第67話 ここに、俺たちだけの世界を作ろう!!

「はい。それじゃあ、みんな集まったみたいなので、配信スタートしていきまーす」


『ちょちょちょっ!! 待ちぃやッ!!』


「なんですか。エイガ」


『なんですかや無いやろ!? せっかくの打ち上げ配信やのに、そないぬるっと始めんるんか!?』


「えー。じゃあ、エイガが音頭取ってくださいよ」


『それはアカン!! そういうのはリーダーがキチッとしめるもんや!!』


「はぁ、わかりましたよ。えーと、それじゃあ改めまして。クロファイ配信お疲れ様でした!! リスナーさんたちの応援もあって、見事に我々新人VTuberがトップVTuberたちに下剋上することが出来ましたーッ!!!!!」


『イェイッ!!!! やったったでッ!!!!』


『……』


『……』


『……』


『って、おいっ!! 何でやッ!! 何で誰一人盛り上がってないんやッ!!!!』


「だからエイガだけですって。そんなに盛り上がってるのは」


『嘘やろ!? あれだけ勝利を喜びあったやないかッ!! なあ、姐さん!? カレンちゃん!! レオンハルト!!』


『……』


『……』


『……』


『冗談やろ!? え、ホンマにそのテンションなん!? 盛り上がってる自分がバカみたいやん!!』


『……』


『……』


『……』


『なんか答えてくれや!! 無視っていっちゃんキツイで!? おーい、こら。あんまり無視するようなら、自分配信終わるで!?』


「え、じゃあみんなどうします? このまま俺らだけで打ち上げしちゃいます?」


『……え?』


『そうだねー。しょうがないよね、配信終わるって言うなら』


『残念ですけどしょうがないですよね! それで今日は何をするんですか?』


『え、えっと。……う、打ち上げだー!』


『お前ら本気で言うてんのかッ!?』


「冗談ですって」


『お前なぁ!? 自分、本当に泣くで!?』


『しょうがないよ、ポチ。やっぱりテンプレって大事だし。王道展開って言うの?』


『コラボする度に毎回これやるんか!?』


『それはそれでめんどうですね。サクッと次行きましょう!』


『カレンちゃん。それはそれで悲しなるで……』


『だ、大丈夫……?』


『レオンハルト!! お前だけが自分の希望や!!』


『あ、そのー……。っすー……』


『はいはーい。手は触れないでくださーい。もうお喋りの時間は終わってますよー』


『嫌や!! 自分はもっとレオンハルトと喋りたいッ!!!』


「えー、このまま永遠に茶番が続きそうなので、さっさと次に行こうと思います」


 ちょっとみんな浮かれ過ぎじゃない……?

 確かに企画直前はクロファイ漬けだったけど、それにしたって、ねぇ……?


「えっと、せっかくこうしてVTuber同士仲良くなれたことですし、なんか記念に出来ればと思ったので、俺たち用の《ワールドクラフト》のサーバーを用意しました!!」


『すご~い。さすがアズマさん!!』


「カレンちゃんにそう言われると、なんかバカにされてる気がするのはどうしてでしょうか?」


『何それ!? アズマさんわたしのことなんだと思ってるんですか!?』


『都合のいい女でしょ』


「ラナさん!? 誤解を招くようなことを言わないでくれません!?」


『だって、クロファイ企画も誘ったらホイホイ付いてきたって言ってたしー』


『アズマさんそんなこと言ってたの!? 最っ低なんですけど!?』


「言ってませんからッ!!」


 やめてくれ。そういう風評被害を広めるのはッ!!

 リスナーから変な印象を持たれたらどうするんだ!


『さすがモテる男はちゃうな!!』


「エイガもノらなくていいですから!!」


『せやかてなぁ。モテてるのは事実やし。なあ、レオンハルト?』


『うん。にーちゃんはすごい』


「やめてください、レオンハルト! そんな純粋な眼差しでこんな俺を見ないでください!」


『ねぇねぇ、いつまでこの茶番続けるの?』


『そうですよ! 早くゲームを始めましょうよ!!』


「この流れ作ったのはカレンちゃんとラナさんですよね!?」


『あー、そうやって人のせいするんだー。最低ー』


『今度ナキア先生に言いつけちゃいますよ!』


「なんでそこでナーちゃんが出てくるんですか!?」


『や、アズマさんを口実にしたらコラボとか出来なかなーって思って。えへへ』


「可愛く笑っても許されませんよ!?」


 あーっ、もうだからさぁッ!!

