第14話 重大告知!!!! からの~……マジですか!?
「何この通知量……」
戸羽ニキとナーちゃんとの顔合わせ配信から一晩。
起きてディスコードを見たらエッグい数の通知が来ていてビビった。
ていうかナーちゃんはさ、何をそんなに話すことがあるの?
明け方まで延々と互いの性癖について語り合ってたじゃん。根掘り葉掘り聞かれ過ぎて、最終的には泣きそうだったんだけど……。
「……寝てんの、あの人?」
昨夜語った俺の性癖を盛り込んだオリジナルキャラクターのラフイラストが届いてるんだが!?
え、なにこれ。なんで!?
有名イラストレーターから個人的にイラストを送られるとか、前世でどんな徳を積めばそんな幸運に恵まれるんですか!?
いやいや、そうじゃなくて! ナーちゃんは寝たの!? すっげぇ心配になるんだけど……。
「とりあえずこのイラスト待ち受けにしよう」
そんでもってナーちゃんにディスコードを返信する。
『昨夜はありがとうございました!』
『色々お話できてめちゃくちゃ楽しかったです! この調子で大会までよろしくお願いします!!』
『あと、イラストありがとうございます!! 嬉しすぎて待ち受けに設定しちゃいました!』
『最後にお節介かもしれませんが、しっかり寝てくださいね』
『では、次のコラボを楽しみにしてます!!』
それにしても眠いな。寝たは寝たんだけどな……。
ひとまずシャワーでも浴びるか。
「?」
なんだよ、せっかくシャワーを浴びようとしたのに、誰だディスコードに着信なんて寄こしたのは。
「はい。あーっと、……もしもし?」
あっぶね。一瞬本名で名乗りそうになった。
ディスコードに着信寄こすのなんてVTuber繋がりの人しかいないのに。
『ズルいですよ、アズマさん!!』
「カレンちゃん……?」
『なんで、安芸ナキア先生とコラボしてるんですか!?』
「あー……。なんでだろうね」
『テンション低すぎます!! もしかして寝起きですか!?』
「明け方までナーちゃんと通話してたから」
『~~~~~~~~っっっっっっ!?!?!?!?!?!?』
声にならない声で恨めしそうにするのやめて!?
すっごい呪われそうなんだけど!?
『ズルいです!! ナキア先生はわたしの憧れなんですよ!?』
「あ、やっぱり? そうなんじゃないかと思ったんだよね。ナーちゃんって活動的にはカレンちゃんの上位互換っぽさあるし」
『どれだけ頭働いてないんですか!? いつもみたいに、もうちょっと気遣った言い方してください!!』
「じゃあ、ちょっとシャワー浴びてきていい? 目を覚ましたい」
『10分で上がってくださいね!! 言いたいことはまだまだあるんですから!!』
通話が切れたディスコードを改めて見る。
死ぬほど来てた通知は全部カレンちゃんからのチャットか。
さすがに100件超えてるもの全部は見れないわ。どうせ通話するなら放置。
「ん? え、マジ……?」
待て待て待て。落ち着け俺。
今見たものが本当かどうかは、シャワーを浴びてしゃっきりした頭でちゃんと確認しようじゃないか。
──本当だったあああああ!?!?!?
マジかぁあ。よかったぁああ。
はー。いや、マジでよかった。
ここまでの努力がちゃんと評価されたって気になるな。
これはもう今日の配信内容は決まったな。これしかない!
「っと。もしもし、カレンちゃん?」
『あ、ちゃんと10分で上がったんですね。やればできるじゃないですか』
「まだパンイチだけどね」
『……セクハラですよ』
「いや、ごめん。テンション上がっちゃって」
『? なにかいいことでもあったんですか?』
「まだ秘密。今日の配信見に来てよ」
『なんですか、それ。安芸ナキア先生とコラボしたからって調子に乗ってませんか?』
「それはない。確かにすごい人だと思ったけど、ヤベー人だってこともよくわかった」
まさか性癖語りだけで4時間以上も通話するとは思わなかった。
……これ、ナーちゃんもだけど付き合ってた俺もヤバいのでは? 戸羽ニキは配信終わった瞬間にいなくなってたし。
『なんかムカつきますね』
「なんで!?」
『たった一回コラボしただけで、もうナキア先生のことをわかったつもりになってませんか?』
「ならないよ。むしろあの人のことを理解できる人なんているのか?」
『あ、ほらまた! なんですか、これが俗に言う彼氏ヅラってやつですか!?』
「勘弁してくれ!!」
ナーちゃんと付き合うぐらいなら、社畜時代に鬼のしごとをしてきた女上司と付き合う方がまだマシだ!
