第75話 やっぱりラブコメは始まらない……?
「はふぅ。お寿司、美味しかったですねぇ」
「あんなに脂が乗ってる寿司は久しぶりに食べたよ」
「あぁ~、VTuberやっててよかった~っ!!」
「現金な発言だなぁ。リスナーさんたちにお礼しないとね」
「本当ですよ。推してくれてる人たちがいるおかげで、こんなに美味しいものが食べられるんですから」
ということで、寿司を堪能したカレンちゃんと俺は、食休みもほどほどに、ファミレスに入って駄弁っていた。
こうやってダラダラ喋るなら、やっぱりこういう騒がしいところの方がいいよね。多少なら大声出しても問題ないだろうし。
今日行った寿司屋は、美味しかっただけに店の雰囲気もおしゃれで、気軽なお喋りをするには気を使う場所だった。
そしてもちろんお代もそれなりだった。
いや、マジでリスナーさんたちには感謝しかない。
「でも、推しのライバーさんがこんなに美味しいもの食べてるって思ったら、スパチャも投げたくなりますよねぇ」
「それな~。俺のスパチャで推しが幸せになるならって思うと、財布のひもも緩むよね」
「VTuberとして稼いだ分を他のVTuberさんにスパチャするのってどうなんでしょう?」
「いいと思うよ。推し活して元気でいてくれるなら、俺は気にならないな。まあ、限度はあるだろうけど」
「そうやって経済は回るんですねぇ」
「まとめ方が雑。ていうか、さっきから口調がふにゃふにゃしてるよ」
「だって美味しかったんですよ~。あと、お腹いっぱいになったのでぇ、少し眠くなってきましたぁ」
「じゃあ、コーヒーでも飲む?」
「そんなもったいないこと出来ません! お寿司の味が消えちゃうじゃないですか!」
眠かったんじゃないのか。
めっちゃ大声出すじゃん。
「でも、俺はコーヒー頼むよ」
「ええ!? なんでですか!?」
「そろそろ店員さんが何か注文しろって顔でこっちを見てるから」
「だとしてもコーヒーなんて! あんな苦いものを飲む人の気が知れません」
「世界中のコーヒー愛好家の皆さんに謝ろうか」
「せっかく幸せなんですから、ここはもっと幸せになるべきなんです! ということで、わたしはパフェを」
「太るよ?」
「今日はチートデイなので大丈夫です」
「それは普段運動してる人だけが使える言い訳だよ」
「今日だけ太らない体質になったので大丈夫です」
「甘いものを食べるのに全力過ぎない?」
「女の子ですから」
そこはドヤ顔する場面なのか?
明日の朝に後悔しても知らないぞ。
ていうか、それはそれで寿司の味が消えないかなぁ
「カレンちゃんはボチボチ配信頻度を前ぐらいに戻せそうなの?」
「もちろんです! 課題も終わりましたし、これからはまたVTuberとしてガンガン配信してく予定です」
「じゃあさ、コラボしようよ」
「おっとぉ、もしかしてアズマさん。わたしが戻ってくるのを待ちわびてたんですか? もう、しょうがないですね~。いいですよ、好きなだけコラボしてあげます! わたしの優しさに感謝してください!」
「OK。そのままエイガに伝えとく」
「エ、エイガさん? なんで?」
「ディスコード見てみて」
俺も今さっき気づいたけど、またエイガからきっしょい連絡が来てた。
「あ~……。エイガさんらしいですね……」
「ドン引きじゃん」
「いやだって、『孤独で人は死ぬって本当やと思う』って来てるんですよ!?」
「その後に『ちらっ』って来てるね。文字で」
「せめて絵文字にして欲しいです……」
「ま、大丈夫でしょう。カレンちゃんが好きなだけコラボしてくれるみたいだし」
「アズマさんも来てくれますよね!?」
「俺はこの間したからいいかな」
「ダメですよ!? その配信見てましたけど、エイガさんの相手をわたし1人でするのは無理ですからね!?」
「ラナさんを誘えばいいじゃん」
「だったらアズマさんも来てくださいよ!」
「そうしたら今度はレオンハルトがコラボしない側のぼっちになっちゃうじゃん」
「誘いましょう! レオンハルト君も! わたしたちは5人で仲間じゃないですか!」
「あいつ今、テスト勉強で忙しいらしいよ」
「なんで知ってるんですか?」
「この間、『これわかる?』って数学の問題を送ってきたから」
「えー、どうしてわたしには聞いてくれないんだろ。アズマさんよりわたしの方が現役に近いのに」
「忙しそうにしたからじゃない? それか……、おっと」
「……今、何を言いかけたんですか?」
「いえ、何も?」
「ウソはダメです。ほら、何を言いかけたのか教えてください!」
「カレンちゃんの才能はイラストとか、そっち方面で発揮されてるから大丈夫だよ」
「勉強は出来ないって言いたいんですか?」
「いえ、決してそのようなことはありません」
「わたしの目を見て言ってください」
「それは勘弁してください。……切実に」
カレンちゃんの顔を正面から凝視とか無理だから!
