第69話 たまにはリスナーさんたちとまったり雑談したいよね

「ワルクラは動画だったり他の配信者さんがやってるのを見たりする程度だから、本当に何の知識もないんですよねぇ。なので、ちょっとずつやっていければいいかなぁって思ってます。他の皆もそれぞれのペースで進めると思いますし」


『コラボの予定ないの?』

『次やるとしたらワルクラコラボ?』

『みんなで冒険して欲しい』


「冒険もいいですね。ただ、直近コラボの予定はないんですよね。クロファイの本番に向けてずっとコラボ配信してましたし、皆も皆で忙しいみたいですし。しばらくはのんびりやろうかなって思ってます。たまにはこうしてリスナーさんたちと雑談とかもしたいですし」


『とか言ってぼっちなのでは?』


「誰ですかぼっちとか言ったのは。違いますよ。あえてですよ、あえて。だってそんなにいつもコラボばかりしてたら、リスナーさんたちと交流できないじゃないですか。たまには俺も皆さんと話したいんですよ」


 実際みんな忙しそうにしてたからなぁ。

 エイガとラナさんはしばらくは立て込んでるって言ってたし、カレンちゃんは学校の課題がヤバいって言ってたし、レオンハルトは『勉強しないと……』って声を震わせていた。

 ん? あれ待って?

 もしかしてこの中でVTuber専業って俺だけ!?

 ていうか、今の俺ってもしかしてニートなのか……? 

 ゲームだけしてるクソ野郎だったりする……?

 いや、そんなはずはない。こうして配信活動をしてちゃんと収入を得ているんだ。収入があると言うことは、仕事があると言うこと。つまりニートではないと言うことだ!!

 ……ふー、危ない。危うくセルフメンタルブレイクするところだった。


「あー。なんかここ最近ずっと1フレームに命かけてたから、こうやってのんびり作業出来るのいいですね。とりあえず自分の活動拠点ぐらいは作っておきたいですよね。その後はどうしましょう。他の配信者さんのを見てると、建築とかカッコいいやつ作ってたりするじゃないですか。俺もああいうのやってみたいですよねー」


『埼京ツルギは建築すごい』


「あ、知ってますよ。埼京さんの建築! めちゃくちゃセンスいいの作ってましたよね!! 俺、一時期配信追ってました。雑談してたらいつの間にかすごいものが出来ててビックリしますよね」


『ツルギクラスは中々ムズい』

『みんなで街を作ろう』

『今来たー。何してるの?』


「来てくれてありがとうございます。今日はまったりワルクラ雑談配信をしてます。今はとりあえず拠点作りですね。あー、でも確かに街は作りたいですね。デッカイ建築もいいですけど、広い街並みとかもやってみたいですよね。あえて山を残して、トンネル掘って繋ぐとか。良さそうじゃないですか?」


『今後サーバーの人数って増える?』


「人数はどうしましょうね。とりあえずはこの5人でいいかなって思ってますが、個人勢とかで仲がいい人が出来てきたりしたら誘ったりするかもしれません。まあでも、いったんはこの5人で色々やっていきたいですね」


『ナキア先生誘おう』

『ナーちゃん』

『ナキア先生』

『ナキア先生は仲いい個人勢やろ』

『ナーちゃんおるやん』


「ナーちゃんコールがすごい!! まあまあまあ、そうですね。いつか機会があれば誘うかもしれませんが、今はこのままでいきましょう。ほら、一緒に戸羽ニキたちに下剋上した記念のサーバーですし」


