第70話 強くて可愛いは最強

『わーい! アズマさんだーッ。いぇーい!!』


「ミチエーリさん!! お久しぶりです!! 今日なんかテンション高いですね」


『ずーっと1人でランク回しててさみしかったから』


「ああ、それはしょうがないですね。ていうか、よかったんですか? いきなりお邪魔しちゃって」


『全然OK!! むしろありがとう!! EX.のランクやるよーって言っても誰も来てくれなくて孤独だったの』


「それは何とくなく察してました。ミチエーリさん、ずっとツイッターで呟いてましたし」


『見てたなら来てよー! リスナーさんたちにぼっちだって思われちゃうじゃん』


「いや、なんか俺がいきなりお邪魔するのも違うかなって思いまして……」


『え!?』


「え?」


『アズマさんってそんなキャラだったの!? もっとグイグイ来る人だと思ってた!!』


「それは随分誤解ありますね!? え、俺ってそんな風に思われてたんですか!?」


『だって、この間のクロファイ大会もアズマさんが持ち込んだって聞いたよ?』


「あ~~~~~~。それは確かに」


『それにフメツさんのクロファイ凸の時もアズマさんから行ったんでしょ?』


「あれは戸羽ニキが凸待ちしてたんですよ。え、まさか俺がいきなり凸ったって思ってたんですか!?」


『ううん。違うよ?』


「違うんかいッ!! 何なんですか一体ッ!?」


『あははははっ。これこれアズマさんって言えばこのツッコミだよね! ん~、最高』


「ツッコミでそんな反応されるとは思ってなかったですよ」


『よーし! 高まってきたところで、ランク行っちゃおー!!』


「かしこまりました~」


 ということで、今日の配信はミチエーリさんとのEX.だ。

 ここ最近クロファイしかしてなかったから、めっちゃ新鮮。

 でも久しぶりだからな~。迷惑だけはかけないようにしよう。


「うっわ、久しぶり過ぎて変な感覚します。あれ、EX.ってこんなんでしたっけ?」


『あー! それ知ってるよ!! 結局勝って、俺なんかやっちゃいました? って言うやつでしょ?』


「言いませんけど!? どんなイメージですか!!」


『え~、言わないの~?』


「言って欲しいんですか!? 逆に!?」


『ううん。ムカついちゃうから言わないで欲しい』


「どっちですか……。さっきから会話がしっちゃかめっちゃかじゃないですか」


『あはははははっ!!!!!』


「え」


 何!? 何でいきなり笑い始めた!?


『しっちゃかめっちゃかって!! そんな言葉使う人初めて会った!!』


「え、噓でしょう!? 言いません?」


『ううん。私は使ったことない。使ったことある人とも会ったことない』


「あ、じゃあ特許申請しておきますね。VTuberで『しっちゃかめっちゃか』を使う人は俺に許可を取ってください」


『ズルい! 私もなんかそういうの欲しい!!』


「ミチエーリさんって何か口癖とかあるんですか?」


『口癖か~? 何かあるのかな。リスナーさん思いつく? ……え、無い? 本当に? 私ってもしかしてキャラ薄い……?』


「ちょっとリスナーさん。ダメじゃないですか~。 ミチエーリさんが悲しそうにしてますよ」


『そうだよ。私がかわいそうじゃん。ねぇねぇアズマさん。慰めてよ』


「あはは! いいですよね、自分から求めていくスタイル!」


『でしょー? ちなみに、アズマさんが私を慰めるとしたら、何て言う? ガチのやつ頂戴。ガチのやつ』


「ガチのやつですかー? そうですねぇ……、やっぱりミチエーリさんはEX.がめちゃくちゃ強いじゃないですか。まずそこを褒めて」


『いいよいいよ、もっと頂戴。それでそれで?』


「あとやっぱり可愛いですよね。強くて可愛い。つまりは最強だと思います!」


『おー! めっちゃ褒めてくれる!! ねぇねぇ、うちのリスナーさんたちにもそれ教えておいてよ』


「いやいや、そんなの俺が教えるまでもないですよ。ミチエーリさんのリスナーさんたちなら、きっと『ミチエーリ最強!』ってコメントして褒めてくれますって」


『えぇ~、本当かな~? ちょっと練習ね。……うぅ、私このままのキャラでやっていけるかなぁ? ねぇ、どう思うリスナーさん?』


「リスナーさんたち、今です! ミチエーリ最強!」


『あはははははっ!!!! すごいすごい!! コメント欄が『ミチエーリ最強!』で埋まってる!! みんな~、ありがと~!!!!!』


 あ、すご。

 こっちのコメント欄まで『ミチエーリ最強!』で埋まってる。

 リスナーさんたちのこういうノリの良さっていいなぁ。

 配信がめちゃくちゃ楽しくなる!


