新たなる戦闘方法

僕が控室で待っているとき、コンコンコンとノックの音がした。

誰かと思い、開けてみるとそこにはジュデボラがいた。

「ハルくん。お疲れ様。」

「あ、はい。ありがとうございます。」わざわざそれだけを言いに来たのだろうか?

「あ、お疲れ様っていいにきたんじゃないよ?ウェイアンと戦うんでしょ?これを使うことになるだろうから。渡しに来たの。」

「これは……?」

「魔力回復リカリバー。一回だけ魔力を全回復するものよ。彼は相当な強さ。魔力が今のあなたでも2倍は必要。だから、これをって思って。」

「ありがとうございます。」

「あ、あとそれからキューブには気をつけなよ〜。じゃあね。健闘を祈ってるよ。」

「えっ、ちょっ!キューブについて……!行っちゃった……」

「魔力回復かぁ……よーく見ておこう……精製で作れるかもしれない……」

僕は魔力回復を眺める。見た目はポーション瓶のような形で、液の色はピンク。

「少しドロドロしてるのか……振ってみたけど変な感じだな……」

ポーション瓶をおいたあとで自分は控え室のベッドセットをかぶる。

ここのコロシアムはバーチャル世界内で練習などが可能なのだ。

敵の強さを強めに設定し、戦闘開始を押す。

「そこかっ!っ……まだ避けられたか……!」

さすが強めに調整しただけある。今までの戦い方ではダメージを与えられず、逆に結界を割られてしまった。

「何か新しい戦闘方法とか武器を考えないとたな……」僕は時計に目をやる。

「まだ時間は30分ほどあるか……ならば少しライマルクさんのところに行くか。」

僕は外出することを受付に伝え、ライマルクさんの店に来た。

店に入るとすぐに「おぉ!ハルくんではないか!2連勝まで来てるではないか!で、何の用でここまで来たんだい?」

「ありがとうございます。えっと……色んな武器を見せてほしいんです。今の僕の知識量じゃおそらくウェイアンさんには勝てません……」

「なるほど!そういうことか!なら、こっちに来な。いいものがあるぞ。」

ライマルクさんが僕に案内してくれたのは代々伝わる武器庫。新しいものなどを作ったときに材料と、実物を置いておくものらしい。中には引退した勇者の人々が置いてった武器もあるんだとか……

「すごい……これって持ってみてもいいんですか?」

「振り回さなきゃ右のエリアのは大丈夫だ。左は劣化が進んでて危うい。その下の棚にある書類だけにしてくれ。」

と、いうことなので今僕は右側の色々な武器をまじまじと眺めている。

「レイピアか……身軽な動きが出来そうだな……おっ、こっちは斧か……重い代わりに一撃は強そうだ。」

先に進んでいくと変なものを見つけた。

「ライマルクさん。これはなんだい?」

「あぁ、それかい?それは『邪剣インフェルノ』ってやつだ。気づいたらそう呼ばれていたヤバい剣の一本だ。あんまり触れないほうがいい。呪われるぞ。」

「呪われる……?」

「あぁ……。俺の兄貴だったな……確か。この剣を倉庫に収めたあとで肺炎で死んじまった……勇者もこちらに渡したあと2日で謎の死を遂げてしまった……だからこうやってこいつだけ事故防止のためにガラスケースの中に入れられてんだ。」

「なるほどな……魔力が高ければ持っても死ぬことはないか?この剣は。」

「一応、来てくれたお祓いの人によるとそうらしいが……」

「なるほどな……。分かった。」

「ハルくんの魔力の2倍はないと持てないだろうな……だからお前が持つのはやめときな。」

「わかってる。こんな剣持って死ぬわけには行かないからな。」

他にも色々な武器があり、新しい戦法を思いつくいい機会となった。

お礼と言うことで最後に今まで僕が精製してきた武器を渡してコロシアムへと戻った。

「よし、もう一回やってみよう!」

僕はもう一度ヘッドセットを付けて強めの敵と勝負をする。

10分後、「やっと勝てたぁ……長かった……これでウェイアンさんにも対抗できるかもしれない……」

どっと疲労を感じて、ソファーに座り込む。

「他の選手たちはどうなんだろう……。」

このコロシアムの伝統戦では一般の人々が抽選で何人か挑戦者の挑む相手と戦うことができるらしい。

「やっぱりラーイーダが最難関か……?」

多くの人がラーイーダで負けていく中、一人だけウェイアンさんにたどり着いた人がいた。

「すげぇ……ジョブは……シールダー!?このシールダー、ただ者じゃないな……」

シールダーは『反射ミラー』というスキルを持っており、攻撃を一定量以上なら跳ね返すことができるらしい。

しかし、ウェイアンさんはキューブのおかげでほぼ無限と言っていいほどの魔力量。

敵うはずもなく、反射は打ち破られ負けてしまった。

「あれが……ウェイアンさんの魔力量か。絶対負けないぞ……」

僕は体を人振るいさせ、魔力回復を手に持ってコロシアムの選手入り口へと向かった。

「頼むぞ……あの作戦さえ成功すればこっちのもんだ!」

大きく一歩を踏み出しコロシアムの入り口を通り抜けた。「こんなに歓声もらっちゃ負けられないな……。」僕は歓声を浴びてそう呟きながら向かい側にいるウェイアンさんを見つめた。

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