『VTuberとしての人気も出てきて? トップVTuberとコラボもして? そのうえ神絵師とも仲良くなって? なんなんですか、アズマさん』
「なんなんですかって聞かれても……。俺だって最近の幸運続きにはビビッてるんだって」
ついでに言うとカレンちゃんみたない美少女と知り合えたのも、間違いなく幸運のひとつだ。まさかVTuber活動がここまで実を結ぶなんて思いもしなかった。
『少しでいいからその幸運を分けてくださいよぉ』
「そうなったらいいなって思って今コラボもしてるじゃん」
『わたしだってもっと人気になって《アマリリス・カレン》を布教したいんですよぉ』
「わかってるから。大丈夫。このまま一緒に頑張ろう」
それから先はただひたすらにカレンちゃんの愚痴聞きタイムと化した。
聞けば俺から一向にディスコードの返信がないせいで全然寝てないんだと。
そこは寝ようよ、とはカレンちゃんの情緒が爆発しそうでさすがに言えなかった。
それでも1時間程度愚痴を聞いていたら満足したのか、最後には寝落ちするように通話が切れた。
あの子、学生のはずだけどこんな時間に寝て大丈夫なんだろうか……?
ナーちゃんと言い、カレンちゃんと言い、やはりVTuberとは生活リズムが常人とはかけ離れていくのだろうか。
俺としては社畜ではなくなったのだから、健康的な生活に戻っていきたいと思っているのだが……。
というわけで、今日の配信は夜更かしになり過ぎない程度の時間で終わらせる。
最近EX.の配信ばかりだったし、たまにはリスナーと話したいな~っていうのと、重大告知があるから今夜は雑談配信だな。
「はい、ということで今日も《東野アズマの配信》にお越しいただき、あざまるうぃーす!!!!」
もはやおなじみとなった挨拶に、コメント欄も気軽に答えてくれる。
『あざまるうぃーす』
『あざまるうぃーす!!』
『あざまるうぃーす!』
『あざまるっす』
「っておいこら、誰だ『あざまるっす』ってコメントしたのは。挨拶を略さないでください! そんなことじゃ社会に出たときに困りますよ?」
『社畜出たw』
『もはや抜けきらない社畜根性w』
『誰か漂白してあげて』
「漂白! 確かに社畜根性は魂に染みついた汚れみたいなものですしね! いい表現ですね。俺も早くきれいになりたいですよ」
『労働はクソ』
『わかるわ~』
『仕事辞めたい』
「仕事辞めたい民の気持ちが理解出来過ぎて辛いです。俺も社畜時代は本当にひどくて。上司が鬼のような女だったんですよね」
『女上司とかいいじゃん。俺なんてただのおっさんだぞ』
『なんかエロいな』
『美人だった?』
「美人でしたけど仕事の鬼だったので、皆さんが期待しているようなセンシティブ展開はあり得なかったですね。仕事で激詰めしてくる上司とプライベートも一緒にいるとか考えられないですし」
『それは確かに』
『休まる暇がない』
『プライベートだと隙が多かったりしたらどう?』
「まあ、確かにギャップがあると可愛く見えることもありますが、あの人に限ってそれはないですね。家の事もめちゃくちゃしっかりやってたみたいですから。って、そんな上司のことなんていいんですよ。今日は皆さんに重大告知があります!」
『何々?』
『ずっと気になってた』
『タイトルに書いてたやつか』
コメントの通り。
今日の配信枠のタイトルは《【重大告知あり!!】久々の雑談枠》だ。
「もったいぶってもしょうがないのでお伝えすると、無事に収益化が出来ました!! それもこれも皆さんの応援のおかげです!! いつもありがとうございます!!」
『おおおおおおおおおおおお』
『ついに!!』
『おめでとう!!』
『やったな!!』
『これからもがんばれ!!』
コメント欄にお祝いの言葉が並ぶ中、早速スパチャを投げてくれるリスナーも──って!?
「限界赤スパ!? ちょっ!? 初めてのスーパーチャットでこんなの貰っちゃったら、俺これからどうすればいいんですか!?」
いきなり5万円のスパチャとか、それはやりすぎじゃないか!?
「コミット米太郎さん、限界赤スパありがとうございます!! めっちゃ大事に使わせてもらいますね!! あ、スパチャがたくさん。皆さん本当にありがとうございます!!」
結局今日の配信が終わるまでスパチャ投げは続いた。
いくら収益化が通ったとは言え、いきなりこんなに貰えると思っていなかったから、感謝しかない。
うん。応援してくれる皆さんのためにも、これからも頑張ろう!
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