乗り越えて

 「シュリエル……。そうか……。それが……決断だったんだね……。」

シュリエルが消滅すると同時に結界が段々と解除されていく。

「っとっと!?結界が……消えていってるんか……!次の領域魔法発動まで持ち堪えられるとは思えねぇしな……。ここは俺も体を張るしかないな……。少しでもお前らが善戦できるようにな……。」

ゴブリンキングまでも何を言い出しているのだろう。彼は重要な戦力の一人だ。これ以上の犠牲は起こしたくない。

「ゴブリンキング!やめてくれ!これ以上誰も死なせたくないんだ……!」

「いや……。俺がここで踏ん張らないともう一人死ぬことになっちまうんだ……。」

「は……!?何を……?」

ゴブリンキングは地下を指差しながらこう言ってきた。

「この下にいる俺たちの産みの親が死んじまうってことだよ。」

「は?それはつまり……?」

「そのまんまさ。奴の魔力が尽きる。あいつももう限界っぽいんだ……。証拠に俺の力がどんどん弱くなっていってる。」

「マジかよ……。なら……しょうがないな……。犠牲を増やさないって意味では妥当なのか……。」

「あぁ……。申し訳ないが理解してくれ……。すまないな……。」

「大丈夫だよ……。ゴブリンキング……。最後にいいところ見せてくれ……。」

ゴブリンキングは何も言わずにアウグイドの方へと歩いていく。

「この剣は全ての罪を断つもの。全ての断罪の元。そして……。仲間を守るもの。お前にはない物!絆をまとった剣!たとえこの技に名がなくとも……!お前の罪を断つ!『名もなき必殺技ノーネーム』!」

ゴブリンキングが剣を巨大化させ、アウグイドに向けて振り下ろす。

アウグイドは必死に抑え、ゴブリンキングはなんとしても攻撃を与えようと力を込めている。

「ハル……!お前は最初に戦った時から面白い奴だと思ってた!それに……才能もあると思っていた!力しか取り柄のない俺にはなかったものを持っていた!」

「そっちこそ……。そっちこそ面白い人だったじゃないか……!最初は勝手に一人で笑ってるやばいやつかと思ってたけどそれは間違いだった……!お前と会えてよかった!もし向こうの世界でシュリエルに会えたらたくさんお世話になった。最後までありがとう。いっぱいお世話になった。と伝えてくれ!今までありがとう!!」

「こっちこそな……!ありがとな!喰らいやがれ!これが友情の力だ!!」

ゴブリンキングの剣がアウグイドの右腕を切り落とす。

そしてゴブリンキングは消えていった。

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