魔族の頭 チェレード

「なぁ、マイ。」僕はヴァプトンから帰る途中でマイに話しかける。

「ん?なに?」マイはキャラ作りをせずに自分に話してくる。周りより遅れて歩いているからだろうか。

「今回こんなふうに緊急レイドに邪魔されちゃったし、今度こそ二人でクエストとか冒険とかしないか?」

「いいね!それ!やろうやろう!」

「よしっ、そうと決まったらギルドに戻ったらクエストを受けよう。」

「うん!」

そんなわけでぼくたちはギルドでクエストをすぐに受けれるはず……だった。

それもそのはず、あの巨大なドラゴンを倒したのだ。ガルディーヌギルド長からとても褒められ、他の冒険者からも褒められて……とても忙しかった。

結局その日はそのまま夜になってしまった。

「どうだい?ハルくん。うちのギルドの部屋を使わないか?」

「いいんですか!?」

「あぁ、いいとも。マイちゃんと君の部屋と2つ分用意してあるよ。」

「だってよ、マイ。どうする?」

「じゃあ、お願いします!」あー……ギルド長には心を許したんだね……

「よし、じゃあ部屋に案内するよ。着いておいで。」

案内された先の部屋は角部屋。一番いい部屋だ。

「ギ、ギルド長!?こんないい部屋借りちゃって……」

「いいんだよ。君たちはそれだけの戦績を上げたんだからな。」

「じゃあ……!ありがたくいただきます!」

「あぁ!家具とかはもう部屋の中に入っているから好きに使ってくれ。それから、食事もギルドのホールで取れるから食べたくなった時に来てくれ。」

「「ありがとうございます!」」

そんなわけでギルドの温かいお風呂や食事を満喫し、ふわふわのベッドで寝た。

翌朝、僕達はホールで食事を取り、クエストを受けることにした。

巨大ドラゴンを倒したという功績があることもあり、Aランククエストまでは受けれるようになっていた。SランククエストはAランククエストを10個以上クリアするとできるようになるらしい。

「なになに……?湿地帯で大量発生しているキンググリーンスライムを退治せよ……か。マイこれどうかな?」

「いいと思う!これにしよ!」

「すみませーん、このクエストお願いします。」と、クエスト版の下にある木の札を受付に持っていく。

「了解しました。お二人ですね。旅のご無事を祈っております。」

――――――――――――――――――――

旅というものは常に安全なわけではない。

まさしく今その状態と言えるかもしれない。

「おい!金を出せと言ってるだろ!さっさと出さんか!」

そう。僕達は山賊というめんどくさい人たちに囲まれているのだ。

「だから……お金は部屋に置いてきたっての……」

「嘘をつけぃ!ここら辺を今まで通った勇者は全員金持ちだった!そして、俺らが金を出せと要求するたびにない!と、嘘をついてきたのだ!お前らもその類だろ!どうせ!」

「だから……ないっての……」本当にお金は今は一文なしなのでそう言うしかない。

「っ……そこまで頑なならこうだ!お前ら!あいつの付き添いの女を取り押さえろ!」

「了解っす!アニキ!」

「マイ!!」助けようと近づこうとするもマイは大丈夫という顔で返してきた。

「そうか……なら、派手にやっていいぞ……。ただ殺さないようにだけはしてくれ……俺たちが犯罪人になっちまう……」

迫り来る盗賊の1人の剣をかわすと、マイは自分の盾を召喚し、盗賊達の体に打ち付けていく。

「あれは……ちゃんと峰打ちしてるな……いつもの威力より全然弱いな……。」

普段ライマルクさんの店の庭で練習などをしているときは容赦なく藁人形に盾を打ち付けているのに今回は僕から見たらとても緩く攻撃している。

「後はあなただけね……。」

マイは軽々と下っ端の盗賊達を倒していき、リーダーの盗賊を追い詰めた。

そして、マイが盗賊のリーダーを攻撃しようとしたその時……。

盗賊のリーダーの体の下半身が変化していくのが見えた。

「マイ!離れろ!そいつ、普通の人間じゃない!」

「えっ!?」

「早く!こっちに!」

マイが避難してきたすぐ後にその盗賊のリーダーの男は体が完全に変化し終わっていた。

「あ……あれは……?」マイが怯えながら僕に聞いてくる。

「わからない……まるっきりわからない……。ただ、この世界の生き物じゃないってのは分かる……。」

「それは私も……あれ、もしかして伝説に残っていた昔いたとされる魔族……?」

「魔族だと!?」魔族というと大体とても強い存在である。一筋縄では倒せず、何かしらの助力がないと倒すことはできない。

「エクセレント!ご名答だよ。盾使いのお嬢ちゃん。」

「だっ、誰だ!?」僕は茂みの奥から聞こえてきた謎の声に聞き返す。

「名前を述べる必要はないと前は言ったが今は言う時かもしれないな。」

そう言って出てきたのはこの前会ったタイヤ使いの人だった。

「私の名前はチェレード。現世の魔族達の頭をやっている。」

「お前……まさか僕達を狙うためだけにあの時……!」

「エクセレント!その通りだよ。ハルくん。そして、マイちゃん。なーに。怖がることはないさ。これから君たちを殺すだけだ。」

「殺す……だと!?」

「あぁ。我々魔族は取り憑かないと現世では実態を手に入れられない。取り憑く媒体は強くないといくら強い魔族でも弱くなってしまうからね。君たちをころすのが手っ取り早いのだよ。君の宿敵、ガスパオロの様子が君が会った時からずっとおかしいのも魔族に取り憑かれているからだよ。」

「まさか……!?お前……!わざと楽そうな偽のAランククエストをスパイ用意させて、僕たちと月の狼の奴らを離れさせて……!ということは今、あの街は……」

「察しがいいね。君は。そういうことだよ。彼らでは共鳴度MAXのチャームをつけた魔族には勝てないだろうね。」

「っ……助けなきゃ……!」

マイの手を引っ張って走って逃げつつ、助けようと思ったものの「逃がさないよ。」

と、タイヤを体にはめられ、身動きを取れなくされてしまった。

「っ……くっそ……まずはお前らからって訳か……」

「エクセレント!そういうことさ。2対2だ。数に違いはないだろう?にひひひひひ!」

「しょうがない……マイ。やるぞ。」

「うっ、うん!」

「いいでしょう。魔界域発動!」

チェレードがそう詠唱すると僕達は周りの景色が銀河のようなところに立っていた。

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