第21話 再びのチャンス到来!! 《東野アズマ》を魅せてやる!!

『あら、粋なことするじゃない』


「ははは! マジか」


 俺だけじゃない。同時視聴をしていたリスナーたちも、この発表に興奮している。

 爆速で流れていくコメント欄がその証だ。


【この大会ももう五回目になるので~、そろそろみんなも飽きて来たかな~って思ってて~。さっきフメフメも言ってたけど~、なんか新しいこともしたいよね~って話してたんだよね~】


【左様。ただ通り一辺倒の競技シーンしかないのも興ざめなのでな】


【だから、こんな特別ルールを設けたの?】


【激アツじゃないッスか!!】


【盛り上がってきたぜぇッ!!】


 主催者側の配信画面も盛り上がってる。

 ていうか、コメント数エッグ!? 全然表示が追い付いてないじゃん!


【《企画屋》主催のお祭り大会だからね~。やっぱりみんなを楽しませてこそでしょ~】


【リスナーも、そして無論、参加するVTuberも含めてな】


【かっけぇッス!! さすがッスね!!】


 うっわ、すご!! 

 コメントに加えてスパチャもめちゃくちゃ飛び交ってる!!

 これ全部リスナーの期待って考えたら、俺まで興奮してきた!!


【ということで~、今回のEX.大会は~、優勝チームだけじゃなくて~、一番強かった個人にも~、賞金が出ます~】


【最強を決められるってことだなッ!!】


【ぜってぇ勝つッスよ!!】


【僕が負けるわけないじゃん】


 戸羽ニキたち3人もバチバチに煽り合ってる。

 リスナーたちも3人の誰が勝つか、で盛り上がってる。

 く~、しょうがないんだけどさぁ! 俺もあそこに交じりたいよなぁッ!?


『小物が吠えてるわね。私が総取りするに決まってるじゃない』


「俺だって負けませんよ」


『あら、私より弱いくせによく言うわね。チーム優勝のためにサポートに回ったほうが賢いわよ?』


「何言ってるんですか? 大会本番まで5日もあるんですよ? 強くなりますよ、俺は」


『せいぜい足掻くといいわ』


 同じチームだなんて関係ない。ナーちゃんとバチバチに煽り合う俺へ向けて、コメント欄でも応援コメントが飛び交う。


『頑張れ』

『求む、ジャイアントキリング!』

『これ、アズマが勝ったら激アツだよな』


 あ、そっか。今気づいた。

 ここで俺が勝てば、それってめちゃくちゃカッコよくないか?

 並み居るトップVTuberを押しのけて、俺みたいな新人VTuberが個人最強に名乗りをあげたら、半端ないインパクトを残せるんじゃないか?

 ははは! あった! あったぞ、またチャンスが!!!!

 めっちゃ難しいけど、だからこそ掴めたらめちゃくちゃデカいチャンスが目の前にある!!!!


【ルール説明をしようと思ったけど~、チーム戦の方はいつも通りね~。全部で5試合を戦って~、各試合ごとの順位によって獲得できるポイントと~、キルポイントを合算した合計ポイントで優勝を決めるよ~】


【キルポイントのシステムも従来通りとなる。チームの誰かが取ったキルを取れば、1キル1ポイントでチームポイントに上乗せされていく。つまり、1位のチームを遥かに上回るキル数を2位のチームが取っていれば、その試合での獲得ポイントは2位のチームが上回る可能性も出てくるということだ】


 この辺は俺もリスナーとして大会を見ていた時と変わらない。

 要は出来るだけ上位を目指しつつ、より多くのキルを取ればいいと言うシンプルなルールだ。むしろ気になるのは──、


【も~、みんな落ち着きなさすぎ~。わかってるってば~】


【個人の方のルールの詳細が知りたいのだろう?】


【2人が焦らすからでしょ】


【早く教えてくれればいいんスよ】


【どんなルールだろうと俺が勝つがなッ!】


 急かす戸羽ニキたち3人や、期待に盛り上がるコメント欄へ応えるように画面が切り替わる。


【は~い、ど~ん。これが個人最強を決めるルールだよ~】


【え、マジ?】


【これって】


【なるほどな!】


【言ったであろう? 個人最強を決めると。我々企画屋がキル数の多い者が最強などと、そんな安易なルールを決めるとでも思ったか?】


【最強って言うのは~、あらゆる強者強敵を打ち倒した人のための称号だよ~?】


 おいおいおい!

 どこまで盛り上げるつもりだよ、この2人は!?

 さすがは、《企画屋》だ!!


