前世の未練

「この奥に多分また何かしらいるはずだ……。」

「気をつけないとね……何が出てくるか分からない……」

僕たちはヒューによって少し足止めを喰らったものの着々と奥へ進めている。

「ん?何もいなくないか……?」

「ほんとだね……」

「許さない……人間は……そうやって……」

「は?え?どこどこ?」

「どこから声を出してやがる……」

「ここだ。」

「「後ろか!?」」

「やっと気づいたか。」

「ゴースト!?」

「おばけ!?」

「どっちでもあるが正確には俺は未練を前世に残した幽霊だ。」

「「幽霊だったの!?」」

「そこじゃないだろ……!本当にこれだから人間は……」

「まぁ……未練があるなら楽にしてやるからさ……」

「そう楽にさせられるかな……?俺の未練はぜ?」

「なっ!?」

「なんでそんなお化けがここに!?」

「さぁな?俺にも分からん。ただお前らを殺せれば俺の未練は晴らされるわけだ。」

「その前にお前を楽にしてやるよ……その犯罪に手を染める直前で止めさせてやる……」

「できるものならやってみろ!人間!はぁぁぁぁ!」

「!?怨霊!?」

「こいつは僕の分身でありながら独立した本体でもある。つまり半々の存在だ。」

「こいつを叩いてもお前に攻撃は入るわけか……」

「少しならな!ただ期待しない方がいいぞ。こいつらはお前らを地獄に引き込むためにいる存在でもあるからな……!」

「やっぱりこいつ冥界にいちゃいけない存在だ!」

僕は怨霊を先に倒そうとマルタの剣を握る。

「はぁぁぁぁ!喰らえ!!」

スカッ……

攻撃は全くもって敵に効いたと言う感触はなかった。

「は!?どういうことだ!?」

「ハハハハハハハハハハ!アホか!普通の攻撃が効くわけがないだろ!」

「普通……か。なるほどな。わかった。」

「ハルくん!こっちは攻撃通ったよ!」

燃える盾を持ってマイがそう言ってくる。

「聖なる炎には弱いってわけね。ならこれでどうだ?」

僕は今まで取っておいた聖なる炎をマルタの剣と合成する。

「その聖なる炎……どこで……!くそ!お前ら!やられる前にやれ!」

怨霊たちが先手必勝と僕の方へ向かってくる。

「まだまだだね!」

僕は2連斬りを決め、2体の怨霊を供養する。

「なっ……まだだ!いけ!遠距離から攻撃すればいいんだ!やれ!」

「無駄だって。『バイオレントハルバード』!」

キンキンキン!と後ろで音が鳴り、斧と槍が何本も召喚されていく。

「待機態勢。」

僕がそう告げると、大量の武器たちは一気に横一列に並び出す。

「あんなまじないなんかに負けるな!撃て撃て撃てぇい!」

怨霊たちは何やら闇属性の弾を撃って来ている。

「無駄だって言ってんじゃん。待機解除」

僕は一気に斧と槍を敵に向けて発射する。

スカッ……

「あ……忘れてた……こいつら……」

「バカはお前だったみたいだな!ハハハハハハハハハハハハ!」

「この先の可能性を考えられないあなたもバカだけどねっ!」

「マイ!」

マイが連撃を全て跳ね返す。聖なる炎の効果で闇属性攻撃は浄化され、怨霊たちに返される。

「なぁぁぁぁ!俺の手下がぁぁぁ!」

「残念だったね。僕たちは誰にも破れない!」

「おのれ!おのれ……!許さんぞ!こうなったら俺が直に戦ってやろう……!」

「実体化した!?」

「地面に立てば前世の姿くらいはなれるさ。」

「前世の姿は普通の兵士って感じの姿だな……。」

「まぁな……ただ最後に裏切られて娘を殺されたんだ……!そん時から……俺は……!人間が憎くなった!戦死した後も未練が残ってこうなったんだ!」

「そうだったのか……同情もあるがそれで殺人に行こうとしたのは重罪だな……。」

「うるさい……!それが俺の正義だったんだ……!」

カチャン。と剣の抜かれる音が響く。

「たとえそれがお前の正義であっても……!世間一般からそれは正義として扱われない!」

僕はマルタの剣を構え、怨念兵士の対面に立つ。

「いざ……」

「尋常に……」

「「勝負だぁぁぁぁ!」」

ガキン!ガキン!剣と剣が激しくぶつかり合う。

「ハハハ!なかなかやるじゃねぇかよ……!殺し甲斐があるってもんよ!」

「そう簡単に殺されてたまるか……!」

「そりゃあこっちのセリフだな!スキル開放!『霊体の申し子』!」

「そっちがその気なら……こっちだって!『タイタンウェーブ』!」

スキルでオーラをまとい、突っ込んでくる怨念兵士に僕は金属の波をぶつける。

「うっ……!?なんだこれは……!」

「僕の専用魔法さ。少し変わった波でね。人間以外に特攻が入るんだ。」

「変なものを使いやがってぇぇぇ!!」

「変なもの……ねぇ?君もスキルを使ってるしおあいこじゃないの?」

「このやろう……どこまでもしぶとく……!」

「なんだよそのゴキブリに言うような言い方は……」

「そんなつもりはないがな!こうなったら怨霊特製の領域魔法を使ってやる……!」

「領域……魔法だと!?」

わざと僕は対策がないかのように振る舞う。

「領域魔法!『永遠の墓場アンリミテッドグレイヴヤード』!!」

「大量の墓石が周りに……!?」

「これでお前を押しつぶしてやる!」

「その前にお前を燃やしてやるよ……。」

「は?」

「領域魔法!『鍛冶場の煉獄』!!」

怨念兵士の周りを大きな炎が囲う。

墓石は上で燃え尽きて灰になっていた。

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