第37話 俺、メスガキをわからせてる時が最も生を実感するんだ
『はい~、わたしの勝ち~♪ よっわ。雑~魚。ぷー、くすくす』
「あれ、おかしいですね。ついさっきまで『お願いします。勝たせてください』って言ってたのは誰でしたっけ? ねえ、カレンちゃん?」
『ちょっとわからないですねぇ。あ、アズマさんもしかして変な夢でも見てたんじゃないないですか?』
「なるほど! 夢か!! それはそうですよね! 大富豪の初手で2のペアを出す人が現実にいるわけないですもんね!!」
『そうですよ~。もう何言ってるんですか。ぜ~んぶ夢ですよ! 夢に決まってるじゃないですか!! ということでね』
「あれあれ? カレンちゃん何してるんですか? なんでゲームをリセットしようと……?」
『いや、ちょっとね。そろそろ夢から醒める時かなって』
「ほう。例えばどんな夢から醒めるんですか?」
なんて言いつつ、俺は次に遊ぶゲームを選択する。
今カレンちゃんと配信で遊んでいるのは、《ワールドゲームズセレクション》というソフトだ。
大富豪やポーカーといったトランプのゲームや、オセロや将棋と言った有名なボードゲームに加え、世界中の色んなゲームが楽しめるお手軽パックみたいなソフトだ。
気軽に色んなゲームが楽しめるので、多くのVTuberが配信でやっているし、時には視聴者参加型でプレイしていたりもする。
『ああ!? なんで次のゲームを始めるんですか!! もう目覚めるんですよ、わたしは!!』
「現実を直視しなさい!! 今、カレンちゃんは負けてるんですよ!! さっきまで10連敗してたのを夢で終わらせるわけないでしょう!?」
『それは夢にさせて~。ていうか、アズマさん知らないんですか? 本当のわたしはすっごいんですよ。ゲームだってめちゃつよなんですから!!』
「あれ、おかしいですね。俺には《アマリリス・カレン めちゃつよの姿》が見えてないんですが。どこにいるんでしょう?」
『え、アズマさんまだ見つけられてないんですか!? それはダメですよ!! 早くめちゃつよなわたしを見つけてください!! わたしを勝たせてくれればすぐに見つかりますから!! さあッ!!』
「ゲームで八百長なんかするわけないでしょう!? はい、これで俺の勝ちですね」
『あーーーッッッ!?!?!? なんでーーーーーーーーッッッ!?!?!? バカァァァァアアアアアアアッッッ!!!! アズマさんのバカーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!』
「リスナーの皆さん見てください。これが《アマリリス・カレン めちゃよわの姿》です。いやぁ、いい声でなきますね」
『最っ低!! もうやだぁぁ……』
「大丈夫ですよ、カレンちゃん。めちゃよわなことにもっと自信を持ってください。だって、それがリスナーの望んでる姿じゃないですか」
事実コメント欄は、『悲鳴たすかる』『いいぞ、もっとやれ』『なきごえが染み渡る』『カレ虐GG』などといった言葉で溢れかえっている。
リスナーの期待に応えることが出来てるなんて、配信者としてこれほど嬉しい瞬間もないな!! たとえそこに犠牲になっている者がいるとしても!!
『ちょ、リスナーさん!? なに、『カレ虐助かる』って!? 嘘でしょ!? リスナーさんはわたしの味方じゃないの!?』
「みんなもっとカレンちゃんの輝く姿が見たいと思っているんですよ」
『今見られているのは負けてる姿だよ!?』
「つまりカレンちゃんは、負ければ輝く才能に満ち溢れているってことですね!!」
『最っ低な煽り文句ですね!? え、そんな煽りがこの世に存在していいんですか!?』
「まあ、それをこの世に誕生させたのはカレンちゃんなんですけどね」
『アズマさんでしょ!! なんでわたしがやったことになるの!?』
いやぁ、楽しいなぁ。
ここ最近ずっとEX.大会やトップVTuberたちとのコラボ続きで、緊張感のあるゲーム配信ばかりだったからな。
久しぶりだよ、これだけ純粋に楽しいゲーム配信は。
カレンちゃんには感謝しかないな!!