【これが今回参加してもらっているVTuberの一覧となる。名前の横に数字が書かれているのがわかるだろう。それは各個々人の招待ポイントだ。今回の大会では、チームへのキルポイントとは別に、キルした者はキルされた者に設定されている招待ポイントを獲得することが出来る】


【つまり~、招待ポイントが高い人がいるチームほど~、狙われやすくなるってことだよ~】


【待って。それって、うちのチームヤバくない?】


 戸羽ニキの言う通りだ。

 うちのチームは最も高い招待ポイントを設定されている戸羽ニキとナーちゃんがいる。他のVTuberたちから狙われやすくなるのは必至だ。


【俺とファイトする前にやられちまんじゃないスか~?】


【フメツと戦えなくて残念だぜッ!】


 早速煽られてるし。


『バカねぇ、こいつら。全員返り討ちに決まってるじゃない。私がいるのよ?』


 こっちはこっちでめちゃくちゃ強気。俺からすれば好都合でしかない。

 だって敵は向こうから来てくれるし、味方はやる気なんだろ?

 負けるリスクも高いけど、勝てるチャンスだって同じだけあるってことだ。

 招待ポイントが一番低い俺からすれば、そんなのチャンス以外の何物でもない。

 やってやるっての!!


【そして全ての試合が終了した時点で、最も多くの招待ポイントを稼いだ者に個人最強の称号と共に、】 


【賞金100万円を贈呈しちゃうよ~】


 は、マジで?

 え、今100万円って言った?


『きたああああああああああああ!!!!!!!!!』

『100万円はヤバい!!!!』

『マジかよ!!』

『どうした《企画屋》!』

『チーム優勝より個人の方がよくないか?』


 うっわ、コメント欄もすごいことになってる。

 でもしょうがない。だって賞金100万円だぞ!?


『賞金なんてどうでもいいのよ。イキってるVTuberたちの悔しそうな顔を見るのがいいんじゃない』


「だからナーちゃんはどこのラスボスなんですか!? いや、ていうか普通に100万円は欲しくないですか?」


『それぐらい自分で稼ぐわよ』


「さすが売れっ子イラストレーターは言うことが違いますね」


『まあ、貰えるなら貰うわ。ちょうど洗濯機を買い替えたかったのよね~』


「それこそ自分の稼ぎでどうとでもなる話じゃないですか」


 また、えらく庶民的なことを言い出したな。

 ナーちゃんレベルの年収なら年一で買い替えたって余裕だろうに。


【そんなわけなので~、参加するみんなには~、チーム優勝と併せて個人最強も目指してもらいたいよね~】


【最強の称号も賞金も僕が貰うから】


【踏み台がなんか言ってるッスねぇ~。最強は俺に決まってるじゃないスか~】


【全員まとめてかかってこい! 俺が一番強いってことを教えてやるぜッ!!】


【その意気やよし。これでお前たちの戦いもより一層盛り上がるだろう】


【たくさん活躍して~、大会を盛り上げてね~。それじゃあこれで~、チーム紹介とルール説明を終わります~】


 そうして画面が切り替わり、これまで表示されていた戸羽ニキたち3人が消え、月々ぴょんこ(ルナルナ ピョンコ)と袈裟坊主(ケサボウズ)の2人だけが残される。


『いやぁ、すごいことになったね』


『そう? どうせ全員私にやられるわよ』


「いやいや、万が一ってこともありますよ」


『そうだね。何しろ僕とナキア先生は一番招待ポイントが高いし』


『有象無象が寄ってきたところで、全員返り討ちにすればいいだけでしょう?』


「逆にチャンスですよね。戸羽ニキたちのポイント狙いの人たち同士を戦わせて、俺たちは漁夫狙いでもいいんですから」


 というか、個人最強のルール追加で随分と立ち回りが変わるぞ。

 戸羽ニキやナーちゃん、それに埼京ツルギ(サイキョウ ツルギ)や英雄(ハナブサ ユウ)なんかの招待ポイントが高いVTuberは積極的に狙われるだろうから、ゲームの流れや雰囲気もいつもとは全然違うものになりそうだ。でも、


「俺からすれば有名になるチャンスなんで、個人最強は獲りに行きます。お二人にだって負けませんよ」


『お、言うねぇ~。僕に勝てる自信あるんだ』


『そういうことは、私よりランクを上げてから言いなさい』


 今日のこの配信間までは、チームで優勝するために2人と協力するつもりでいた。

 でも、今はもう違う。

 この2人にだって勝つ。

 俺が今回の大会で目指すのは、チーム優勝と個人最強の両方だ。

 それが出来れば、俺はこのVTuber界を今よりももっと早く、もっと高いところまで駆け上げっていける。

 そんな予感がする。

 だから、俺はこの大会で絶対に勝つ。

 参加している全VTuber、そして視聴する全リスナーに、《東野アズマ》を魅せてやる!!

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