王様からのお願い(sideハル&ウェイアン)
「広い……」
ギルドに入って出てきた一言目はその言葉だった。
お城の1階層が全面使われていることもあり、とても広い。
「えっと……報告カウンターはあそこか。」
ウェイアンさんはもうカウンターを見つけたらしくそちらに向かっている。
「なにぼーっとしてるんだい!ハルくん!君も来なきゃだよ!」
「あっ……!そうだった……!今行く!」
僕は早歩きでウェイアンさんの後を追いかける。
「ルズベリーから来たウェイアンというものだ。おそらくそちらから来るように依頼が来ているはずだが……」
「はい。確かにございます。別室にご案内いたしますので少々お待ち下さい。」
そう言って受付の人は中へと入っていった。
5分ほどしてまた戻ってきて「お部屋の用意ができました。」と言い、案内してくれた。
「あれ……ここって……王族と会談する用のお部屋ですよね……?」
「はい。今回来てもらうように頼んできたのは我々の王様ですから……」
「失礼のないようにしないと……」
「そうですね。あ、でも、我々の我々の王様はとても寛大なお方なのでよほどのことがない限りは大丈夫ですよ。」
「あ……そうなんですね。」僕とウェイアンさんは少し安心する。
「それでは、こちらでお待ち下さい。」
僕達は大きな部屋に通される。まさしく王族の使いそうな部屋というイメージだ。
中には古今東西から集めた飾り物が飾ってあったが、一つだけなかった。
「あそこ……なんて書いてあるか分かる……?」
ウェイアンさんに聞いてみると、「あぁ……あれはえーっと……」「エクスキャリバーだな。」
「「!?」」声のした方を見てみると王様らしき人が入ってきていた。
「おぉ……そんな固くならなくていいぞ。肩の力を抜いてゆっくり話そうではないか。おい、茶菓子を持ってきてくれ。」
「では……すこしだけゆっくりさせていただきますね。」
「おぉ、そうするがよい。あ、これがわしの名刺だ。」
ルフレイと書かれた名刺が机の上に置かれる。
「ルフレイ様。本日はこちらに王様直々でお呼びとのことですが……」
「あぁ!そのことが!被害届けはおまけ的な感覚でおる。それよりも、そこの少年のスキルを頼りたくてね。」
「僕のスキルですか……!?」
「そうだよ。先程二人が話していたエクスキャリバーのことだな。」
「あそこだけないですよね……?」
「あぁ。実はうちのアホ研究員が間違えて調合剤をかけて溶かしてしまったんだ。」
「えぇぇぇ!?あれって魔法の剣ですよね!?」
「あぁ。そうだとも。だから君のスキルを頼るしかないのだ。」
「って言われても……材料とかの資料とかない限りは……」
「あるぞ?」
「えっ!?」
「秘蔵書庫に入っておる。持ってくるから待っててくれ。」
しばらくするとバタン。と音がしてルフレイ王が戻ってきた。
「ほれ、これだ。」
そこにはエクスキャリバーの構造、材料などが図でわかるようになっていた。
「なになに……って これ全部レアドロップ品じゃないですか……」
「そうだが……何か問題でもあったかい?」
「実は僕、粗悪品しかドロップしないんです……。」
「なんだと!?ならば、うちの腕のいい冒険者を同伴させよう。実は一部かけらなども必要な部位があるから、そこは頼んだぞ。」
「はい!任せてください!」
「あ、それからウェイアンはこちらの書類に記入を頼む。」
「分かりました。」
「あ、ウェイアンさん。書き終わったら先に帰っていいよ。これ、あと一日はかかりそうな感じがする……向こうに何かあったら大変だから……」
「了解。また向こうで会おう。」
僕は一足早めに面談室を出て、依頼書を持ち、ギルドの受付へ向かう。
受付の人は僕の色の違う特別依頼書を見て優先的に案内してくれた。
「少々お待ち下さい。腕利きの冒険者を連れてきますね。」
受付の人が連れてきてくれたのは二刀流剣士のヒューという男だった。
