隠れ家への襲撃(side:月の狼)

「よし……いったんここで休憩してからギルドに報告しに行こう。」

「そうだね……私も疲れた……」

「それは同意できる。」

ドンドンドン!

「え?誰……?」

「僕が開ける。今僕達の中で1番体力があるしね。」

ガチャ。

「ウガァァァ……コロス……コロス……!……!」

「っ!?なんだこいつ!」

「はぁっ!下がってて。ウェイアン。あんた今武器持てないんだから!」

「まぁ……そうだが……」

「こんな雑魚魔族任せといて!この一撃で倒すから!」

「分かった……なら、任せるよ。でも、くれぐれも死なないでね。」

僕はラーイーダに魔族を任せ、キューブの破片をテーブルの上に広げる。

「さて……これをどうやって修復するか……。」

ジュデボラの魔法でも治りそうにないと本人に伝えられた。かと言ってくっつけて治るものでもない。

「となると……ハルくんしか頼れる人はいない……ってことか……。」

僕は小屋の裏口から出ようとする。

「キシャァァァァ!コロス……!コロス……!」

「裏口まで!この野郎!これでも喰らえ!」

僕は部屋の中にあった木の棍棒を得体のわからない気持ち悪い形の魔族にぶつける。

「ジュデボラ!起きろ!敵襲だぞ!」

「んん……?なに……?」

「魔族が攻めてきた!撃退するぞ!」

「えっ!?もっと早く言ってよ!」

「それは……すまん……だけどこんなにやばい音してて寝れるお前もやばいけどな……。」

「え!?そんなに寝てた……?私……。」

「あぁ……悪いがそんなに寝てたぞ……?」

「嘘……ごめん!すぐに加戦するね!」

「悪いね……僕は今この木刀しか……ていっ!中にまで侵入してきたか……!ラーイーダ!大丈夫か!?」

「まだ大丈夫。あと少しなら……。」

「わかった……!無理はするなよ!」

「ラーイーダ。道を作ってほしい!」

「は?あんただけ逃げる気……?」

「違うわ!」

「じゃあなんなのよ!」

「ハルくんにこれの修理を頼んでくる!」

「どうやってよ!ハルくん達は地下にいるのよ!?」

「だからこそ場所がわかりやすいだろ?」

「なるほどね……。あんたはつくづく馬鹿だよ……。氷結の神よ……力を貸してくれたまえ……」

「ジュデボラ……。」

「たまには馬鹿のために馬鹿になってあげるわ!『氷結した地平線フローズンホライゾン』!」

ジュデボラが詠唱すると魔族たちが一気に凍りつく。

「ジュデボラ……!ありがとう!」

「んなこと言ってないで早く行きなさい!もうすぐ氷が溶けちゃうから!」

「わかった!」

「はぁっ……!はぁっ……!ここまで来れば……。」

「図書館はあっちか……」

僕は図書館の中へ入る。

「コロス……!人間……コロス……!」

「中の職員まで……!?すまないっ……」

僕は魔族へと変わってしまった職員に棍棒を振り下ろす。

「安らかに眠ってくれ……僕に元に戻す魔法は使えないんだ……。」

「どこの棚だ……?ここか……?いや……違う!」

僕は片っ端から棚が動かせるところを探す。

「コロス……コロス……!」

「こいつら……蘇生能力持ちか……おらぁ!」

僕はもう一度得体の知れない魔族たちに棍棒を振り下ろす。

「ここか!」

ゴゴゴゴ…… 棚は動き、謎の穴が出てくる。

「ハル君。これを頼む!」

僕は大きな声で穴に向けて叫ぶと布で包んだキューブのかけらを穴に落とす。 

「こいつらが蘇る前に戻らなきゃだ……」

僕は急いで図書館を出る。

「ここにも……くそっ……!」

完全に魔族に取り囲まれた。

「どうしたら……」

「コロス……!コロス……!命令に応じて……!コロス……!」

「少し後ろにずれて……!当たるよ!」

「え?」僕は急にした声に驚くも言われた通りに後ろに下がる。

「『秘剣・ガーディアンソード』!」

その声と共に僕の目線の前にはローブを深く被った少年とみえる身長の人と倒れている大量の魔族が目に入った。

「早く行ってください!ここは僕が止めます!」

ハルくんとは別の若い声に指示される。

「あぁ……!ありがとう!この恩は必ず……!」

「例など結構ですよ……!せいやっ!」

その少年は2本の剣を巧みに使って二方向の魔族を一気に倒していく。

「何ぼーっと見てるんですか……!?あなたには行くべきところがあったんでしょう!?」

そうだった。僕は隠れ家に帰らねば……。

「ここは任せた……!二刀流のハルくんに似た剣士さん!」

「ハルくんか……久しぶりに聴いた……」

「ん?」

「いや、なんでもない!気にしないでくれ。」

「すまない……!こっちから話してしまった!」

「いや、いいんだよ。これで君が誰かも分かった。」

「お、おう……そうか!」

僕はこれ以上は話しかけないと思いそれだけ言ってその場を離れようとした。

「そこの君、武器を持っていないみたいだね……足しになるかはわからないけどこれを使ってほしい……!」

その少年は見覚えのある剣を僕に渡してきた。

「マルタの剣……」

「僕の知り合いがくれたものだ!ありがたかったけど僕には合わなくてね……代わりに存分に使ってやってくれ!」

「あぁ……!」

「「健闘を祈る!」」

僕は急いでその場を離れ、隠れ家へと戻る道を向かった。

―――――――――――――――――――――――

「ウェイアンという人は彼のことか……確かにいいやつだ……。また会いたいものだ。しかし、まずはここを片付けねばね……。ハルくんの頼みなら仕方がない……!」

ヒューはそう呟き、また剣を握った。

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