 一生話が前に進まない!!


「もうゲーム始めますよ!? みんなサーバーに入ってます!?」


『なんでキレ気味なんや』


「何か言いました!?」


『こわっ。みんなー、先生が怒っとるさかい。いい子にしよーや』


『しょうがない先生だなー』


『レオンハルト君。ここはいったん先生の言うことを聞いておこう』


『う、うん』


 ……こいつら、マジでさぁッ!!

 サーバーから蹴りだしてやろうか!?


『お、入れたで!!』


『円那も大丈夫ー』


『わたしもいけました!』


『僕も大丈夫』


「やっと今日の配信が始められますね。えっとー、下剋上記念ってわけじゃないですが、サーバーをレンタルしました!!」


『いよっ、さすが東野アズマッ!』


『天才!』


『カッコいいー!!』


『ありがとう』


「他の3人にはぜひレオンハルトを見習ってもらいたいですね。えー、ということで今日は、みんなで《ワールドクラフト》を遊んでいきたいと思います!!」


『いぇーいッ!!』


『わー』


『やったー!!』


『わーい』


 ああ、これでやっと始めることが出来る。

 《ワールドクラフト》とは、いわゆるオープンワールドタイプのゲームで、RPGのようにストーリーが存在しないゲームである。

 その一番の特徴は、ゲーム内の様々なものが立方体のブロックで表現されていることだ。そのブロックも、木や土、石などの様々な素材があるので、それらを組み合わせて建築をしたり、冒険をして世界を開拓することで新たな素材を獲得したりと、非常に自由度の高い遊び方が出来る。

 自分だけの世界を作っていける、そんなタイトル通りのゲームとなっており、今俺たちがやろうとしているように、複数人でのマルチプレイも可能になっている。

 サーバーレンタル料金として多少の出費はあるものの、こうしてみんなでコラボすることが出来ると考えれば、安いものだ。


「とは言え、俺も初めて遊ぶので何からすればいいかとか、全然よくわかってないんですよね」


『ふふーん』


「なんですか、カレンちゃん?」


『全くしょうがないですね、アズマさんは。もっと素直に、わたしに教えて欲しいって言っていいんですよ』


「レオンハルト、ワルクラはやったことあります?」


『ううん。無い』


『なんでスルーするんですかぁ!? わたしの話を聞いてくださいよ!!』


「いやまあ、なんとなくムカついたので」


『ひっど!! そんなこと言うと教えてあげませんよ!?』


「随分自信満々ですが、カレンちゃんはワルクラで遊んだことあるんですか?」


『当然じゃないですか』


「でも、配信とかでやってませんでしたよね?」


『はい! だって、わたしのワルクラはダイヤ堀りがメインですから』


「えー、じゃあまあ、……ワルクラやったことある人―」


『ちょっとぉ!! わたし!! わたしやったことあります!!』


「聞き方を変えます。ワルクラで冒険とか建築とかやったことある人ー。炭鉱夫じゃなくて、地上で生活をしたことがある人ー。いますかー?」


『ねぇえッ!! どうしてそうやってわたしを虐めるんですか!? いいじゃないですか。みんなでダイヤ堀りしようよ!!』


『ワルクラは自分も初めてやるんよな。色々試してみればええんちゃう?』


『円那も賛成ー。とは言えプレイ動画は見たことあるし、最初のうちに何すればいいかとかは何となくわかるよ』


『僕もそんな感じ』


「それじゃあ、まあ、最初は色々と試行錯誤しながら遊んでいきますか」


『だから! わたしが教えてあげるって言ってるでしょぉッ!! ねえ、誰か聞いてよッ!! 松明!! 松明の作り方とか教えてあげるから!!』


「あ、知ってるんで大丈夫です」


『とりあえず作業台作ればええんよな?』


『確か、木は素手でも集められるんだよね』


『あ、食料ゲット。みんな上げる』


『あぁ!? 作業が進んでいく!? わたし!! わたしもやりますから!! ねぇ!? 置いてかないで!!』


 ということで、この日は久しぶりにコメント欄が『カレ虐GG』で埋め尽くされたとさ。

 何て言うか、カレンちゃん乙!!

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