お礼にもっと負かして、リスナーに魅力を届けてあげよう!!
「さて、次はどのゲームでストレス発散をしましょうか……」
『ちょっと待って!! 今ストレス発散って言った!? 言いましたよね!?』
「いやいやいや、言ってないですよ。あれ、カレンちゃんもしかして夢でも見てます? ダメですよ、ちゃんとアラーム設定しておかないと。もう配信は始まってるんですから」
『ねぇえッ!! 起きてるッ!!!! わたし起きてますからッ!!!!!』
「あれ、それじゃあ目が悪いんですかね? ちゃんと配信画面見えてますか? 今度いいメガネ屋さん紹介しましょうか?」
『煽り過ぎッ!! 泣くよッ!? わたし泣きますよ!? そうしたら悪者になるのはアズマさんですからね!?』
「でも今の言葉を証拠として提出したら、カレンちゃんの脅迫ってことで俺が勝てそうな気がするんですよね」
『最終手段まで封じられた!? 女が涙を封じられたら何もできなくなるじゃないですか!! どうしてくれるんですか!?』
「シンプルにゲームの腕前を上げましょう。いつかカレンちゃんが俺に下剋上してくる日を楽しみにしてますよ」
『残念でした~。いつかじゃないです~。それは今日です~』
いや、今までの流れでよくそんなセリフが言えたな。
なんか今日は喋れば喋るほど、カレンちゃんは配信者が天職なんじゃないかって思わされる。
すごくない?
今、死ぬほど負け続けてるんだよ?
たった一回ポーカーで勝てただけで、あと全部負けてるんだぜ?
それでまだこの煽りが出来るって、マジですごいよ。
「社畜時代の俺にカレンちゃんの配信を見せたかったわ」
『え、急なに?』
「こんだけ負け続けても煽れる強メンタルに感動したんですよ。俺も顧客から『君、仕事できない営業だね』って言われた時に、『あなたは自分の要望をちゃんと伝えられないヤバい客ですね』って言い返せれば……」
『それはやらなくて正解ですよね!? やったら大問題じゃないんですか!?』
「いやいや、やっぱり人間強気でいるのって大事ですから。クソッ、俺にあの時勇気があれば──ッ!!」
『本気で悔しがってる!?』
「まあ、冗談なんですけどね」
『ねぇえッ!! 何なの本当に!!』
「あれ、カレンちゃんどうしたんですか? 早く次のゲーム始めましょうよ」
『絶対に勝ってやる!! わたしがアズマさんをわからせてやる!!』
「よろしい。それが儚い夢だと言うことをわからせてあげましょう」
『発言がラスボスなんだけど!?』
「勇者よ、そろそろ俺に勝ってくれないでしょうか?」
『はぁーーーッ!?!?!? そんなこと言ってていいんですかぁ!? 負けたら土下座で謝ってくださいよ!?』
「いいですよ」
『いいの!?』
「はい。だって、そもそも負けないですし」
『とか言っちゃって~。いや~、楽しみだなぁ。わたしに負けた時、何て言って土下座してくれるんだろう』
「ああ、はい。まあ、そうですね。それじゃあ、次のゲームを始めましょうか」
『あれあれ~? 本当にオセロでいいんですか~? わたし負けたことないんですよね~。勝っちゃいますよ~?』
なんて言っていたカレンちゃんは、俺が角を取るたびに言い声でないてくれましたとさ。
いや、いいよね。メスガキをわからせるのって最高に楽しいよね!!
現代のストレス社会に必要なコンテンツなのは間違いない!!
ぜひまたコラボをしよう、そうしよう!!
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