とても優しい性格の同年代の人で自分にはとても合いそうな人だった。
「今日一日一緒に素材集めを手伝うヒューだ。よろしく!」
「よろしくお願いします!」
「じゃあ、行こうか。」
ヒューは何回もこのような仕事をしているのか僕を案内してくれた。
「えっと……エクスキャリバーは初めてだから必要な素材を教えてくれる?」
「えっと……ゴールデンスライムの隠し玉が5個、鉄の破片が20枚、木材が2本、シルバースライムの粘液が5個です。」
「なるほどね……じゃあ僕はゴールデンスライムの隠し玉と木材を探してくるから。残りは頼んだよ。集合はまたここで。」
「わかりました!」
僕はヒューとは逆の方の道を進む。
シルバースライムはこちらに出るらしいのだ。
「おっ!いたいた!まずはアイアンゴーレム!お前からだ!」
ゴゥンゴゥンと音を立ててアイアンゴーレムは僕に向けて襲ってくる。
「喰らえ!せいやぁ!」
僕はマルタの剣をアイアンゴーレムの胴体に向けて振る。
しかし、ガキン!と音がしてマルタの剣は折れてしまった。
「おいおい……まじかよ……。」
ゴゥンゴゥンと、音を立ててアイアンゴーレムは僕に向けてパンチを振り下ろしてくる。
「やべっ!剣盾!」
僕はすかさず剣盾で防御する。
攻撃力はそんなに高くないらしく、魔力を込めなくてもおさえられている。
「考えよう……あいつにはほぼ物理攻撃は効かない……かと言って僕は魔法も使えない……ならば……これを試してみるしかないな……。」
僕はその剣を精製すると手元に少し暖かさを感じた。
「道中レッドスライムとかも倒しておいて良かった……。久々に粗悪品にお世話になったなぁ。」
――――――――――――――――――――――
炎魔剣 レア度 ★★★★★
レア度の低い魔剣。
炎をまとって使える剣はこれ以降は入手難易度がとても高い。
――――――――――――――――――――――
「今作れるのはこれしかないよなぁ……。果たして足りるか……まぁ!やってみるしかない!」
僕は剣を炎魔剣を手に持ち、ゴーレムを斬りつける。
「少し……傷が入ったかな……?」
ゴーレムの胸のプレート部分が少し焦げて凹みができている。
「これを何回も繰り返せば……!」僕はゴーレムの攻撃を避けながら少しずつ傷をつけていっていた。
しかし、途中でとあることに気づいた。
「ん……?何だこのハッチみたいのは……」
アイアンゴーレムの背中に何かを入れるハッチのようなものがあったのだ。
「ここにこの炎魔剣を……!ていや!」
扉は薄かったらしくすぐにハッチの中へ剣を刺すことができた。
ガゴゴゴゴンと音がしてゴーレムが足からバラバラに崩れ落ちていっている。
「うわっ!危なっ!」
僕は崩れ落ちるギリギリでゴーレムから飛び降りた。
「さてと……ドロップ品は……?お、あったあった!」
――――――――――――――――――――――
鉄の破片 レア度 −★★
アイアンゴーレムからドロップする最低レアのドロップ品。
基本は剣の強度上げなどにしか使われず、変なもの好きしか高く買い取ってくれない。
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「よしよし……全部でこれ何枚あるんだ……?ひぃ、ふぅ、みぃ、よぅ…………40枚は余裕で超えてるな!?これ!」
十分すぎる量にびっくりしながらも僕はアイテムボックスに鉄の破片をしまう。
「よーし、次はシルバースライムだ!この先の部屋にいるらしいんだけど……いるかな……!」
僕は扉を開けると言葉を失ってしまった。
「………………は?」
中には大量のシルバースライムが地面を覆い尽くしていたのだ。
「こりゃあ倒しがいがあるってやつだ……。」
僕は炎魔剣を手に持ってスライムの塊に向けて斬りつけた。
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