうちょっとマシです。あ、ほら。うちのコメントでも『アズマが異常』ってすごい言われてますよ」
『ウチのとこもだ~。あははー。アズマさんってヤバい人だったんだね!』
「それは語弊ありません!? 俺がヤバかったのは働き方で、俺自身はそこまでヤバくないと思いますよ!?」
『え~、そうなの~? ねぇねぇ、ミチェ。どう思う?』
『そんなことより、私は2人の関係に驚きだよ! まだ顔合わせ配信初めて10分経ってないよね!? なんでそんなに仲いいの?』
『ギャルのコミュ力舐めんな~?』
「社畜営業の本領発揮ってとこですね」
『ドキドキは!? ワクワクは!? 初めてで緊張しますっていう、あの感じはないの!?』
『なかったね~。ていうか、それってミチェがニヤニヤしたいだけじゃん』
『うん。そうだよ』
「あっさり頷きますね」
『だって、楽しいもん! 普段と違う2人を見れると思ったのに!! もうちょっとギクシャクしてよ!』
『いやマジで、ギャルのコミュ力舐めんな~?』
「社畜時代に鍛えた営業のコミュ力を舐めないで欲しいですね」
『なんかもう息ぴったりだし。あれぇ、おかしいなぁ……?』
なんて首を傾げるミチエーリさんへ、一緒になって笑って返すのは甘蜜アゲハ(アマミツ アゲハ)さん。
今度のレジェンダリーカップに一緒のチームとして出場する女性VTuberだ。
普段からFPS系の配信をしており、『EX.のランクはクイーン止まりのクソ雑魚』なんて笑っていたが、他のFPS系ゲームでは最高ランクに到達していることもあり、ランク以上の実力を持っている人だって言われている。
いわゆるランク詐欺ってやつか。プレイしてないからランクは低いだけで、実力自体はちゃんとある。
あと、本人が言っている通りギャルだ。見た目もノリもギャルだ。
『あ、そうそう。アズマさん見て見て~。この髪型この前新しく追加してもらったの。可愛いっしょ?』
「あ、どうりで! 以前配信を見た時と印象違うなって思ったんですよね! 前はもうちょっと髪が長かったですよね?」
『え~、知っててくれたんだ。めっちゃ嬉しい! そうなんだよね、髪切ったんだ』
「どっちも似合ってていいですね。長かったのを短くしたんなら、リスナーさんの反応もすごかったんじゃないんですか?」
『それな! ウチんとこのリスナーさんたち大騒ぎよ。『失恋したの?』とかってコメントあってウケたな~』
「女性が髪を切るときは~、なんて言いますからね」
『実際そんなことないのにね! ただの気分転換だし』
「本当にそうなんですか?」
『え~、何々。アズマさんもそういうの気になっちゃう系?』
「いや、会話の流れで聞いただけなんで、あんまり気になるとかはないですね」
『違うんかい!!』
「違いました」
『違ったか~。あははっ! アズマさんおもしろいね!!』
「アゲハさんこそ。話しやすくて助かってます」
『え~、アゲハ『さん』ってなんかヤダー。呼び捨てかちゃん付けがいい』
「じゃあ、アゲハちゃんで」
『なるほどね。そういう感じね』
「なんですか、その反応」
『いや、意外と一線は踏み越えないようにしてるんだな~って思って』
「いきなり呼び捨てはハードル高いですって」
『OK。もっと仲良くなれってことね』
「ギャルの前向きさを実感しました」
たくましさというか、なんというか。
この元気さ前向きさはいいなぁ。話してるだけでテンション上がってくる。
特に死ぬほど仕事をこなした後だと、より効く。
今日も凄まじかったからな。危うく顔合わせに遅刻するところだった。
『あの~……、私も混ざってもいいですか~……? なんて』
『あははっ! 何言ってんの、ミチェ』
『だって2人が仲良すぎるんだもん! もうちょっと緊張しててよ! 陽キャムーブやめて!!』
『ウチ、別に陽キャじゃないよ?』
「俺も。むしろゴリゴリのオタクですよ」
『ウチも~。あ、ていうかさ、失恋の話していい? 失恋っていうか死に別れかな~、この場合』
「え、重い話ですか……?」
『違う違う! あ、でもある意味違くないか。ウチめっちゃ凹んだし。この間マンガで推しが死んじゃったんだよね。も~、ウチびっくりしてさ。読んでたらいきなり死んで、『え!?』 みたいな。『え、死んだ……? 嘘でしょ!?』 ってなって、ミチェにチャット送ったもん』
『あ、そう! ねえ、聞いてよアズマさん。いきなりだよ? 深夜に『通話!』チャット来て、そこから朝までずーっと死んだ推しのこと聞かされてたの!』
「よくそんな話せますね。推しのことだけでそんな何時間も話せ……、なくはないか。行けるか全然。いけますね!」