『これ今度スタンプにしようかな』


「メンバーシップのやつですか?」


『そうそう。よくない? 何かあったら『ミチエーリ最強!』って流れてくるの』


「ひとつのスタンプにそんなに文字数入ります?」


『デザイナーさんが頑張ってくれる! はず!!』


「めちゃくちゃ人任せじゃないですか」


『あ、ほらみんな! 今からあそこの敵を倒すから準備しといて!!』


「予告ホームランとかカッコよすぎます」


『アズマさん、行くよ!!』


「了解です」


 って、俺が答える頃にはミチエーリさんはすでにおっぱじめている、と。

 グレネード投げ入れて敵を削って、そしてガンガンに詰めていく。

 シンプルにプレイがカッコいいよな。

 ガンガンにキルムーブするのは、やっぱり華がある。


『右右右!!! 正面削ってる!』


「右撃ってます!! あと1人は!?」


『こっちこっちこっち!!!』


「詰めます詰めます!!」


『OK!! いけるいける!! ナイスー!!』


「ナイスー!!」


『みんな、今だよ! 今がチャンス!!』


 きっと向こうのコメント欄は『ミチエーリ最強!』で溢れ返ってるんだろうって、なんでこっちのコメント欄まで!?

 それはミチエーリさんの枠で打とうよ。さっきの練習だよ?

 俺の枠で打ってもミチエーリさん見れないじゃん!!


『え、これヤバ! めっちゃアガる!! みんなありがとー!!』


「……いいな。なんか俺も羨ましくなってきました」


『アズマさんもやる? めっちゃいいよ、これ!』


「やりたいですね。次に敵を倒したらリスナーさんたちにやって貰おうかな」


『いいと思う! アズマさんは何にする?』


「そこはやっぱり『アズマ最強』じゃないですか?」


『え、まさかのお揃っち!? も~、アズマさんってば~。私のことそんな風に考えてたの~?』


「待って待って待って! それは待ちましょう!? そういうことじゃないですよね!?」


『そっか、だからアズマさんはあんなに私のことを褒めてくれたんだね』


「おかしいおかしい! 誰もそんなこと言ってませんよね!?」


『ううん。言わなくてもアズマさんの気持ちは伝わって来てるよ』


「あ、ダメだ。この人一切話を聞いてない」


『でもごめんね? 私、ナキアとの友情は裏切れない!! アズマさんの気持ちには応えられないの──ッ!!』


「あ、敵です」


『あ、はい』


「グレネードあるんで気を付けてください」


『あ、はい』


「これ、右からも来てますね。弾けますか?」


『あ、はい。って、ヤバい!? 別チームも来てる!!』


「それヤッバいです!! ちょちょちょ!!! それは聞いてない!! 聞いてないですから!! キッツいですよ!?」


『あ、ごめん。落ちる』


「落ちる、了解です。っていうか、こっちもヤッバ! 待って落ち着いてください!? ちょっと落ち着いて話をって、あー……」


『ん~、ドンマイ!』


「ナイファイでーす」


 いやぁ、最後キツかったな。

 めちゃくちゃ射線通ってたし、あれは無理だ。


『よーし! じゃあ、気を取り直して次はクラウン獲ろう!!』


「了解しました! あ、ちょっと水だけ取って来ていいですか?」


『え~、準備してないの~? それでも配信者~?』


「ふぅ、それじゃあ配信者失格の俺は配信やめますか。ミチエーリさん、ソロランク頑張ってください」


『嘘嘘嘘!!! 水は大事だよね!! うん。いいよ、取って来ても!』


「あ、そうですか。ありがとうございます。やっぱりミチエーリさんは優しいですね。ミチエーリ最強!」


『いぇーい!! 私、最強!!』


 とまぁ、そんな感じでこの日はミチエーリさんと5時間ほど配信をしていた。

 強いし明るいし楽しいしで、よかったな。

 またそのうちコラボしたい。

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