『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』


「その『てぇてぇ』コールをやめなさい!!」


『ママだ』

『ママ……』

『ママ』

『バブー』


「……うっわ。さすがに『ママ』コールは引きましたよ。え、大丈夫ですか? 俺、男ですよ?」


『むしろいい』

『いける』

『大丈夫だ』

『問題ない』


「皆さん、ちょっと猛者過ぎませんか!? え、嘘でしょう? うちのリスナーさんたちってもっと真面目な方たちだと思ってたんですけど……」


『リスナーは配信者に似るって言うから』


「それ、暗に俺が変態だって言ってます!? 失礼な。俺ほど真面目に配信活動をしているVTuberなんてそうそういませんよ!?」


『性癖こじらせてるじゃない』


 え、と思った時には遅かった。

 コメント欄が一斉に『ナキア先生』『ナキア先生もよう見とる』『ナーちゃんおる』なんて言葉で埋まり、流れも一気に早くなる。


「ナーちゃん! やめてくださいよ!! そうやって人の配信の空気を汚すのは。俺は清く正しく配信活動をしていきたいんですから」


『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』


「はいはい、わかりましたから。もうこっちは作業進めますよって危ない!?」


『草』

『驚き過ぎ』

『www』


「いきなり背後から襲われたら普通驚きますよね!? あ、戦えないので逃げまーす。武器ないので逃げまーす。さようならー。またいつか会う日までー」


 あー、怖。

 そっかワルクラって敵がいきなり襲ってくるのか。

 呑気に雑談してたら襲われるとか、ちょっとしたホラーだな。


「今ふと思ったんですけど、ホラゲコラボもやってみたいですね。レオンハルトとかどんな反応するのか見てみたい」


『天才』

『やって欲しい』

『レオンハルトきゅんのガチ絶叫……?』

『ショタの悲鳴は世界を救う』


「OK。コメントのおかげで気づきました。レオンハルトとホラゲやるときはラナさんだけは呼ぶのやめます。レオンハルトが余計な恐怖を感じることになりそうなんで」


『草』

『それはそうw』

『ホラゲ配信じゃなくなりそうw』

『レオンハルト逃げてー!』

『ラナさんがレオンハルトに発狂してそうw』


「そうなると、エイガかカレンちゃんかー。あの2人のホラゲ配信とか絶対うるさいですよね。意味もなく騒いでそうじゃないですか。賑やか過ぎてお化けも出てこなくなりそうじゃないですか?」


『カレ虐期待』

『エイガは絶対うるさいw』

『2人ともビビりっぽい』

『近所迷惑で怒られそうw』


「確かに。ご近所への迷惑を考えたらちょっと難しいかもしれないですね。きっと死ぬほど騒ぎますし。あ、それで思い出しました。皆さんに報告なんですが、いつも応援してくださるおかげで、家の配信環境をもうちょっと整えようと思ってるんですよね」


『お』

『防音室?』

『機材買うの?』


「防音室はさすがに入れられないかなって思ってますが、吸音材とかもうちょっとよくして、あとマイクとかもいいのに変えたいなって思ってるんですよね。パソコンだけは社畜時代のボーナスをつぎ込んでいいのを買ったんで、次はその周りの機材関係とか、こだわっていきたいなーって思ってます。それもこれも皆さんが応援してくれるからですね。いつもあざまるうぃーす」


『これからも頑張って』

『応援してる』

『またやらかしに期待w』


「やらかし……? 何のことかちょっとわかんないですねぇ。ええ、ちっともわかりません」


『行ってきます』

『行ってきます』

『行ってきます』

『行ってきます』

『行ってきます』


「はぐらかそうとしたのに許されなかった──ッ!! やめてくださいって、本当に。あの後めちゃくちゃ切り抜き上がってたんですよ? 本気で恥ずかしかったんですから」


『おもしろかったwww』

『腹抱えた笑ったw』

『やらかし代』


「ええ、やらかし代って……。スパチャは嬉しいですしありがたいんですが、もうちょっとカッコいいところで投げてもらえたりしないですか? 俺も早々やらかすわけじゃないですしって、えぇ──ッ!?」


 突如ゲーム内で聞こえる爆発音。

 そして画面が赤く染まり、俺が敵の自爆攻撃に巻き込まれて死んだというリザルトが表示される。


『草』

『フラグ回収乙』

『完璧なフリオチw』

『www』


「いやいやいや、そんなことって、えぇ……? このゲーム、こんなサイレントに敵が近づいてくるんですか? 全然気づかなかったんですが……。あぁ!? せっかく完成しかけてた拠点が──ッ!! 雨風が防げなくなってますよ!?」


『やらかしwww』

『www』

『これは草』

『やらかし代』


 やらかし代に何もツッコめない──ッ!!

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