ムエたんの話なら朝まで語るなんて余裕だ。何の問題もない。
『何それ~。アズマさんってやっぱりウケるね! 話してて楽しい!!』
「俺もですよ。まさかこんな短時間でここまで盛り上がれるようになるなんて思ったなかったです」
ちなみにこの雑談中もずーっとEX.はプレイしてる。
敵と遭遇しないせいでずーっとお喋りが止まらないだけで。
まあ、顔合わせだしこれぐらい気楽な方がいいよね。
『ふふん』
「ミチエーリさん?」
『どしたの?』
『2人とも私を褒めていいんだよ。絶対に楽しいチームになるって思ったから2人を誘ったこの私を』
「あ、アゲハちゃん。あっちに敵います」
『よっしゃ~! 初戦闘だー!! やっと戦えるー!!!』
『無視しないで! ていうかダメだよ! 私が先にやるんだから!!』
「いやいや、俺がやりますって!!」
『ダメ~。ウチがやる! ミチェは褒めてあげるから別の射線警戒しててよ』
『ヤダ! リーダーは私だぞ!!』
『まだリーダーのつもりでいたの?』
「いつまでリーダーだと思ってたんですか?」
『まだ顔合わせなんだけど!? もうリーダーじゃなくなるの!?』
「配信始まる頃にはもうリーダーじゃなかった説。ありません?」
『あるある全然ある。ミチェ、もしかして気づかなかった?』
『そんな説はない!! 私がリーダーだ!! みんな私に続け!!』
「はい、リーダーッ!!」
『ついて行くよ、リーダー!!』
『結局リーダーでいいの!?』
『いいよ~』
いや、ギャル軽っ!?
もう本当にノリだけで会話してるな。
俺もノッてるけどねッ!!
『よーし!! まずはあいつらを倒すぞ!!』
「あ、マズいですリーダー。別から撃たれてます!!」
『これウチもヤバい!! 死ぬ!! 無理!!』
『リーダーは逃げます!! バイ!!』
「うっそでしょう!? リーダーが見捨てるんですか!? メンバーを!?」
『失格!! リーダー失格!!』
『失格じゃない!! なぜなら生き残った私が一番強いから!! 最強こそリーダーに相応しい!! ミチエーリ最強!!』
「ここでそれ使うのズルくないですか?」
『え、何々? 何の話?』
「前に配信でミチエーリさんを褒めるって流れになった時に、リスナーさんたちと一緒にやったんですよ。ミチエーリさんがカッコよかったりしたら『ミチエーリ最強!』って言うってのを」
『え~、何それいいな! ウチもやりたい!! みんな、ウチがカッコよかったら、『アゲハ最強』って言ってー!!』
『ダメ、それ私のーッ!! アゲハは自分で考えればいいじゃん!!』
『え~。じゃあ、アズマさん考えて』
「『アゲハちゃんカワイイ』でどうですか?」
『ん~、微妙』
「そんな!? 一生懸命考えたんですよ!?」
『嘘じゃん。秒だったじゃん。考えてないじゃん』
「ほら、よくアニメとかであるじゃないですか。一瞬のうちにめちゃくちゃ考えてる描写。あれですよ。今の一瞬で3億年分ぐらい考えました」
『めっちゃ適当言ってるじゃん!! もー! アズマさんダメだよ。女の子ことはちゃんと考えてあげないと』
『お、いいぞアゲハ。もっと言えー!』
「え、なんでですか!? 俺そんな言われるようなことしました?」
『ナキアズてぇてぇ』
「今それ関係なくないですか!? あ、ほら。敵来てますよ! ミチエーリさん戦わないと!!」
『逃げます!!』
「最強じゃないんですか!? 戦ってカッコいいとこ見せてくださいよ!!」
『今は恋バナがしたい気分』
『え、恋バナ!? ウチもしたい!!』
『したいよね!! てぇてぇから始まる恋の話とかしたいよね!!』
「待て待て待て!!!! 俺たちレジェンダリーカップに出るんですよね!? 放課後のファミレスで駄弁りに行くんじゃないんですよ!?」
『大丈夫大丈夫。まだ時間はあるから』
「それ絶対後になって焦るやつですよね!? 宿題やってないのに夏休みが終わる時みたいなテンションになるやつですよね!?」
『夏休みは遊ぶんだよ!! 宿題なんてやってられるか!!』
『ねぇえ~、恋バナ~。早く~』
「絶対にしませんからね!?」
そんなこんなで顔合わせ配信はめちゃくちゃ賑やかになった。
死ぬほどてぇてぇネタを擦られたけど!!
アゲハさんもめちゃくちゃノリノリだったし!!
楽しいしいい人なのはわかったけど、ノリノリなギャルの強さもわからされた。とんでもなかった……。
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