第43話 祭りが始まる!! 俺たち新人VTuberのための祭りが!!
『今日の《企画屋》の配信を見て欲しい』
レオンハルトにそうチャットを送ったけど、まだ返信はない。
それでも見てくれることを信じて、俺は自分の出番に向けて備える。
って言っても、モニターの前で待機してるだけなんだけどな!?
めっちゃ落ち着かない!! バカみたいに緊張してる!!
レオンハルト~、返信してくれ~。チャットさせてくれ~。俺の緊張を和らげてくれ~。
『ぴょんぴょこり~ん。みんな~、月々ぴょんこだよ~』
『袈裟坊主だ』
『いつも思うんだけど~、もうちょっと愛想よく出来ないの~?』
『自分のスタイルを貫けと俺に教えたのはお前だったはずだが?』
『そんなこと言ったっけ~?』
『お前はもう少し自分の発言に責任を持つことだ』
『思う通り楽しく配信すればいい~、って言ったのは袈裟坊主だったと思うけど~?』
あの2人の夫婦漫才もここ最近ですっかりお馴染みになっていた。
企画の話し合いとかしてても、常にこれだもんなー。どれだけ仲がいいんだって話だよ。
この人らこそてぇてぇと思うんだけど、違うんだろうか?
『タイトルを見た者はもう気づいていると思うだろうが、《企画屋》からの告知だ』
『つまりどういうことかは~、みんなならわかるよね~?』
うわ、同時接続者数3万人!?すげぇな、《企画屋》!! めちゃくちゃ期待されてんじゃん!!
ていうか、あ~。見なきゃよかったーっ!!
今からあそこに行くの!? 俺が!?
『前回のEX.大会以来の《企画屋》イベントだよ~!! 今回のテーマは~、『下剋上』~ッ!!!!!!!』
『実は今回の企画はとあるVTuberからの持ち込みでな。
『でもね~、それがめちゃくちゃすごくてね~。《企画屋》として~、この企画をもっと盛り上げたいな~って思っちゃったんだよね~』
いやいやいや、めっちゃ持ち上げるじゃないですか!?
やめてくれー!! 胃がキリキリしてきたって!!
コメント欄も死ぬほど盛り上がってるしさぁッ!!
『うおおおおおおおお!!!!!』
とか、
『マジで!?』
とか、
『楽しみ!!!!』
とか、
『誰!?』
とか、めちゃくちゃコメントが流れてる!! 爆速過ぎる!!
『期待されてるね~。きっとそのVTuberも~、画面の向こう側で~、胃を抑えてるんじゃないかな~?』
ええ、まさしくその通りです……。
胃薬飲んどけばよかったー!!
『いや、存外ふてぶてしくふんぞり返っているのではないか? あいつはそれぐらい肝が据わっているぞ』
いやいや何言ってんの!?
やめてくれ!! これ以上、期待値を上げないでくれ!!
『みんな気になってるだろうし~、早速登場してもらいましょう~って行きたいんだけど~』
『それは最後のお楽しみにとっておこうではないか』
『まずは私たちから~、企画の概要と~、ルールとかを説明するね~』
『期待して待っているといい』
あ~、もう~、俺のバカ野郎ーッ!!
企画発表の相談をしてる時に『俺の登場は最後の方が盛り上がると思いますッ!!』なんてイキッたことを、どうして言ってしまった!?
ここでサクッと登場しておけば、こんな生殺しになることなかったのに!!
あ、ヤバい。マジで胃が痛い。死にそう……。
『今回の企画でやるゲームは、《大激闘!クロスファイトスターズ》ッッッ!!!!』
袈裟坊主さんの掛け声に合わせて、画面が切り替わる。
そこにはゲームタイトルと一緒に開催日程が表示されている。
『開催は二週間後だから~、みんなちゃんと予定を空けておいてね~』
『そして今回の企画のテーマは先ほど告げたように『下剋上』ッ!!! 我々が集めたトップVTuber連合に、新人VTuberが牙を突き立てるッ!!!!!!』
『ルールは表示されてる通りだよ~。トップVTuber連合チームと新人VTuber連合チームに分かれて~、それぞれがチーム合計で15ストックを所持して~、先にストックを削り切った方の勝ち~』
『チームに関しては上限5人の制限がある以外は自由とする。極論を言えば、1人で15ストックを持って勝ち抜いてもいい。また、ストックの割り振りも1人あたりの上限を5とする以外は各チームに任せるものとする』
『一番強い人に5ストックを持たせて~、他の人たちは2ストックとかでもOKってこと~。このあたりは各チームの戦略になるかな~』
『そしてこれが今回最大の特徴になるが、トップVTuber連合チームは、一度出場したメンバーはストックが0になるまで交代は出来ないが、新人VTuber連合チームは自由にメンバー交代が出来るものとする。ゲームの強さと戦略を駆使して、ぜひ下剋上を果たして貰いたいものだな』
これがこの間ぴょんこさんと袈裟坊主さんにプレゼンした時に話した、チーム戦かつ勝ち抜き戦のルール概要だ。
最初はトップVTuber連合チームも交代自由だったんだけど、今日発表されたルールの方が盛り上がるってことで変更になった。
『いいね~、盛り上がってるね~。ただ~、《企画屋》の本気はここからだよ~』
『今回の企画に参加するVTuberの紹介といくか。すごいぞ、今回のメンツは』
うわ、出番が近づいてきた!?