自分で美少女だって自覚しているなら、軽率にそういうこと言わないで貰えるかな!?
「あ、ほら。パフェが来たよって、マジでそれ食べるの?」
「? 当たり前じゃないですか。そのために頼んだんですから」
「うへー」
見てるだけで胸焼けしそう。
お腹いっぱいに寿司を食べた後に、よくそんな量のパフェが食べられるな。
女子の胃袋恐るべし。
「アズマさんはよくそんな苦いものが飲めますね」
「お子様舌のカレンちゃんも、大人になれば飲めるよ」
「それじゃあ、わたしは一生お子様でいいでーす」
「ところでカレンちゃん、エイガのとは別に、コラボ出来る日ってない?」
「ありますよ。それに、わたしもアズマさんにコラボのお願いしたいんですよね」
「それはもちろんOK。そしたら、絶対にダメな日だけ教えて。そこは避けるから」
「なんですかー、その感じ。なんかデートの約束みたいじゃないですか」
「デートって言うか《企画屋》からのお誘い」
「え、またですか!? 今度は何やるんですか?」
「概要はわからないけど、ワルクラのコラボだって。で、俺とカレンちゃんに参加して欲しいとのこと」
「あれ、もしかしてリアルタイムで連絡来てます?」
「うん。今、ぴょんこさんとやりとりしてる」
「……女の子と2人でいるときに、他の女性と連絡してるのはどうかと思いますよ」
「それはごめんだけど、ぴょんこさんからのコラボの誘いだよ? 《企画屋》主催だから、きっとまた盛り上がる」
「確かにVTuberとしては嬉しい誘いですけどぉ……。ちなみに、他の方ともコラボの予定とかあるんですか?」
「うん」
「誰ですか?」
あれ、《レジェンダリーズカップ》に出ることは、まだ言っちゃダメだよな。
公式から大会開催の発表もまだだし。
「ミチエーリさんとEX.のコラボをする約束してる」
「……むぅ。この間も2人でコラボしてましたよね」
「ミチエーリさんがツイッターで募集してたの見つけただけだよ。あれはたまたま」
「アズマさん」
「はい」
「モヤモヤするのでもう一個パフェを食べます」
「……太るよ?」
「いいんです! こういう時は甘いものを食べるんです! だって、女の子だから!!」
……複雑な女心ってやつですか。
なんだかなー、カレンちゃんとの距離感がなんだかんだ一番難しい気がする。
VTuberとしては今ぐらいの関係性がちょうどいいと思ってるんだよね。
何かあって変な感じになったら、コラボとか誘いにくくなるし……。
とは言えなぁ、とも思うし……。難しい。
「アズマさん。食べ切れなかったら残りは任せますね!」
「だったらそもそも2つも頼まなきゃよくない!?」
「それとこれとは話が別です。期待してますよ」
「その期待のされ方は嫌だなぁ」
ま、今は難しいことは脇に置いておこう。
とにもかくにもVTuberとして頑張っていくのを一番に考えたいし。
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