なんかもう早く終わってくれって気分だ。
『まずはトップVTuber連合チームから紹介するよ~』
あれ、なんか聞いてる流れと違うぞ?
ここでトップVTuber連合チームと新人VTuber連合チームのリーダーがそれぞれ登場するって流れだったはずなのに……。
って、袈裟坊主さんからチャット来てるけど、しばらく待機ってどういうことだ……?
『トップVTuber連合チームは総勢5人だよ~。その名前の通り~、VTuber界隈でも名前の知れ渡った精鋭たちを《企画屋》が集めました~。まず一人目は~、ここにいる袈裟坊主~』
は!?
袈裟坊主さんも選手側で出るの!? 全然聞いてないんだけど!?
『袈裟坊主個人の配信を見てる人は知ってると思うけど~、こいつ普通にVIP帯でプレイしてるランカーなんだよね~。前にプロの参加型配信で勝った切り抜きを見たことある人もいるんじゃないかな~?』
知ってる、それ!
めちゃくちゃ強かった記憶ある!!
ていうか、え、マジで言ってる? ガチ過ぎない?
『《企画屋》の名に懸けて~、負けたら許さないからね~?』
『当然だ。俺は勝つ』
この自信だよ。待ってくれ、本当にガチなんだよこの人は……。
『それじゃあ~、2人目いくよ~。2人目は~、埼京ツルギ~。最強を謳う彼が~、クロファイではどんな戦いを見せてくれるのか楽しみだね~』
はい?
埼京さん呼べたの? だってあの人めちゃくちゃ忙しいでしょ?
『ドンドン行くよ~。埼京ツルギに続くメンバーは~、彼しかいないよね~。英雄~。今回こそは《残念勇者》の汚名返上となるのか~? そしてそして~、この2人が来たら当然いるのはわかるよね~? VTuberでクロファイといったら~、やっぱりこの人~、戸羽丹フメツ~ッ!!!! ちなみに~、今回トップVTuber側のチームリーダーはフメフメだよ~』
え、あれ。
リーダーである戸羽ニキの発表は一番最後にするはずじゃ……?
ルールとかは話し合った通りだけど、トップVTuber側が全然知らない内容になってないか……?
どういうこと?
『そして最後のメンバーなんだけど~、私もまさかこの人がOKしてくれるとは思わなかったな~。ふふふ~、すごいよ~? トップVTuber連合チームの最後の1人は~、安芸ナキア~ッ!!!!!!!』
は!? ナーちゃん!?
え、マジで言ってる!?!?
『わかりやすい女だな、あいつは』
『も~、そういうこと言わないの~。ちなみに~、なんでナキちゃんが参加してくれたかは~、新人VTuber連合の話をすればわかると思うよ~』
……うわぁ、今のぴょんこさんの一言で出たくなくなった。
コメント欄にも『まさか』『てぇてぇか?』『てぇてぇだな』って、察したリスナーのコメントが流れまくってる。
やめてくれー、そういう空気感にするのは。めっちゃ出にくい!!
『コメント欄も察してるみたいだね~。それじゃあ~、ご期待にお応えして登場していただきましょう~。新人VTuber連合のチームリーダー、東野アズマ~ッ!!!』
あー、もうっ!!
こんな登場の仕方は想定してなかったのにッ!!
だけどここまで盛り上がってるんだ。行くしかないッ!!
「皆さん、あざまるうぃーす!! 新人VTuber連合リーダーの、東野アズマでーすッ!! って、コメント欄! もうちょっと『てぇてぇ』を自重してください!!」
ヤバ。爆速で流れるコメントの9割近くが『てぇてぇ』だ。
『やっぱりみんなてぇてぇが好きなんだね~。ナキちゃんはね~、締め切りがあるって断ろうとしてたんだけど~、ズマちゃんが出るよ~って言ったらスケジュール調整してきたんだよ~』
「それ言う必要あります!?」
『企画を盛り上げるためには~、必要なんだよ~』
「コメントが早すぎて逆に怖いんですが!?」
『仕事が出来るうえにモテるとは、男の本懐ではないか。リスナーに伝えておくが、今回の企画を持ち込んだのは、他でもないこの男だぞ』
「なんで今言うんですか!?」
『企画を盛り上げるためだ』
「お2人って企画を盛り上げるためなら何をしてもいいと思ってます!?」
『思ってるよ~』
『無論だ』
「言い切らないで欲しかったッ!!」
今からでもこの企画降りていいかなぁッ!?
ああ、もういいや。さっさと先に進めよう。
「新人VTuber連合ですが、まだチームメンバーは全員決まっていません! そこで今度俺の配信枠でメンバー選抜のための参加型配信を行います!! 我こそはってVTuberさんは、ぜひ参加してくださいッ!!!!!」
『というこで~、トップVTuber対新人VTuberのクロファイ大会をお楽しみに~』
『下剋上を夢見る新人VTuberよ、かかってくるがいいッ!!!!』
「新人VTuberのみんな、俺と一緒にトップVTuberたちを分からせてやりましょう!!」
そうして配信を終えた俺は、真っ先にレオンハルトにチャットを送っていた。
生憎と配信前に送ったチャットへの返信は来ていなかったが、見てくれていると信じてメッセージを送る。
『君の強さが必要なんだ。俺と一緒にトップVTuberと戦って欲しい』
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